第六十二話 「同窓会というイベントは、“過去の自分”と“現在の社会的ステータス”を同時比較させる危険儀式なので、人類は笑顔で乾杯しながら内心かなりHPを消耗しています」
東京。
新宿。
午後七時二分。
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高層ビル。
ネオン。
人波。
タクシー。
電子広告。
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街そのものが、
ずっと喋っているみたいだった。
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「……人、多すぎません?」
佐伯が小さく呟く。
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駅前スクランブル。
スーツ姿の人類が、
無限湧きしている。
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ノベェンタは、
紙コップコーヒーを持ちながら頷いた。
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「東京、“人口密度による情報暴力”ありますからね。看板、音、人間、広告、流行、比較対象。この街、人類へ“もっと頑張れ”を常時送信してくる。あと都市部、“成功してそうな他人”が視界へ入り続けるので、脳が勝手にランキング戦始めるんですよ。SNS時代以降、“他人の人生ダイジェスト”観測し続ける文化になったので、人類かなり自己肯定感バグりやすい。MMORPGでも、街中央に全身課金スキン+限定マウント乗った廃人立ってるだけで、自キャラ急に初心者装備へ見えてくる現象ありますし」
「…マウンティングマウンテンで孤高になる感じかしら?」
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今日は、
東央マテリアル東京研究区画への出張だった。
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認識汚染調査。
会議。
外側反応確認。
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そして夜。
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佐伯だけ、
別行動。
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大学時代の同窓会。
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「……帰りたい」
佐伯が真顔で言った。
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「まだ始まってませんよ」
「同窓会って、“人生中間発表会”みたいで怖いんですよぉ……」
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リゼが少し笑う。
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「分かるわ、まぁでも楽しんで来なさいよ」
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「ちなみに同窓会、人類かなり“分岐確認イベント”として機能します。“同じ教室で単位落としてた個体”が、数年後には商社、外資、地方公務員、結婚、起業、転職三回、心療内科通院へ分岐してるので。つまり同窓会、“選ばなかった世界線”を大量観測する空間なんですよ。あと学生時代って、“まだ全員可能性の霧の中”だったので、社会出た後の格差が急に可視化される」
「また量子論みたいな人生分析始まったわね」
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そして。
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新宿の裏通り。
オシャレなバル。
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暖色照明。
ワイン棚。
クラフトビール。
やたら小さい前菜。
木製カウンター。
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“東京の店”だった。
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「皿、小さ……」
「東京価格ですね」
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佐伯が扉を開ける。
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「おー!! 佐伯ぃ!!」
「久しぶりー!」
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大学時代の友人達。
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営業。
IT。
メーカー。
広告代理店。
コンサル。
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全員、
“社会人四年目くらいの疲労”を纏っていた。
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その中。
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一人だけ。
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明らかに“都会勝者側の空気”を出している男がいた。
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高級時計。
綺麗なジャケット。
自然な港区感。
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金田中 創一。
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超大手総合商社勤務。
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「佐伯じゃん」
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笑顔。
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だが。
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うっすら。
“自分の方が上側”の空気。
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「今なにしてんの?」
「えっと……素材関係です」
「へぇー」
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“あっ察し”の顔。
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「東京来ないの?」
「いやぁ、今は高知ですね」
「高知!?」
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少し笑う。
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「仕事あるんだ?」
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空気が、
少しだけ止まる。
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悪意というより。
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“無自覚マウント”。
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現代社会でかなりよく見るやつだった。
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佐伯は、
曖昧に笑う。
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「まあ……ありますよ」
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金田中はビールを飲みながら続ける。
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「でも地方って暇じゃね? 俺もう東京以外無理だわ。店も人もイベントも多いし」
「まぁ便利ではありますよね」
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「年収もやっぱ東京強いしなー。最近マンション買ったんだよね」
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チラッ。
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時計見せる角度が、
妙に上手い。
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「商社マジきついけどさ。でも三十代前半で一千万見えてくるし」
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同級生達が、
「すげー」と笑う。
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だが。
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少しだけ。
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疲れていた。
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全員。
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その時だった。
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空気が、
微かに軋む。
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【年収】
【勝ち組】
【比較】
【同期】
【結婚】
【焦燥】
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黒いノイズ。
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天井付近へ、
じわじわ滲み始める。
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佐伯だけが、
それに気付く。
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「……うわ」
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認識汚染。
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典型的“社会的比較型”。
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人類が互いを値踏みし始めた時、
発生しやすいタイプだった。
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その瞬間。
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カラン。
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店の扉が開く。
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「四名です」
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聞き覚えのある声。
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佐伯、
ゆっくり振り向く。
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そこに居た。
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ノベェンタ。
リゼ。
アイン。
野村部長。
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完全に偶然だった。
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「えっ」
「あれ?野部さん!?」
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リゼも止まる。
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「あっ」
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ノベェンタは、
普通に手を上げた。
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「まぁ魔法使いには偶然は存在しないんですよ」
「い、いつから魔法使いなんですかーっ?」
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野村部長は、
既にメニューを見ていた。
“燻製銀鱈西京焼き”
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「この店うまそうだなぁ!!」
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金田中、
若干困惑。
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「……会社の人?」
「まあそんな感じです」
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ノベェンタは、
静かに頷いた。
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「ちなみに人類、“都会=勝利”と認識しやすいですが、実際には“何へストレス感じるか”で適性かなり変わるので。刺激密度高い環境でHP回復する個体もいれば、人口密度だけでMP削られるタイプも居る。あと現代、“自由な選択肢が多い人生”ほど幸福と思われがちですが、心理学では“選択肢過多による疲労”普通に報告されてます。スーパーでジャム三十種類あると逆に決められなくなる現象ですね。人類、“選べる”だけで幸せになるほど脳が高性能じゃない」
「ジャムで人生語らないでください」
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金田中が少し笑う。
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「でも結局、金あった方が人生楽じゃない?」
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「それはそうです」
ノベェンタは即答した。
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「資本主義社会、“金で回避できる苦痛”かなり多いので。通勤、医療、住環境、時間自由度。“金は幸福になれない”じゃなく、“一定以下だと普通に不幸”が実態です。ただ面白いの、人類、“支出減らす”方向でも自由獲得できるんですよ。地方移住とか、小規模生活とか、“欲望総量そのものを調整する”方向ですね。MMORPGでも、“最強装備課金勢”だけじゃなく、“釣りだけして幸せそうな人”普通に存在しますし」
「またネトゲで人生説明始まった……」
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黒いノイズが、
ゆっくり金田中へ絡みつく。
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【もっと】
【上へ】
【負けたくない】
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だが。
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その瞬間。
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野村部長が、
真顔で言った。
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「でも胃は壊れるぞぉ」
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静寂。
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「……え?」
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「部長、商社時代、胃潰瘍三回やったからなぁ!!」
「言わなくていいです」
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野村部長は、
クラフトビールを飲みながら続ける。
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「年収増えても、“深夜二時にSlack鳴る人生”は普通につらいぞぉ!!」
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金田中。
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一瞬だけ。
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目が死ぬ。
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「……あー」
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図星だった。
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「最近、海外案件で夜中ずっと電話っすね……」
「地獄ですね」
「朝起きた瞬間未読二百件とかあるし」
「かなり地獄ですね」
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少し笑いが起きる。
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空気が、
少し柔らかくなる。
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その時。
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佐伯が、
ぽつりと笑った。
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「……でも最近、“会社行きたくない”が減ったんですよね」
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静かだった。
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「昔、“ちゃんとした大人にならなきゃ”って思ってたんです。でも今、変な世界行って、変な人達と働いて、変な武器持って」
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アインが静かに頷く。
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今日も何故か、
薄い魔導コート装備だった。
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「人生バグったと思ってたんですけど」
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佐伯は、
少しだけ笑う。
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「案外、“自分が壊れにくい場所”って、世間のランキングと別なんだなって」
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黒いノイズが、
少し揺らぐ。
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ノベェンタは、
静かにコーヒーを飲む。
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「人類、“他人から羨ましい人生”と“自分へ適合してる人生”結構別なので。都会エリート向き個体も居れば、地方で魚焼いてる方が精神安定するタイプも居る。つまり人生、“最適解探し”より“継続可能性テスト”なんですよ。MMORPGでも、“環境最強職”なのに楽しめず引退する人いますし。“好きだから続く”って、かなり強い性能なんです」
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静寂。
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金田中は、
少しだけ笑った。
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「……なんか、お前ら見てると肩の力抜けるわ」
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その瞬間。
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キノピーが、
テーブルへ飛び乗る。
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「にゃ」
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そして。
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金田中の膝へ座った。
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「疲れてる人類の膝、あったかいにゃ」
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完全に、
終電後メンタルだった。
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東京の夜景が、
窓の向こうで光っていた。
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眩しくて。
騒がしくて。
少し疲れる街だった。
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でも。
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その中で。
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少し笑えるだけで、
人類は案外まだ生き延びられるのかもしれなかった。




