表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『境界断ちのノベェンタ』 〜観測整合維持局 第七補正執行室 野部遠汰の場合〜  作者: nobunobuwo


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
77/183

第七十七話 「召喚術という文化は、“人類が孤独すぎて昔から見えない何かと契約したがる習性”なので、魔法陣も電話帳も本質的には“誰かを呼ぶ技術”です」

 

 午後十一時十三分。



 東央マテリアル地下第三層。


 対策部。


 深夜。


 静かな白色灯。


 換気ファン音。


 エナジードリンク。


 現実安定率モニター。


 そして。


 床いっぱいに描かれた、巨大魔法陣。


 終わっていた。



「……なんで会社で召喚儀式始まってるんですか」


 佐伯が言う。



 床。


 黒曜石粉末。


 塩。


 蝋燭。


 魔導インク。


 意味深な古代文字。


 完全に。


 “深夜二時のオカルト掲示板”みたいな光景だった。



 ノベェンタは、静かに頷く。


「最近、“召喚型認識汚染”増えてるので。人類、“自分だけではどうにもならない状況”へ置かれると、“外部存在”を呼びたくなる習性あるんですよ。神、精霊、悪魔、守護霊、AI、推し配信者。この辺全部、“自分を理解してくれる何か”への祈りなので。あと召喚文化、“孤独な時代”ほど流行る傾向あります。“誰か来てくれ”って、人類かなり昔から言ってる」



 リゼが魔法陣を見る。


「人類、昔からずっと寂しいのね」



「かなり寂しいです。だから“名前を呼ぶ”文化が異常発達した。真名、契約、詠唱、呪文。この辺、“存在を定義して接続する技術”なんですよ。あと召喚術、“長い詠唱ほど本気っぽい”問題あります。“古代語+意味深単語+世界終焉系”入ると急に強そうになるので。人類、ラテン語っぽい響きへかなり弱い」



「雰囲気で八割押してる!」



 その時。



 野村部長が、黒ローブ姿で現れた。


 杖。


 眼帯。


 首飾り。


 かなりノリノリ。


「野部くん!! “召喚士感”どうかなぁ!?」



 しかも。


 肩へ。


 小さいドラゴン。



「どこで拾ったんですかそれ」



「ガチャガチャ」



「現代の召喚術!」



 アインは、静かに魔導書を開いていた。


 銀髪。


 長外套。


 浮遊魔法陣。


 完全に。


 “古代帝国の禁書管理者”みたいになっている。



「……アイン先輩、似合いすぎでは?」



「召喚術は術式構造が美しいので」



 完全にハマっていた。



「ちなみに召喚文化、“使役したい欲”だけじゃなく、“何かと共に戦いたい欲”もかなり強いんですよ。スタンド、守護獣、契約精霊、召喚獣。この辺、“一人ではない感覚”が重要なので。あとオタク文化、“主人公単騎最強”と同じくらい“相棒存在”好きです。“共に歩んできた存在”へ人類かなり弱い。最終決戦で召喚獣が庇う展開、人類だいたい泣くので」



 リゼが腕を組む。


「急に情緒へ攻撃してくるのやめなさい」



 その瞬間。


 空気が揺れる。


【契約】


【召喚】


【眷属】


【古代存在】


【英霊】


【降臨】


 黒い文字列。


 空間へ浮かぶ。


 モニター点滅。


【召喚型侵食開始】


【異界接続率:上昇】


【詠唱密度:危険域】



「詠唱密度でまずい数値出てる!」



 床の魔法陣が光る。


 紫色。


 金色。


 赤黒い雷。


 風。



 そして。


 巨大な光柱。



「来ます」


 アインが言う。


「術式、かなり古い。“集合無意識型召喚陣”です」



 ノベェンタは、静かに空を見る。


「召喚術、“居るはずのない存在を信じ切る”事で成立する側面ありますからね。つまり人類、“想像力”だけで時々世界を歪める。宗教、神話、都市伝説、ネットミーム。全部、“大勢が信じた情報”として実在性持ち始めるので。あと現代、“AIが返事する時代”になった結果、“無機物が応答する違和感”へ急速適応してる。人類、“返事が返る”だけでかなり親近感抱くので」



「ちょっと怖い方向へ行くな!」



 光柱の中から、現れた。


 白銀の騎士。


 巨大狼。


 炎の精霊。


 翼ある蛇。



 さらに。


 和装剣士。


 神官。


 古代魔導士。


 英霊召喚だった。



「うわぁ……豪華」


 佐伯が引く。



 騎士が剣を掲げる。


『契約者よ。我らを呼びし理由を述べよ』



 野村部長が、勢いよく前へ出た。


「腰痛軽減を――」



「用途が現実すぎる!」



 その時だった。



 空間が、突然ノイズ化する。


 バチバチバチッ!!


 魔法陣崩壊。


 照明明滅。


 サーバー停止。


【未確認飛行存在接近】


【位相不明】


【認識汚染率:急上昇】



「……え?」



 天井。


 裂ける。


 そこから現れた。


 巨大円盤。


 銀色。


 発光。


 無音。


 完全に。


 UFOだった。



「いや方向性変わった!」



 ノベェンタは、静かに目を細める。


「なるほど。“召喚”って、人類史的には“天から何か来る文化”とも接続してるので。神降臨、天使、龍神、空飛ぶ円盤。つまりUFO文化、“現代文明版の天使召喚”なんですよ。“自分達より上位存在が空から来る”構図、人類かなり古くから繰り返してる。あと都市伝説界隈、“古代神話と宇宙人混ぜ始める”時期周期的に来るので」



「分析してる場合!?」



 円盤中央。


 光。


 吸引開始。



 そして。



 キノピー。


「にゃっ!?」



 浮く。



「えっ」



 ノベェンタの目が、少しだけ変わった。


「キノピーっ!!」



 キノピーが、空中でもがく。



「にゃーーー!!」



 佐伯がハルバードを構える。


「待って待って待って!! 普通に攫われてますって!!」



 アインが、魔法陣を展開。


「空間固定間に合いません!」



 リゼが叫ぶ。


「なんで召喚回で宇宙人エンドなのよ!!」



 ノベェンタは、静かにUFOを見上げた。


 黒い瞳。


 微かな殺気。


「……なるほど」


 静かな声。


「“上位存在側”から見ても、キノピーは希少個体なんですね」



「そこ冷静なんだ!?」



 UFOが、夜空へ浮かぶ。


 光。


 ノイズ。


 重低音。



 そして。


 キノピーごと、消えた。



 静寂。



【To Be Continued…】


 地下第三層。


 残されたのは


 巨大魔法陣。


 焦げた床。


 散乱した蝋燭。



 そして。



 少しだけ、本気で焦っているノベェンタだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ