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『境界断ちのノベェンタ』 〜観測整合維持局 第七補正執行室 野部遠汰の場合〜  作者: nobunobuwo


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第七十八話 「UFO召喚儀式というものは、“人類が星空へ向かって寂しさを電波送信し続けた結果、たまに本当に返事が来る文化”です」


 午前零時三十六分。



 高知県。


 東央マテリアル地下第三層。


 対策部。

 

 キノピーが攫われて、空気が、完全に終わっていた。


 床一面。


 巨大召喚陣。


 黒曜石粉末。


 銀塩。


 魔導ケーブル。


 意味深な古代文字。


 さらに。


 ノートPC。


 電波測定器。


 古いオカルト雑誌。


 海外掲示板翻訳ログ。


 電磁波観測モニター。


 “現代科学”と“深夜二時の都市伝説”が握手していた。



「……会社でやる事じゃないんですけどねぇ」


 佐伯が言う。



 ノベェンタは、静かにモニターを見ていた。


「人類、“空を見上げる文化”かなり長いので。星座、神話、天使、龍、UFO。全部、“空の向こうに誰か居るかもしれない”って願望なんですよ。特に現代、“宇宙は広い”って知識だけ先行してるので、“この広さで人類だけな訳ない”って感覚持ちやすい。あとUFO文化、一九五〇年代以降急速拡大しましたが、本質的には“現代版妖怪譚”なんです。“誰かが見たらしい”“政府が隠してるらしい”“山奥で光った”。つまり都市伝説って、“科学時代の民間伝承”なんですよ」



 リゼが腕を組む。


「人類、宇宙まで行っても噂話してるのね」



「かなりしてます。“秘密情報”ってだけで脳内報酬出るので。あとオカルト文化、“完全否定されると逆に燃える”性質あります。“隠してるって事は本当なんだ!”って補強される。人類、“分からない物”へ物語を貼る生物なので。だから宇宙人って、“怖い”と“会いたい”が同時存在する珍しい概念なんですよ」



「まぁ平和的なら会ってみたいもの…」



 その時。



 野村部長が、ローブ姿で振り返る。


 眼帯。


 杖。


 謎の水晶。


 またかなり仕上がっていた。


「野部くん!! 座標固定できたぁ!!」



「何を成功させてるんですか」



「キノピー救出用宇宙間召喚術式だよぉ!」



 いつのまにかの部長の万能感…。



 アインが、静かに魔導陣を確認する。


 白銀長髪。


 浮遊術式。


 完全に宇宙魔導研究者。


「空間位相接続は可能です。ただし、“向こう側”からもこちらを観測可能になります」



「言い方が怖い!」



 ノベェンタは、静かに頷く。


「召喚術、“こちらが呼ぶ”だけじゃないので。“相手にも見つかる”のが本質です。電話もSNSも同じ。“接続”って、常に双方向なんですよ。あと宇宙人文化、“拉致”概念異様に多いですが、あれ現代人類の“自分の人生が急に壊れる不安”とも接続してる。“突然知らない場所へ連れて行かれる”って、社会不安のメタファーでもあるので」



「召喚術の本質っていわれてもねぇ…」



 その瞬間。


 召喚陣、起動。


 紫色の雷。


 低い振動。


 照明明滅。


【UNKNOWN SIGNAL ACCEPTED】


【CALLING…】



 天井が、裂けた。


 そこへ現れる。


 巨大UFO。


 銀色。


 無音。


 回転。


 意味深な発光。



「うわ本当に来た!」



 だが今回は。


 中央ハッチが開く。


 中が見えた。


 白い廊下。


 浮遊パネル。


 透明カプセル。


 そして。



 キノピー。


「にゃーーー!!」



 ガラス越し。


 めちゃくちゃ元気だった。



「生きてた!」



 しかし。


 何かがおかしい。


 頭。


 猫耳。


 いや元からだった。



 違う。


 服。


 フリル。


 白黒。


 ミニスカ。


 メイド服。



 沈黙。



「……え?」



 ノベェンタが、静かに目を細める。


「なるほど」



「いや“なるほど”じゃない!」



 その時。


 宇宙人達が現れる。


 灰色。


 細身。


 大きい目。



 だが。


 全員、オタクTシャツ着ていた。



「なんで!?」



 宇宙人の一体が、電子音声で言う。


『NEKOMIMI…MOE…CULTURE…VERY INTERESTING…』



 静寂。



 リゼが顔を覆う。


「地球文化の輸出先おかしいでしょ……」



 ノベェンタは、静かに頷いた。


「二〇〇〇年代以降、日本オタク文化かなり世界拡散しましたからね。アニメ、ゲーム、メイド、猫耳。“属性”という概念、人類のキャラクター認識を異常進化させた。あとメイド文化、“奉仕”と“安心感”と“非日常”が混ざってるので。“帰ってきてくれる居場所”として機能する場合ある。“おかえりなさいませ”って、現代孤独社会へかなり強く刺さる概念なんですよ」



「急にメイド文化論始まった!」



 宇宙人達が、キノピーを差し出す。


『UPGRADE COMPLETE』



「改造扱い!?」



 その瞬間。


 キノピーが、光る。


 ぽふん。


 煙。



 そして。


 猫耳メイド少女。


 銀髪。


 ふわふわ。


 鈴付き首輪。


 黒白メイド服。



 完全に。


 “秋葉原二〇〇七年黄金期”だった。



「にゃ〜♡」



 佐伯が固まる。


「えっ」



 アインが眼鏡を押し上げる。


「……術式完成度が高いですね」



「評価するな!」



 キノピーは、とことこと歩き。


 当然みたいに。


 ノベェンタへ抱きついた。



「ご主人様〜♡」


挿絵(By みてみん)



 静寂。



 リゼの周囲だけ、空気が歪む。


「……へぇ」



 低かった。


 かなり低かった。



 ノベェンタは、普通にキノピーを撫でる。


「猫、“安心した相手へ身体擦り付ける”習性ありますからね。あとメイド文化、“世話焼き属性”と結びつきやすいので。“甘やかされたい欲”と“世話したい欲”の中間へ刺さる。オタク文化、“戦うヒロイン”と同じくらい“帰れる場所系ヒロイン”人気高いですし。“お疲れ様”って言われるだけで救われる人類かなりいるので」



 リゼが、にこやかに笑った。


「くっ…アンタ今、“火にガソリン注ぐスキルSS”だわ!」



 キノピーは、ノベェンタへ頬擦りする。


「ご主人様いい匂いにゃ♡」



 空間、凍る。



 リゼの背後。


 紫黒色魔力。


 ゴゴゴゴ……。


「むむむぅ〜…ちょっと猫耳メイド召喚エンドなんえやめなさいよ!!」



 宇宙人達。


 満足そうに頷く。


『LOVE…VERY IMPORTANT…』



 そして。


 UFOは、静かに夜空へ消えていった。



 残されたのは。


 焦げた召喚陣。


 疲弊した対策部。


 猫耳メイドキノピー。



 そして。



 妙に笑顔のノベェンタと。



 かなり危険な笑顔のリゼだった。


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