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異世界住人譚~ショートショート集~  作者: nireron


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36/57

世界の終わりに、俺は朝食を作っていた

神々が「世界の終焉まで三日」と告げたのは、朝のことだった。


街は混乱した。

泣く者、逃げる者、略奪する者。


俺は台所に立った。


卵を炒め、豆のスープを煮た。


隣人のばあさんが戸を叩いた。

「あんた、正気か?世界が終わるんだぞ」


「だから腹に入れておかないと」


ばあさんはしばらく俺を見ていた。

それから「私にも食わせろ」と言って入ってきた。


二人で食べていると、また戸が鳴った。


今度は子供が三人立っていた。

親とはぐれたらしかった。


全員に椀を出した。


噂を聞いて、また人が来た。

俺の家はいつのまにか、二十人近くになっていた。


それから三日、俺はずっと料理を作り続けた。

食料はどこからか集まってきた。

誰かが野菜を持ってきた、誰かが薪を割ってくれた。


三日目の夜が明けた。


世界は終わらなかった。

神々の告げた理由は、今もわからない。


ばあさんが言った。

「試されたのかもしれないね」


俺は思う。

終わりの前に何をするか、それがその人間の正体だ。

俺は、腹を満たしてやりたかった。それだけだった。

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