第2章 花札一家徹底壊滅編 第5話
因縁の場所である舞踏会の会場――かつて私が断罪され、清蓮院家が没落の産声を上げたあの場所に、私は一人で立っていた。季節は巡り、今は静寂に包まれた広大なホールだ。
私の手元には、ジュニアが逮捕される直前まで隠し持っていた「極秘の闇帳簿」の原本がある。そこには、花札家が過去数十年にわたり行ってきた、全ての権力汚職、殺人教唆、そして清蓮院家を陥れるためにジュニアと父親のⅧ世が練り上げた「断罪計画」の詳細な議事録が記されていた。
私はそれを、メディア各社への一斉送信と同時に、歴史の証人としてこの会場のメインモニターへと転送した。
世界中に、ジュニアとⅧ世の声で録音された「清蓮院家を食い物にする計画」が流れる。
『あの女は、ただの駒だ。婚約発表で壇上に上げたあと、徹底的に叩き潰して、その財産をすべて我々のものにする。正一朗の哀れな顔が目に浮かぶよ』
会場のスピーカーから響き渡るその卑劣な笑い声は、かつて私に絶望を植え付けたあの日のジュニアの言葉そのものだった。私は、この証拠映像を世界中の配信サイトへ同期させ、さらにジュニアが勾留されている施設内のテレビへも強制的に流した。
今、ジュニアは独房のモニターを見ながら、自分が何をしたのか、そして自分がどうやって破滅したのかを、死ぬまでリピートし続けることになる。
もはや、彼に逃げ場はない。大統領の権限も、財閥の資金力も、家族の絆も――全てを奪い去った。
私は夜の帳が降りた舞踏会の壇上に上がり、かつて私を断罪した場所で、静かに独り言をつぶやく。
「ジュニア、お前の父も、お前自身も、全ては私の手のひらの上で踊っていたのよ。これで、前世の清算は終わり」
復讐の果てに得たものは虚無か、あるいは完全なる満足か。私は夜空を見上げ、晴れやかな気持ちでその場を後にした。花札という名の、かつて私たちを滅ぼした毒の花は、根こそぎ刈り取られたのだ。




