第13話 三十分おきくらいだったもの!
「今度の土曜日、家電と一緒にスマホも買おうと思うんだ」
翌朝。朝食の席で、俺はみんなに提案を持ち出した。
「お、機種変するん?」
彩夏がトーストを齧りながら訊いてくる。
「俺のじゃない。遥ちゃんのだよ。昨日思ったんだ。みんなとグループLINEで連絡できないと不便だって」
「わたしに? そんな、もったいないですよ。使いこなせないし」
遥は目を丸くして、両手を左右にぶんぶん振った。
「いや。持った方がいいですよ。お家の電話もないし、遥さんにはお家のことで連絡したいことがきっと出てきます」
朝食のベーコンエッグとコーンスープを座卓に運びながら葵が言った。
今日の食事当番は葵だ。遥が和食、葵が洋食。そんな住み分けが、いつの間にかできつつあった。
「そうだよ! 女子高生がスマホ持ってないなんて、今の時代ありえないって。クラスで浮いちゃったら大変だし」
配膳を手伝いながら詩音も葵に同調する。
「せっかく兄さんが買うてくれるって言ってるんやから、甘えとき。じゃないと、また昨日みたいに十分おきに『LINE来てない?』って聞いて回ることになるんやからな」
「え? そうだったの?」
俺が驚きの視線を向けると、遥は見る間に顔を赤くした。
「ちょっと、彩夏ちゃん、大げさすぎ! せ、せいぜい三十分おきくらいだったもの!」
「わたしも賛成です。通信手段のない人がいるとなにかと不便です。あと、家電を買いにいくんだったらWi-Fiの中継機が欲しいです」
「中継機ってなんですか?」
真緒が不思議そうに首を傾げる。
「Wi-Fiの電波をルーターから離れた部屋や、遮蔽物がある場所まで中継して、通信を安定させる機械のことです」
「なるほど、それは捗る」
「くしゅん!」
くしゃみの音がしたほうに視線を向けると、玲奈が二階から降りてきたところだった。
「玲奈ちゃんも賛成だよね?」詩音が明るく声をかける。
「いや、いきなり言われても、なんのことかわかんないし」
「遥さんもスマホデビューした方がいいんじゃないかって、話をしていたんです」
「そんなのどっちでもいい。好きにすれば?」
玲奈は寒そうに腕をさすりながら、洗面所の方へ姿を消した。
「玲奈ちゃんってば、あたしたちに興味なさすぎー」と詩音がぷくーっと頬を膨らませる。
「詩音、そんな言い方しないの」と葵がたしなめつつ、料理を並び終える。
コーンスープの匂いが食卓を満たす。
「……お兄ちゃん。わたし、やっぱりスマホなんて必要ないです。もったいないですよ」
どうやら、彼女はお金のことを気にしているようだ。ま、たしかに最近のスマホって高いけど。
「じゃあ、こうしよう。俺がスマホを機種変するから、古いのを遥ちゃんに譲る。これならいいだろ?」
【あとがき】
ここまでお読みいただきありがとうございます!
カクヨムでも掲載中で、両方の更新するのが手間になってきたので、カクヨム版をご覧ください。
https://kakuyomu.jp/my/works/2912051598752518689




