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島が落ちると知ったのは、島を愛してからだった
浮遊島に着いたのは、嵐で船が壊れたからだ。
雲の上に集落があった。
百人ほどの住人が、静かに暮らしていた。
畑を耕し、鳥を飼い、夕方になると全員で星を眺める。
俺はそこで一年過ごした。
島の長老は百年近く生きていた。
ある夜、俺に言った。
「島はあと五年で落ちる」
「なぜですか。」
「島を浮かべている石が、少しずつ力を失っている。古代の石だ。無限には続かない」
「なぜ住民に言わないのですか?」
「言ったら、どうする。逃げるか? どこへ? この島の外に、行く場所がない者も多い」
俺は黙った。
「私は長老として、ここで生まれてここで死ぬ。残り五年を、精一杯生きる。それだけだ」
老人の目は穏やかだった。
翌朝、島の子供たちが駆け回っていた。
声が澄んでいた。
笑い声が、雲に溶けていった。
俺は島を離れる日、振り返った。
島はまだ、ゆっくりと浮かんでいた。




