51/58
誰も見ていない場所で、毎朝剣を磨き続けた
「辺境送りは、出世を諦めた者の場所だ」と先輩に言われた。
それが正直なところだ、と思いながら私は荷物を担いで山を越えた。
着いた村は小さくて、魔物の出没が絶えない土地だった。
隊長は無口な老兵で、初日にこう言っただけだった。
「毎朝、村の外の道を歩け」
理由も聞けないまま、私は毎朝歩いた。
三週間が経つ頃、わかってきた。
魔物の足跡。
押し倒された草。
土の乾き方。
隊長はそれを「読む」训練をさせていたのだ。
ある朝、森の奥に大型の魔物の痕跡を見つけた。
村の方角に向かっている。
私は走って戻り、村人を避難させた。
魔物が来たのはその二時間後だった。
被害はなかった。
村長が私に頭を下げた。
「ありがとう」と。
隊長は何も言わなかった。
ただ、剣の手入れを続けながら、少しだけ口の端を上げた。
名声も勲章も、ここにはない。
でも毎朝、誰かが安心して目を覚ます。
それで十分だと気づいた時、私はここが好きになっていた。




