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封印を守る老人が、魔物と毎晩話していた
遺跡の番人になって、最初の夜のことだ。
地下から声がした。
低くて、静かな声。
「腹が減った」
俺は剣を抜いた。
それが封印された魔物の声だとわかるまで、少し時間がかかった。
老いた前任者から引き継いだ時、言われていた。
「話しかけてくるが、絶対に答えるな」
でも俺は答えた。
「今は夜だ。食うものがない」
「そうか」と魔物は言った。
それだけだった。
次の夜も、また声がした。
「今日は何があった」
俺はなぜか、話してしまった。
村で子供が生まれたこと。
川が氾濫して畑が一部流されたこと。
魔物は黙って聞いていた。
五十年、そうやって話し続けた。
ある晩、俺は聞いた。
「お前はなぜ封印された?」
長い沈黙の後、魔物は言った。
「強すぎたからだ。誰も、俺を止められなかった」
「今も強いか?」
「今は弱い。お前と話すのが楽しみになってしまったから」
俺は笑った。
魔物も、笑ったような気がした。




