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千年の約束
私は何度目かの人生で、ようやく気づいた。
この世界には、忘れられない魂がある。
最初の生では、私は辺境の薬師だった。
村に迷い込んだ少女を助けた。
名前も聞かないまま、疫病で死んだ。
二度目の生では、騎士だった。
戦場で倒れた兵士の中に、あの瞳を見つけた。
手を伸ばしたが、間に合わなかった。
三度目の生では、魔術師になった。
転生の記憶を保つ禁術を覚えた。
今度こそ、あの魂を見失わないために。
四度目。
市場で果物を売る少女がいた。
声をかけようとして、足が止まった。
彼女は私のことを知らない。
毎回、知らない。
覚えているのは、いつも私だけだ。
それでも関係を築き直す。
名前を聞く。
好きな花を覚える。
隣で笑えるようになる頃には、また別れが来る。
五度目の生の朝、目覚めたとき、私は泣いていた。
「また会える」という確信と、「また忘れられる」という絶望が、同時に胸を刺した。
それでも私は街へ出る。
あの瞳を、探しに。




