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『境界断ちのノベェンタ』 〜観測整合維持局 第七補正執行室 野部遠汰の場合〜  作者: nobunobuwo


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第九十一話 「人類は“偉い人から直接認められるイベント”へ異常な感動補正を掛ける生物なので、授与式文化は文明規模で消滅しません」


 東央マテリアル。


 地下第四層。



 普段。


 使われない区画。


 そこが今日だけ、異様に豪華だった。


 赤絨毯。


 白照明。


 浮遊スクリーン。


 謎の高級感。



 入口看板。


【観測整合維持局・特例昇格授与式会場】



 佐伯、看板二度見。


「会社の地下でやる空気じゃないんですよ!!」



 対策部メンバー。


 正装。


 ただし。



 野村部長だけ、ネクタイ曲がっていた。


「えへへぇ……緊張するねぇ……」



 リゼは、月光石っぽいペンダントを触りながら静かに頷く。


「“ちゃんと祝われる”って、人類に必要なのよ。本来、村とか共同体って、“誰かが成長した時みんなで喜ぶ”機能あったの。でも現代、“結果だけ見て次へ行け”が多すぎるから、魂の達成感が追いつかないのよね。だから授与式とか卒業式って、実は“エネルギーの区切り”なの。“ここまで生きた”を身体へ教える儀式なのよ」



 佐伯、感心。


「九条さん、スピリチュアルだから人生の解像度高いんですよね……」



 アインは、静かに立っていた。


 白銀外套。


 しかし。


 様子がおかしい。


 少し硬い。


 理由。


 簡単だった。



 ノベェンタ。


 出世した。



 結果。



 直属上司。


 アイン、未だ慣れてない。



 その時。


 会場奥。


 巨大扉。


 開く。


 白い光。


 重力変化。


 空間沈黙。



 来た。


 親玉。


 観測整合維持局。


 最高位存在。


 正式名称。


【観測整合維持局中央統括存在・第一原初観測管理人格群統合意識体オリジン



 長かった。


 かなり。



 白いローブ。


 顔は見えない。


 だが。


 圧だけで分かる。


 強い。


 ものすごく。



 佐伯、声小さくなる。


「親玉きちゃった……」



 野村部長、震える。


「なんか校長先生と神様混ざった感じするぅ……」



 ノベェンタだけ、静かだった。



 オリジンは、ゆっくり口を開く。


「ノベェンタ」



 空間全体へ響く声。


「貴方の功績は、既に複数世界線へ影響を与えています」


 浮遊スクリーン展開。


【外側侵食阻止】


【観測崩壊防衛】


【認識汚染対策成功】


【人類側生存率向上】


 数字。


 多すぎた。



 佐伯、引く。


「えっ野部さんそんなことしてたんです!?」



 ノベェンタは、静かに頷いた。


「人類、“毎日生き延びてるだけ”でも結構世界救ってる場合あるので。あと現代社会、“自分の成果を自覚しないまま消耗する人”かなり多い。“頑張った感覚”無いのに疲れてる時、人類わりと危険です。ゲームだと経験値表示されるのに、現実だけ無通知仕様なんですよ」



 佐伯、少し静かになる。


「……それ、なんか分かります」



 リゼが、優しく微笑む。


「だから人類、“褒められる”を軽視しちゃ駄目なのよね。“認められた記憶”って、魂の非常食みたいなものだから。あと人間、“ありがとう”不足すると、自分で自分を削り始めるの。現代人、“足りない部分”ばっか見せられ続けてるから」



 静かな空気。



 その時。


 オリジンが、右手を上げる。


 白い光。


 空間中央へ、一振りの剣が現れる。



 黒い。


 しかし。


 星空みたいに光っている。



 キノピー、黒猫状態で反応。


「にゃっ!?」



 ノベェンタも、少し驚いた。


「……これは」



 オリジンは告げる。


【対外側統括監査責任者専用観測武装】


【《因果観測黒剣・ネオアカシック》】


 剣。


 浮かぶ。


 周囲へ、量子文字列。


 星みたいだった。


「この武装は、“観測された可能性”を斬ります」



 佐伯、停止。


「説明がピンとこないんですよ!!」



 ノベェンタは、静かに剣を受け取る。



 瞬間。


 空間全体へ、黒い波紋。



 キノピー。


 黒猫状態から、ぴょこんと飛び上がる。


「にゃにゃっ!?」


 そして。


 黒い剣へ、融合。



 空間震動。


 黒剣。



 二振りになる。



「増えた!?」



 アインは、静かに解析する。


「……既存黒剣との共鳴進化です、ノベェンタ統括」



 まだ慣れてない。


 役職呼び。


 少し悔しそう。



 しかし。



 真面目なので従う。



 ノベェンタは、二振りの黒剣を見つめた。


「人類、“武器へ名前付ける文化”かなり古いので。剣、銃、船。この辺、“人格投影”されやすい。あと長く使った道具、“自分の一部”化する現象あります。料理人の包丁とか、職人の工具とか。“ただの物”超えて、“人生の記録媒体”になるんですよ。あと人類、“二刀流”へ異常なロマン感じるので。現実だと重量配分とか利き手問題でかなり難しいんですが、“両手へ別の力を持つ”って概念そのものが厨二病へ直撃する。片方が漆黒、片方が蒼炎、とかやり始めた時点で人類かなりテンション上がる。ゲーム開発者、人類へ二刀流出すだけでだいたい一定層釣れるの知ってるので。あと黒剣二本、“終盤覚醒イベント感”かなり強いですね」



 佐伯、頭抱える。


「珍しく野部さんがテンション上がり始めてる!!」



 キノピー黒剣、嬉しそうに鳴く。


「にゃははは♡ 二本にゃ〜♡」



 オリジン。


 静かに頷く。


「故に、貴方へ託します」



 その瞬間。


 空間崩壊。


 黒い裂け目。


【権限上昇確認】


【観測偏重危険域到達】


【修正開始】



 外側。


 授与式へ乱入。



 会場揺れる。



 佐伯、叫ぶ。


「授与式の空気ぶち壊しなんですよ!!」



 だが。


 ノベェンタより先に。


 アインが前へ出た。


 白銀外套。


 静かな瞳。


 そして。


 悔しさ。


 焦り。


 尊敬。


 全部抱えたまま。


 立っていた。


「ノベェンタ統括」



 アイン。


 振り返らない。


「この案件、私が処理します」



 白銀光。


 空間展開。


 以前より強い。


 感情が、混ざっているから。



「《統合感情超越型現実再構築術式・アイン・レゾナンス・インフィニティ》」



 白銀閃光。


 外側。


 消滅。



 静寂。



 佐伯は、少しだけ息を呑んでいた。


 アイン。


 強かった。


 綺麗だった。



 そして。



 なんか。


 ちょっと。



 ドキドキした。


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