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神託は、俺が死ぬと告げた。正確には、半分だけ合っていた。
神殿の巫女は俯いたまま言った。
「あなたは、次の満月までに死ぬ」
同行者たちが青ざめた。
俺だけが、妙に落ち着いていた。
「それは変えられるか?」
「予言は変えられない。ただ、何が死ぬかは、まだ見えない」
何が、という言葉が引っかかった。
俺はその夜、考え続けた。
身体か。魂か。それとも何か別のものか。
満月の前日、俺は決めた。
ずっと抱えてきた憎しみを、捨てることにした。
十年、胸に住み着いていた怒りを。
幼い頃、俺の村を焼いた男への憎しみだった。
その男がすでに死んでいると知ったのは、三日前だった。
病で、ひっそりと逝っていた。
復讐する相手は、もういない。
俺は墓の前に立った。
何も言えなかった。
だが長い間、そこにいた。
満月の夜、巫女のところへ戻った。
「予言は正しかった。怒りを抱えて生きていた俺が、死んだ」
巫女が初めて顔を上げた。
「神託はいつも、正しい場所を照らす。読み解くのは、あなた自身です」




