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『境界断ちのノベェンタ』 〜観測整合維持局 第七補正執行室 野部遠汰の場合〜  作者: nobunobuwo


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第八十九話 「人類社会というものは、“資格と認定とランク付け”が好きすぎるので、ツッコミ能力すら数値化され始めると文明はだいぶ末期です」


 観測整合維持局。



 時間未定義領域。


 白い回廊。


 浮遊文字列。


 無音空間。



 そして。


 巨大ホール。


【第七補正執行室・統合適性評価領域】



 佐伯は、完全に嫌な顔だった。


「名前がもう研修で精神削る施設なんですよ……」



 アインは、静かに前を歩く。


 白銀外套。


 整った姿勢。


 だが。


 内部的には、少し壊れていた。



 感情。


 理解は始まった。



 笑う。


 安心する。


 寂しい。


 嬉しい。



 この辺は、既に解析済み。


 しかし。


 恋愛感情。



 だけ。


 意味不明。


 理解不能。



 何故、佐伯を見ると少し安心するのか。


 何故、他者より優先的に視線追尾してしまうのか。


 何故、他の男性職員と話していると微妙にノイズ発生するのか。



 全く分からない。



 アインは、静かに自己分析する。


(……監査対象への保護意識強化でしょうか)



 違った。



 かなり。



 その時。


 空間中央。


 巨大スクリーン起動。


【監査官補佐適性試験開始】



 佐伯、顔引きつる。


「うわぁ出たぁ!!」



 白い文字列が流れる。


【戦闘適性】


【現実耐性】


【ツッコミ処理能力】


【認識負荷耐久】


【対ボケ瞬間判断力】



「ツッコミ処理能力って何ですか!?」



 アインは、静かに説明する。


「対策部環境、“認識異常存在より味方側がうるさい”ので。ツッコミ能力は精神安定へ直結します」



「公式認定されてる!!」



 ノベェンタ不在。


 しかし。


 影響だけは、深く残っていた。



 試験開始。


 第一試験。


【必殺技出力適性】



 空間展開。


 白い敵影。


 大量。



 佐伯、ハルバード展開。


「うわっ多っ!?」



 アインは、静かに頷いた。


「開始してください」



 佐伯、深呼吸。


 赤い光。


「《紅蓮連鎖旋風爆裂式超加速戦斧槍術・ヴァルキリーフレイム・テンペスト》!!」



 爆炎。


 敵群消滅。



【評価:B+】



「えっ厳しくないです!?」



 さらに敵増加。



 佐伯。


 連撃。


「《超電磁紅蓮螺旋斬滅戦術機構・バーニングスカーレット・インパクト》!!」


「《対外側制圧殲滅式紅槍回転乱舞・クリムゾンハリケーン》!!」


「《次元突破型高熱量多段衝撃術式・ブレイズエクスキューション》!!」



 赤い閃光。


 ハルバード。


 回る。


 強い。


 かなり。



【評価:A】



 佐伯、ガッツポーズ。


「よっしゃぁ!!」



 アインは、少しだけ嬉しそうだった。


「……成長していますね」



 その表情。


 優しい。


 本人だけ、気づいてない。



 次。


【ツッコミ認定試験】



 佐伯、崩れ落ちる。


「そんな資格あるんですか!?」



 空間展開。


 大量の幻影。


 ノベェンタ型。


 リゼ型。


 野村部長型。


 キノピー型。



 一斉に喋り始める。


「量子論的に唐揚げは二度揚げなので」


「月の周波数が焼きそばパンと共鳴してるわね」


「川でスイカ割りしたぁい!」


「にゃ〜♡」


 地獄だった。



「情報量多すぎるんですよぉ!!」



【処理成功】


【感情反射速度:A+】


【空気整理能力:S】


【半ギレ愛情補正:極めて優秀】



「半ギレ愛情補正って何!?」



 アインは、静かに頷いた。


「理想的ツッコミ適性です」



 佐伯、遠い目。


「もう戻れない気がしてきました……」



 最終試験。


【存在安定化認証】


 白い光。


 空間全体が、静かに脈動する。



 アインは、静かに説明した。


「監査官補佐認定後、“存在情報最適化”が行われます」



「なんか怖いんですけど!?」



「肉体劣化補正、疲労耐性、代謝安定化、美容維持、筋力最適化が発生します」



 佐伯、停止。


「……え?」



 白い光。


 包み込む。


【補正開始】


【体形維持機能付与】


【代謝効率最適化】


【現実負荷分散成功】



 数秒後。



 佐伯、目を瞬く。


「……なんか身体軽い?」



 アインは、静かに頷いた。


「半永久的に最適状態維持されます。過剰摂食でも崩れません」



 沈黙。



 そして。


「えっっっっっっ!!!!」


 歓喜。


 かなり。



「じゃあ食べ放題じゃないですか!!」



 アインは、少しだけ口元を緩めた。


「はい」



 その瞬間。


 新装備転送。


 赤い光。


 新型ビキニアーマー。


 以前より、さらに洗練。


 ライン。


 際どい。


 しかし。


 機能美だった。


 ハルバードも大型化。


 赤黒い刃。


 長大。


 重厚。



【監査官補佐専用武装】


【《紅蓮戦槍斧グラン・ヴァルキリア》】



 佐伯、鏡を見て硬直。


「うわっ!? なんか強そうでセクシーになってる!?」



 アインは、静かに見つめていた。


 視線。


 少し長い。


 本人、理由不明。


(……似合っていますね)



 胸部。


 少しだけ、熱い。


 処理不能。



 だが。



 嫌ではなかった。



 その時。


 佐伯。


 満面の笑み。


「焼肉行きましょうアイン先輩!!」



 アイン。


 一秒停止。



 そして。



「……はい」



 少しだけ。



 嬉しそうだった。


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