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人の形を変えた朝
三十年間、騎士として戦い続けた。
それが、「国家の盾」に選ばれた理由だった。
強制進化の儀式は一晩で終わった。
痛みはなかった。
ただ、朝に目が覚めると鏡の中の顔が変わっていた。
目が金色になっていた。
皮膚の下に、蒼い文様が浮かんでいた。
声のトーンが、少し低くなっていた。
「完成です」と術師は言った。
「これで陛下をどんな敵からも守れます」
仲間が肩を叩いた。
でもその手が、一瞬だけためらっていた。
その夜、一人で酒場に座っていた。
隣に老人が来て、静かに言った。
「お前の目、前のほうが良かったな」
老人は私の元上官だった。
「ただの感想だ。だが知っておいてほしい。形が変わっても、お前は同じだ。姿が違うだけで、中身は同じ騎士だ」
翌日から、鏡を見るようにした。
形は変わった。
でも剣を握る理由は、変わっていなかった。




