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聖女は祈れと言われたので、全員で帰省します ~搾取神殿が三日で崩壊するまで~  作者: 月代


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第5話 皮肉屋の同調


コラリーと話した、翌日のことだった。


祈りが終わったあと。

マレナさんが、私を物陰へ引っ張った。


「ちょっと、来なさい」


赤毛を結い上げた彼女は、腕を組んで私を見た。


「あんた、昨日コラリーに言ってたわね。

一緒に帰ろう、って」


私は、ぞっとした。


「聞いてたの?」


「壁に耳あり、よ」

マレナさんは、ふっと笑った。

「この神殿で、内緒話なんて無理」


私は、身構えた。


このまま、密告されるのか。

計画は、終わりなのか。


でも。


マレナさんは、意外なことを聞いた。


「で。本気なの?」


「えっ」


「コラリー一人連れて帰って、終わり?

それとも、もっと先まで考えてる?」


私は、彼女の目を見た。


試されている。

そう、感じた。


だから、正直に答えた。


「一人じゃ、足りない」

私は言った。

「ここにいる、みんな。

全員、連れて帰りたい」


マレナさんの眉が、ぴくりと動いた。


「全員、ね」


彼女は、しばらく黙った。


そして。

ゆっくりと、口を開いた。


「いいわ。あたしも乗る」


私は、耳を疑った。


「えっ……?」


「あたしね」

マレナさんは、髪をかき上げた。

「ずっと、この神殿を出たかった。

でも、一人じゃ無理だと思って、諦めてた」


その声に、初めて熱がこもった。


「あんたみたいな子が来るのを、待ってたのかもね」


私は、胸が高鳴った。


「協力して、くれるの?」


「あたしは、貴族の娘だったのよ」

マレナさんは、にやりと笑った。

「作法も、人脈も、知ってる。

門の通り方も、手紙の出し方もね」


頼もしかった。


私一人では、何も知らなかった。

でも、マレナさんがいれば。


「使いなさい、あたしを」

彼女は言った。


そのときだった。


また、物陰から声がした。


「ぼくも」


ノエルだった。


中性的な顔の少年が、おずおずと出てきた。


「ぼくも、一緒に行きたい」


「ノエル」

私は驚いた。


ノエルは、うつむいた。


「ぼく、男の聖女だから。

神殿の人たち、ぼくを気味悪がってる。

いつか、消されるかもって、ずっと怖かった」


その声は、震えていた。


「だから」

ノエルは、顔を上げた。

「だから、一緒に行く。

ここに残っても、終わりだもん」


その目に、決意があった。


子どもだと思っていた。

でも、この子は、ちゃんと自分で決めていた。


「うん」

私は、うなずいた。

「一緒に行こう、ノエル」


こうして。


私たち四人が、集まった。


私、リーゼ。

病弱なコラリー。

皮肉屋のマレナさん。

少年のノエル。


夜。

私たちは、こっそり一室に集まった。


「で、どうやって全員連れ出すの?」

マレナさんが、腕を組んだ。


私は、考えていたことを話した。


「一人ずつ、説得して……」


「だめね」

マレナさんが、即座に遮った。


「えっ」


「いい? よく聞きなさい」

マレナさんは、声を潜めた。


「一人ずつ抜けたら、どうなると思う?

最初の一人が逃げた瞬間、神殿は警戒する。

残りは、見張られて、逃げられなくなる」


私は、はっとした。


「だから」

マレナさんは、指を立てた。

「やるなら、一斉に。

全員で、同じ日に、同時に抜ける」


「一斉に……」


「そう。

そうすれば、神殿は誰も止められない。

一度に全員消えたら、追いきれないもの」


なるほど、と思った。


一人の反逆は、潰される。

でも、全員でなら。


「連帯、ね」

マレナさんが、にやりとした。

「あんたの言う『全員で帰る』。

悪くないわ」


私は、胸が熱くなった。


一人で頑張るんじゃない。

仲間を増やして、みんなで勝つ。


それが、私たちの武器だ。


「決めた」

私は言った。

「全員で、帰ろう」


四人の目が、合った。


そこには、もう諦めはなかった。


「でも」

マレナさんが、ふと真顔になった。

「一つ、足りないものがある」


「足りないもの?」


「あたしたちが正しいって、証明するもの」

マレナさんは言った。


「神殿が、どれだけ汚いことをしてるか。

それを、世間に突きつける証拠がいる」


「証拠……」


「会計帳簿よ」

マレナさんは、低く言った。


「寄進が、どこに消えてるか。

ぜんぶ書いてある帳簿。

それを握ってる男がいる」


私は、息を呑んだ。


「誰なの、それ」


マレナさんは、ゆっくりと言った。


「書記官の、イサーク。

神殿のお金を、全部管理してる男よ」


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