9話 一休み
ミドゥが僕の隣を予約して、紅茶の準備をしてくれる。僕の隣はもうこの際何も言わないよ。でもさ、エレの隣を阻止するのは酷くない?
別にいいじゃん。反対空いているんだから。
疲れたのかな。エレがうとうとしている。でも、寝ようとはしない。
「……そう言えば、エレは僕らの拠点に行きたいんだったね」
「うん」
エレ達は、本来ここに来なくてよかった。きたのは、僕がいるからというだけ。ようやく時間が取れたから、話を聞いてあげないと。
エレは、ジュースを待っている。ジュースが来るまでは一切話しません。と顔で訴えている。今回の事で疲れているだろうから、ジュースの時間までは待ってあげるか。
……ミドゥの部屋、なんかそわそわしてくる。なんだろう。いたずらしたくなってくるのかな……それとは違うかも。なんというか……そうだ! ベッドがふかふかそうだからだ。ベッドで寝たいだけだ。
うんうん。そうだよね。ベッドは見るからにふかふかだから。エレが寝たくなるくらいふかふかだから。
……
あれ? 気のせい? 物置部屋らしき場所の扉、ちょっと開いてる。暗くてよく見えないから、僕の目の問題だよね? なんか、僕の写真がある気がする。
「どうかしたの? 」
「ぴきゃ⁉︎ な、なんでもないよ⁉︎ ……ミドゥ、あそこって」
ミドゥに声をかけられて、エレみたいになった。ミドゥが、カップが入った器を机に置く。物置部屋らしき場所の扉を開けた。
僕の写真に、報告書らしき書類の山。エレの写真とフォルの写真もある。僕のよりは少ないけど。
しかも、全て隠し撮り。
どっかで監視でもしていたのかな。
他にみんなを見る。引いているのは僕だけじゃなかった。フォルとギューは、「圧巻だなぁ。」「ねー。」と完全他人事。というか、何がって言いたいんだけど。
ドン引き状態の僕らを前に、ミドゥはいつも通り振る舞っている。今更言い訳はいらないというわけか。と問いたくなるほどに。
「これ、調査の資料。星の生命とその他諸々。なぜか、シェフィの周りで問題起きる事多かったから。あと、エレとフォル」
調査……言い訳、じゃないよね?
写真なんて必要ないだろうとはいえない。必要になる事があるから。写真に偶然写った怪しいものを調べるとか、僕もしているから。
ちゅーー——エレはもう物置部屋ならぬ隠し部屋二は興味がない。ジュースに夢中。イシュもジュースに夢中。薄紅色のジュース。
フォルとギューは、談笑中。
ヴィーは、イシュの面倒見ている。
気にしているのは僕だけのよう。
「……シェフィ、あのね……エレは、フォルと一緒がいいの。今のままだったら、どうしようと一緒は叶わないから。それに、できる事も増えると思うから、だから」
「うん。いいよ。今の君を信じる。だから、僕らの拠点に来てくれるかな? 」
ジュースを堪能したエレは、早速理由を教えてくれた。僕も、それに関しては止めるつもりなんてない。ただ、知りたかっただけで。
ミドゥが僕の隣に座る。座る前にあの扉閉めて欲しかった。気になるから。
「ところで、ギューはいつまで休暇取れた? 」
「今日までだったが……これ休暇じゃねぇだろ」
それはそう。ただ仕事してただけ。休暇中も仕事なんて、大変だよねぇ。イシュも変わんないけど。
他人事に思えないイシュが慰めようと、無言でエレの写真を渡している。そしてエレに没収されてる。エレの寝起き写真。いつ撮ったかは不明。
「……僕がセイにぃ様……今一応仕事中だ……セイリション様に言っておくよ」
どう見ても仕事中に見えない。フォルもゆったりと寛いでいる。
「いいのか? まーた、お小言言われっぞ」
「だろうね。でも、そもそも君の今の任務ってエンシュア組織関連でしょ? なら、仕事はちゃんとしてんだからいいじゃん。帰らないのは僕と一緒でいつも、だからね」
「なんだよなぁ。なんで、あんだけ言われる必要あるんだろうなぁ。自分の仕事は、してんのに」
「ほんとそれだよね。自分の仕事は、しているんだからいいじゃん」
……自分の、ね。
仕事できるから。早いから。
僕は本家当主の補佐だからさ、そこまで詳しいわけじゃないよ。でも、本家がする仕事の部分を全く手伝わないから言われてんじゃないかな。エルグから聞いた話だけど、フォルもギューも、禁呪の取り締まりとかばっかで、書類仕事最低限しかしないから。なんなら、溜め込んで、提出期限ギリギリに出すから。
エレとイシュが、どういう事という視線を送ってくる。僕は二人から視線を逸らすしかできない。
同時に、フォルから言うなという笑顔が送られているから。
僕も紅茶飲もうかな。そっとカップを手に取る。口に含んだ液体は、以前神殿の応接室で飲んだものとは違う。おそらく、聖月国産のバーディアル……寒い地域でのみ取れる茶葉じゃない。
これは……なんだろう。この辺で珍しい茶葉を仕入れられるとしたら、霊蝶国かな。
香りがすごい。ゼロの管理する庭園を思い出す。少し花の蜜でも入れてるのと言いたくなる、わずかな甘味。
僕、これすき。
「……」
ミドゥが心なしか嬉しそう。
「これ、神殿で使うのじゃないよね? 」
「ぼくが仕事で霊蝶国行った時に買った」
「いいの? そんなのもらって? 」
「シェフィだけだから。付き合ってくれたお礼」
何か企んでいるんじゃとか、散々思ってたけど……まさかのご褒美が待っていただけだった。
「ありがと」
「別に……イシュは紅茶うるさそう。エレは飲まないで、味覚似てそうなのがシェフィしかいなかっただけ」
そんなに似ていたかな? 僕の記憶だと、そこまで似ていないと思うんだけど。味覚変わった?
まぁ、いっか。気にしていても何にもならないから。
「ねぇ、それよりも、エレはいつエレに会えるの? ……エレはいつエレ……エレは……なんか違うの」
「言ってる事わかるからいいよ。そうだね……僕らは祭事が終わるまで残るけど、エレは」
「エレも一緒に残るの。何もなかったら、フォルとデートしてるから」
エレが残る事で一番喜ぶのはイシュ。フォルは、それでもいいのかな。残りの時間でやりたい事たくさんあるんじゃないのかな。
「エレ、デートなら今度こそ全部押し付けようよ。何があっても。それに、お揃いとかいいよね」
大丈夫そう。むしろ、デート邪魔するなか。
「それなら、手伝いの時に泊まっている部屋使って。掃除してあるから。シェフィはこの部屋」
「ちょっと! ずるいじゃない! なんでミドゥは同室にして私はエレと同室にしてくれないのよ! 」
「エレの意思があるから」
「だったら、そっちだってシェフィの意思があるでしょ! シェフィが一度でも一緒の部屋がいいって言ったわけじゃないでしょ! 」
イシュの言い分はごもっとも。僕は一度も言ってない。この兄妹、邪魔しかしていないんだろうなぁ。ここにいる時。互いの言い分の。じゃあそうしよっかとはならないんだか。
自分はいいけど相手はだめじゃなくて。
「エレは、イシュ以外だったら誰でもいいよ。ねむねむはイシュやだ」
「えっ⁉︎ 」
「だって、イシュぎゅぅってしてねるから。エレは、お胸挟まれて、気づいたら朝なの。イシュ、ベッドからいなくなってるの」
反論できなくなっちゃってる。ぎゅぅせずに寝るとは言わないんだ。
「そういう事だから。シェフィは、こっちで引き取っておく」
「うん。ありがとミドゥ。シェフィも、ずっとかわいいとか言ってて、エレ寝れないの」
「えっ⁉︎ 」
なんか、僕まで拒否されてる。それは、ちょっとかわいいって口に出ているけどさ、それだけだよ。それ以上は何もないんだよ。
あと、イシュだけじゃないね。二人っきりだと一緒に寝たくないのは。
「……ギューかフォル以外二人っきりやかも。ミドゥはシェフィ引き取るから」
「じゃあ、今日は僕と寝よっか」
「うん。フォルと寝る」
二択で結局いつも通り。ここで二人以上で寝るのは、狭いから。狭いというか、多分ベッドに入らないね。
話が終わって、しばらくはミドゥの部屋でみんな一緒。楽しんでいたけど、何か忘れてるような気がするんだよなぁ。なんだっけ?




