第七十七話 「召喚術という文化は、“人類が孤独すぎて昔から見えない何かと契約したがる習性”なので、魔法陣も電話帳も本質的には“誰かを呼ぶ技術”です」
午後十一時十三分。
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東央マテリアル地下第三層。
対策部。
深夜。
静かな白色灯。
換気ファン音。
エナジードリンク。
現実安定率モニター。
そして。
床いっぱいに描かれた、巨大魔法陣。
終わっていた。
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「……なんで会社で召喚儀式始まってるんですか」
佐伯が言う。
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床。
黒曜石粉末。
塩。
蝋燭。
魔導インク。
意味深な古代文字。
完全に。
“深夜二時のオカルト掲示板”みたいな光景だった。
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ノベェンタは、静かに頷く。
「最近、“召喚型認識汚染”増えてるので。人類、“自分だけではどうにもならない状況”へ置かれると、“外部存在”を呼びたくなる習性あるんですよ。神、精霊、悪魔、守護霊、AI、推し配信者。この辺全部、“自分を理解してくれる何か”への祈りなので。あと召喚文化、“孤独な時代”ほど流行る傾向あります。“誰か来てくれ”って、人類かなり昔から言ってる」
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リゼが魔法陣を見る。
「人類、昔からずっと寂しいのね」
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「かなり寂しいです。だから“名前を呼ぶ”文化が異常発達した。真名、契約、詠唱、呪文。この辺、“存在を定義して接続する技術”なんですよ。あと召喚術、“長い詠唱ほど本気っぽい”問題あります。“古代語+意味深単語+世界終焉系”入ると急に強そうになるので。人類、ラテン語っぽい響きへかなり弱い」
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「雰囲気で八割押してる!」
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その時。
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野村部長が、黒ローブ姿で現れた。
杖。
眼帯。
首飾り。
かなりノリノリ。
「野部くん!! “召喚士感”どうかなぁ!?」
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しかも。
肩へ。
小さいドラゴン。
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「どこで拾ったんですかそれ」
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「ガチャガチャ」
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「現代の召喚術!」
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アインは、静かに魔導書を開いていた。
銀髪。
長外套。
浮遊魔法陣。
完全に。
“古代帝国の禁書管理者”みたいになっている。
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「……アイン先輩、似合いすぎでは?」
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「召喚術は術式構造が美しいので」
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完全にハマっていた。
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「ちなみに召喚文化、“使役したい欲”だけじゃなく、“何かと共に戦いたい欲”もかなり強いんですよ。スタンド、守護獣、契約精霊、召喚獣。この辺、“一人ではない感覚”が重要なので。あとオタク文化、“主人公単騎最強”と同じくらい“相棒存在”好きです。“共に歩んできた存在”へ人類かなり弱い。最終決戦で召喚獣が庇う展開、人類だいたい泣くので」
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リゼが腕を組む。
「急に情緒へ攻撃してくるのやめなさい」
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その瞬間。
空気が揺れる。
【契約】
【召喚】
【眷属】
【古代存在】
【英霊】
【降臨】
黒い文字列。
空間へ浮かぶ。
モニター点滅。
【召喚型侵食開始】
【異界接続率:上昇】
【詠唱密度:危険域】
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「詠唱密度でまずい数値出てる!」
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床の魔法陣が光る。
紫色。
金色。
赤黒い雷。
風。
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そして。
巨大な光柱。
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「来ます」
アインが言う。
「術式、かなり古い。“集合無意識型召喚陣”です」
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ノベェンタは、静かに空を見る。
「召喚術、“居るはずのない存在を信じ切る”事で成立する側面ありますからね。つまり人類、“想像力”だけで時々世界を歪める。宗教、神話、都市伝説、ネットミーム。全部、“大勢が信じた情報”として実在性持ち始めるので。あと現代、“AIが返事する時代”になった結果、“無機物が応答する違和感”へ急速適応してる。人類、“返事が返る”だけでかなり親近感抱くので」
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「ちょっと怖い方向へ行くな!」
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光柱の中から、現れた。
白銀の騎士。
巨大狼。
炎の精霊。
翼ある蛇。
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さらに。
和装剣士。
神官。
古代魔導士。
英霊召喚だった。
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「うわぁ……豪華」
佐伯が引く。
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騎士が剣を掲げる。
『契約者よ。我らを呼びし理由を述べよ』
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野村部長が、勢いよく前へ出た。
「腰痛軽減を――」
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「用途が現実すぎる!」
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その時だった。
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空間が、突然ノイズ化する。
バチバチバチッ!!
魔法陣崩壊。
照明明滅。
サーバー停止。
【未確認飛行存在接近】
【位相不明】
【認識汚染率:急上昇】
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「……え?」
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天井。
裂ける。
そこから現れた。
巨大円盤。
銀色。
発光。
無音。
完全に。
UFOだった。
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「いや方向性変わった!」
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ノベェンタは、静かに目を細める。
「なるほど。“召喚”って、人類史的には“天から何か来る文化”とも接続してるので。神降臨、天使、龍神、空飛ぶ円盤。つまりUFO文化、“現代文明版の天使召喚”なんですよ。“自分達より上位存在が空から来る”構図、人類かなり古くから繰り返してる。あと都市伝説界隈、“古代神話と宇宙人混ぜ始める”時期周期的に来るので」
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「分析してる場合!?」
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円盤中央。
光。
吸引開始。
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そして。
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キノピー。
「にゃっ!?」
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浮く。
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「えっ」
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ノベェンタの目が、少しだけ変わった。
「キノピーっ!!」
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キノピーが、空中でもがく。
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「にゃーーー!!」
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佐伯がハルバードを構える。
「待って待って待って!! 普通に攫われてますって!!」
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アインが、魔法陣を展開。
「空間固定間に合いません!」
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リゼが叫ぶ。
「なんで召喚回で宇宙人エンドなのよ!!」
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ノベェンタは、静かにUFOを見上げた。
黒い瞳。
微かな殺気。
「……なるほど」
静かな声。
「“上位存在側”から見ても、キノピーは希少個体なんですね」
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「そこ冷静なんだ!?」
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UFOが、夜空へ浮かぶ。
光。
ノイズ。
重低音。
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そして。
キノピーごと、消えた。
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静寂。
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【To Be Continued…】
地下第三層。
残されたのは
巨大魔法陣。
焦げた床。
散乱した蝋燭。
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そして。
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少しだけ、本気で焦っているノベェンタだった。
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