王子たちの登場②
「…………」
三人の視線が、私に向けられている。
私は何となく居心地が悪くなり、背筋を伸ばした。
さっきまで少女に向けられていた笑顔。
その笑顔は、もう三人の顔にはなかった。
「……もう一人いたのか」
第一王子が、わずかに眉を寄せる。
そして、聞こえるか聞こえないかという
小さな声で舌打ちをした。
「それに……随分と年上だな」
「げ」
第二王子が、あからさまに顔をしかめる。
「年増じゃん」
「ちょっと、兄上」
第三王子が兄を見る。
「異世界人なんだから、年齢なんて分からないでしょう」
……。
少しだけ。私は思った。
この子は、もしかしたらまともなのかもしれない。
ところが。
「そう見えるだけかもしれませんよ」
第三王子は私をじっと見つめたまま続けた。
「……まあ、結婚適齢期は過ぎていそうですけど」
「…………」
訂正。
まともではなかった。
(はぁ?)
思わず、声が漏れそうになる。
何なの、この人たち。
そもそも私は、自分からここへ来たわけではない。
突然知らない場所へ連れてこられて。
訳も分からないままで。
ようやく状況を理解しようとしているところなのに。
初対面の人間に、年増だの結婚適齢期だの。
一体、何様なのだろう。
そんな私の気持ちなど知る由もない王子たちは、さらに言葉を続ける。
「まあ、いいだろ」
第二王子が興味を失ったように肩をすくめる。
「俺たちは、こっちのお姫様と親睦を深めなきゃならないしな」
「お姫様……?」
少女が戸惑ったように自分を指差す。
第一王子は、そんな少女へ優しく微笑みかけた。
「君は何も心配しなくていいよ」
先ほど私に向けていたものとは、まるで違う声音だった。
「これからのことは、僕たちが責任を持って面倒を見る」
「そうそう」
第二王子も笑う。
「欲しいものがあったら何でも言えよ。困ったことがあれば俺たちに言えばいい」
「…………」
少女は戸惑いながらも、小さく頷いた。
「……はい」
その様子を見て、私は何とも言えない気持ちになった。
そして第一王子が、近くにいた騎士たちへ視線を向ける。
「僕たちは、こちらの異世界人と親睦を深めなくてはならない」
そして。
まるでそこに置かれた荷物でも見るような目で、私を見る。
「そこの者の対処は、お前たちに任せる」
「え……?」
思わず声が出た。
しかし王子たちは、もうこちらを見ようともしない。
「行こう」
「ああ」
「お姉さん、こっち」
三人は少女を連れて、そのまま扉へ向かっていく。
少女だけが、何度かこちらを振り返っていた。
けれど、声をかけることもできないまま。
やがて。
重厚な扉が、ゆっくりと閉じられた。
――バタン。
静かな音が響く。
私は、しばらくその扉を見つめていた。
「…………」
何だったのだろう。
あの人たちは。
王子。
異世界人。
お姫様。
責任を持って面倒を見る。
頭の中に、さっき聞いた言葉が次々と浮かんでは消えていく。
そして最後に残ったのは――。
「…………は?」
思わず、呆れた声が漏れた。
私には、何が何だか分からなかった。
ただ一つだけ――。
胸の奥に、言葉では言い表せない小さな苛立ちが生まれていた。
それが、この後。
自分でも想像していなかったほど大きな怒りへと変わっていくことを――。
もう王子達が嫌いすぎて名前も設定も考えるの1番苦労しました。(第3王子はまだ幼い部分があるからこの後の展開どうしようか悩んでます)




