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聖女は祈れと言われたので、全員で帰省します ~搾取神殿が三日で崩壊するまで~  作者: 月代


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第11話 崩壊の三日目


故郷へ向かう、三日目。


その朝、空気が変わった。


街道を行き交う人々が、口々に同じ話をしていた。


「王都の結界が、完全に落ちたぞ」


私は、足を止めた。


「結界が、消えた。

浄化も、治癒も、ぜんぶ止まった。

王都は、もう大混乱だってよ」


行商人が、興奮気味に話していた。


三日。


私たちが抜けて、たった三日。


あの巨大な神殿の力が、止まった。


「それだけじゃない」

別の旅人が言った。

「神殿の中で、とんでもないことが起きたらしい」


私は、耳を澄ませた。


「書記官が、貴族会議で帳簿を出したんだ。

寄進の、本当の使い道が書かれた帳簿を」


イサーク。


私は、布に包んだ写しを、ぎゅっと抱えた。


彼が残した、原本。

それが、王都で公開されたのだ。

私の手の中にあるのは、その写し。


「大司祭が、寄進を独り占めしてたってよ。

聖女を飢えさせて、自分は豪遊してた」


「許せねえな」


「聖女が死んでた記録も、隠してたらしい。

何人も、若くして死んでたって」


歴代聖女の、墓標。


あの記録室の真実が、ついに明るみに出た。


「大司祭は、責任転嫁しようとしたけど。

書記官と、残った神官と、市民の証言で、もう逃げられねえ」


「権威は、地に落ちたな」


私は、立ち尽くした。


胸の中で、いろんな感情が渦巻いていた。


あの神殿が、崩れた。

あんなに巨大で、絶対だった神殿が。


たった、三日で。


「私たちが……壊したの?」

私は、つぶやいた。


すると。

マレナさんが、首を振った。


「違うわよ」


彼女は、北の空を見た。


「あたしたちは、ただ抜けただけ。

壊したのは、神殿自身よ」


その声は、静かだった。


「無理な仕組みは、いつか壊れる。

聖女を、ただ働きさせて。

飢えさせて、使い潰して。

そんなの、続くわけがない」


マレナさんは、私を見た。


「あたしたちが抜けたから崩れたんじゃない。

最初から、崩れる仕組みだったの。

あたしたちは、それを、ちょっと早く見せただけ」


私は、深く息を吸った。


そうだ。


私たちは、無理を、もうやめただけ。


崩れたのは。

無理を強いていた、構造そのものだ。


胸の中の重さが、すっと軽くなった。


「行こう」

私は言った。

「もうすぐ、ミレルだよ」


私たちは、最後の坂を登った。


長い、長い道のりだった。


痩せた体に、鞭打って。

何度も休んで。

励まし合って。


そして。


丘の頂上に、立った。


眼下に。


見えた。


「ミレル……」


私の、故郷。


小さな村。

畑が広がり、家々から煙が立っている。


夕暮れだった。


家々に、ぽつぽつと灯りがともり始めている。


懐かしい、その光。


涙が、こみ上げた。


「あれが、リーゼの村?」

コラリーが、隣で聞いた。


「うん」

私は、うなずいた。

「あれが、ミレル。

私たちの、帰る場所」


ノエルが、目を輝かせた。

「あったかそう……」


マレナさんも、珍しく黙って、村を見つめていた。


夕日が、村を金色に染めていた。


長い旅の、終わり。


そして。

新しい何かの、始まり。


私は、一歩、踏み出した。


「帰ろう、みんな」


村の灯が、私たちを呼んでいた。


その温かい光に向かって。

私たちは、坂を下り始めた。


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