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『境界断ちのノベェンタ』 〜「観測者が意思決定した瞬間、世界線は収束します」意識高い系エリート社畜、たまに世界を救う  作者: nobunobuwo


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第六十六話 「長距離バスというものは、“人類がコストと睡眠を同時圧縮しようとして生み出した移動文明”です」


 大阪。


 南港。


 《インテックス大阪》。


 午後九時十二分。



 企業展示会終了後。



 東央マテリアル一行は、

 完全に疲弊していた。



 展示会。



 立ち仕事。


 営業スマイル。


 名刺交換。


 謎の技術説明。


 無料ノベルティ配布。



 社会性の総力戦だった。



「……もう喋りたくない」


 リゼが死んだ目で言う。



 佐伯も頷く。



「“御社の強みは?”を四十回くらい聞きました……」



 ノベェンタは、

 紙パックの関西だしうどんを飲みながら静かに頷いた。



「展示会、“企業版文化祭”に見えて実際かなりHP削るので。営業、人類の対話能力と持久力を同時要求される高難易度職なんですよ。あと関西展示会、“とりあえず一回ボケる”文化混ざるので、東京より会話カロリー高い。ちなみに人類、“名刺交換した瞬間だけ社会性最大化する生物”なので、終了後だいたい魂抜けます」


「最後ちょっと分かるの嫌ね……」



 その時だった。



 野村部長が、

 スマホを掲げる。



「帰りはこれだぁ!!」



 画面。



【大阪→高知 夜行高速バス】



 沈黙。



「……飛行機は?」


 リゼ。



「高かったぁ!!」



「新幹線は?」



「乗った!!」



 満足済みだった。



「ちなみに長距離バス、“移動費を削りたい人類”と“時間を睡眠へ変換したい人類”が融合して発展した文明なんですよね」


 ノベェンタは静かに言う。


「日本、高速道路網かなり発達してるので、“夜寝てたら別地方到着”文化成立してる。あと夜行バス、“旅行”と“修行”の境界かなり曖昧です。“三列シート神”“隣ガチャ”“SA休憩で謎にテンション上がる”など独自文化圏形成されてる。ちなみに人類、“移動コスト”下がると急に行動範囲広がるので、LCCと夜行バスは現代若者文化へかなり影響与えてます」


「社会学寄りなのよ」



 深夜。



 高速道路。



 車内は暗い。



 エンジン振動。


 静かな寝息。


 スマホ光。



 完全に、

 “人生の途中感”があった。



 キノピーは、

 佐伯の膝で丸くなっている。



「にゃ……」



 その時。



 バスが、

 大きく揺れた。



 ゴォォォォ――……



「……え?」



 窓の外。



 海。



 巨大渦潮。



「ちょっと待って」


 リゼが起き上がる。



「ここ高速道路よね!?」



 淡路島手前。



 鳴門海峡。



 だが。



 渦が。



 デカすぎた。



【深層地殻世界接続】

【地底文明位相同期】

【空洞地球型認識汚染】



「また変なの来たわぁ!!」



 バスごと。



 吸い込まれる。



 光。


 浮遊感。


 重力反転。



 そして。



 着地。



 轟音。



 静寂。



 ノベェンタ達が目を開ける。



 そこは。



 地底世界だった。



 巨大空洞。


 青白い発光鉱石。


 地下湖。


 天井を飛ぶ謎生物。


 古代文明っぽい塔。



 そして。



 地底人。



 白髪。


 灰色肌。


 金属装飾。


 やたら姿勢が良い。



「……本当に居るんだ」


 佐伯が呟く。



「地底世界伝承、人類かなり昔から好きなので」


 ノベェンタは普通に頷いた。


「アガルタ、シャンバラ、 hollow earth。つまり“地下に別文明あるかも”幻想ですね。人類、“地図の空白”へ浪漫感じやすい。海底、宇宙、地下。“まだ知らない世界あるかも”って希望、文明初期からほぼ変わってない。あと地底文明、“地上社会へ疲れた人類の理想郷投影”されやすいので、“争いがない”“知的”“静か”属性盛られがちなんですよ」


「ロマンがあって私は好き……」



 その時。



 ズドォン――!!



 地底空間が揺れる。



 巨大岩石生物。



 マグマみたいな目。


 山みたいな身体。



【地圧獣グラビガンド】



「でっか!!」



 重力が増す。



 全員、

 膝をつく。



「ぐっ……!」



 リゼの障壁。


 軋む。



 佐伯のハルバード。


 持ち上がらない。



 その時だった。



 野村部長。



「……あれ?」



 立っていた。



「腰、軽い……」



 沈黙。



 ノベェンタが目を細める。



「なるほど。地底高気圧環境、“浮力補正”発生してますね」


「急にどういうこと!?」



「深海や高気圧環境、人類の身体へ微妙な影響出る場合あるので。特に気圧差、“関節痛”や“古傷”へかなり関与してる。つまり部長、慢性腰痛が地圧均衡で相殺された可能性あります。あと人類、“痛み消える”と急に強気になる生物なので」



 野村部長、

 立ち上がる。



 背筋。



 まっすぐ。



「……軽い」



 さらに。



 ミスリル腹巻。



 発光。



【腰痛耐性】

【重力適応】

【中年補正解除】



「なんか出たァ!?」



 その瞬間。



 野村部長の空気が変わる。



 目が開く。



 完全に。



 覚醒だった。



「野部くん!!」


「はい」


「今なら……走れる気がする!!」


「それ危険思想の入口です」



 だが。



 野村部長、

 止まらない。



 巨大岩石生物へ走る。



「うぉぉぉぉ!!」



 リゼが叫ぶ。



「部長ォォォ!?」



 その瞬間。



 野村部長の腹巻。



 黄金発光。



 そして。



「《中年超越腰痛断絶波ァァァ!!》」



 衝撃波。



 腹巻から。



 出た。



「腹巻からビーム出たァァ!!」



 黄金の波動。



 岩石生物へ直撃。



 轟音。



 そして。



【地圧正常化】



 静寂。



 巨大岩石生物。



 その場で。



 正座した。



「えっ」



『……腰、楽』



「腰痛持ちだったの!?」



 地底空間。



 まさかの、

 腰痛改善空間だった。



 野村部長は、

 涙ぐんでいた。



「ずっと痛かったんだよぉ……!!」



 リゼが頭を抱える。



「なんなの今回!?」



 ノベェンタは静かに頷く。



「人類、“長年の不調消える”と人生観かなり変わるので。肩こり、腰痛、睡眠不足、慢性疲労。“死ぬほどではない不快”って、実は精神HPを常時削り続けてる。逆にそれ消えると、“世界ってこんな軽かったの?”現象起きる。あと中年、“健康”へ金払う段階入ると急に価値観変わります。“痛くない”が最強バフになり始めるので」


「まぁ健康な身体が一番よね……」



 その時。



 野村部長が、

 少し照れながら言った。



「……必殺技、出ちゃったなぁ」



 佐伯、

 大興奮。



「部長ォォ!! ついに!!」



 アインも、

 静かに拍手していた。



 かなり羨ましそうに。

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