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聖女は祈れと言われたので、全員で帰省します ~搾取神殿が三日で崩壊するまで~  作者: 月代


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7/12

第7話 三日後の夜明けに


イサークと会ってから、数日が過ぎた。


大祭が、近づいていた。


神殿で、一年で最も大きな祭り。

その日は、聖女が総出で祈らされる。

神気を、根こそぎ絞り取られる日だ。


私たちは、決めた。

動くなら、その前だと。


その夜。


中核の四人で、聖女たちを集めた。


人気のない、地下の一室。

十数人の少女が、不安げに座っている。


私は、立ち上がった。


「みんなに、話があるの」


声が、少し震えた。


たくさんの目が、私を見ている。


「私たち、神殿を出る。

全員で、ここを出て、帰るの」


ざわめきが、起きた。


「そんなの、無理よ」

誰かが言った。


「捕まる。罰せられる」

別の子が言った。


怯えだった。

半分以上の子が、顔を青くしていた。


予想は、していた。

でも、いざ目の当たりにすると、胸が痛んだ。


「規則を、調べたの」

私は言った。

「辞めちゃいけないなんて、どこにも書いてない。

私たちは、帰っていいんだよ」


それでも、空気は重かった。


「でも、行く場所がない子は……」

一人が、つぶやいた。


そのときだった。


コラリーが、立ち上がった。


青白い顔で。

咳をしながら。


「わたしも」

彼女は言った。

「行く場所、なかった。

孤児だから」


みんなが、コラリーを見た。


「でも、リーゼが言ってくれた。

一緒に来て、って。

帰る場所がないなら、作ればいいって」


コラリーの声は、小さかった。

でも、まっすぐだった。


「わたし、怖い。

今でも、すごく怖い」


彼女は、自分の胸を押さえた。


「でも、ここにいたら。

わたしたち、墓標になるだけ。

若いまま、死ぬだけ」


その言葉に、部屋が静まった。


「地下の記録、見た人いる?

歴代の聖女、みんな二十歳くらいで死んでる。

あれが、わたしたちの未来だよ」


誰も、何も言えなかった。


「怖いのは、一緒。

でも、墓標になるよりは。

わたしは、賭けたい」


コラリーが、深く頭を下げた。


「お願い。一緒に、来て」


しん、とした空気。


やがて。


一人の子が、立ち上がった。


「……私も、行く」


それから、もう一人。

また、一人。


半分ほどの子が、立ち上がった。


「私たちも、賛成」


残りの子は、うつむいたままだった。


「ごめんなさい。

わたしは、怖くて……」


私は、首を振った。


「いいの」

私は、優しく言った。

「無理に、誘わない。

これは、自分で決めること」


強制は、しない。

神殿と、同じことはしない。


それぞれが、自分で選ぶ。


「行きたい子だけで、いい」

私は言った。

「でも、決行の日は、絶対に秘密にして。

それだけは、お願い」


賛同した子たちが、うなずいた。


「決行は」

マレナさんが、口を開いた。

「次の大祭の、前夜」


みんなが、息を呑んだ。


「大祭の準備で、神殿は混乱してる。

見張りも、手薄になる。

その隙を、突くのよ」


三日後の、夜明け前。


それが、私たちの決行日になった。


集会のあと。


マレナさんが、一通の手紙を見せてくれた。


「あんたの村に、先触れを出す。

聖女が大勢、向かうってね。

受け入れの準備を、頼んでおくわ」


私は、うなずいた。


ミレル。

私の、故郷。


村のみんなは、受け入れてくれるだろうか。


不安は、あった。


でも。

村長のガレスさんなら。

きっと、分かってくれる。


「無理すんな」


いつも、そう言ってくれる人だから。


「三日後ね」

マレナさんが、低く言った。


「三日後」

私も、うなずいた。


胸の中で、何かが静かに高鳴っていた。


恐怖と。

希望が。


同じだけ、混ざり合っていた。


もう、後戻りはできない。


私は、窓の外を見た。


遠い、南の空。

あの向こうに、ミレルがある。


待っていて。

今、帰るから。


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