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『境界断ちのノベェンタ』 〜観測整合維持局 第七補正執行室 野部遠汰の場合〜  作者: nobunobuwo


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第五十三話 「学園という閉鎖環境は、“若年人類へ未成熟な感情エネルギーを過剰充填した状態で長時間接触させる巨大実験場”なので、恋愛・友情・反抗・青春・文化祭準備が無限増殖しやすいんですよね」


 異世界エルディア


 王都中央冒険者ギルド。


 午前九時十四分。



 依頼掲示板前。


 空気が妙に重かった。



「また学園案件か……」


「しかも転移者集団らしいぞ」


「終わったな」



 冒険者達が、

 完全に“巻き込まれたくない顔”をしている。



 リゼが眉をひそめた。


「……学園案件って、なんでこんな扱いなのよ」


「若年集団環境って、人類史的にかなりイベント発生率高いので。友情、恋愛、反抗、思想形成、暴走、革命、黒歴史。この辺が短期間へ圧縮される。あと創作界隈、“学園”って便利なんですよ。制服だけでキャラ識別しやすいし、人間関係も固定しやすい。ただし居心地良すぎて本筋迷子になる危険がある。文化祭編が二年続く作品とか、人類わりと普通に受け入れてきたので」


「エタりやすいのよ…しかたないわ…」



 その時。



 ギルド奥。


 一人の少女が立ち上がった。



 銀髪。


 蒼い瞳。


 白銀の制服。


 そして。


 手には。



 ――扇子。



 白地に黒い波紋。


 境界断ち印入り。



 ノベェンタが少し目を細める。



「……まだ使ってたんですね」



 少女――エリシア・フォン・ルクレツィアは、

 ぱっと顔を輝かせた。



「ノベェンタ様!」



 かなり嬉しそうだった。



「お久しぶりですわ!」


「前回の王都熱暴走案件以来ですね」


「挨拶が物騒なのよ」



 エリシアは大切そうに扇子を広げる。



「いただいたこの扇子、ずっと愛用しておりますの!」



 リゼの表情が、

 ぴくりと動く。



 警戒。



 かなり警戒。



 以前。


 この令嬢がノベェンタへ好感度急上昇しかけた時、

 リゼは全力で軌道修正した記憶がある。



「……へぇ」



 声が若干低い。



 ノベェンタは気付かない。



「東方系文化圏、“扇ぐ”行為へ精神安定効果ありますからね。あと人類、“手で使う道具”へ妙に感情移入しやすい。万年筆とか、長年使った財布とか、昔のゲーム機とか。“物”というより“時間の保存媒体”になっていくので」


「アンタ、そういう無自覚なとこあるのよね……」


「?」



 その時。



「……暑いですねぇ」



 佐伯だった。



 赤い軽装。


 ハルバード。


 境界断ち印。



 そして。


 パサッ。



 扇子展開。



 ――同じ柄。



 空気停止。



 エリシア、

 固まる。



「……」


「……」



 リゼが、

 ちょっと口元を押さえた。



「あっ」



 佐伯、

 嫌な予感。



「え、なに……?」



 エリシアは、

 じーーーーっと佐伯を見る。



 扇子。


 ノベェンタ。


 扇子。


 佐伯。


 扇子。



「……お揃い、ですの?」



 温度が少し下がった。



「いやこれ、以前お土産で頂いたやつで……」


「お土産」



 エリシア、

 静かに復唱。



「ノベェンタ様」


「はい」


「わたくし、“特別仕様”と伺っておりましたが?」


「一応、柄ごとに微妙に違いますよ」


「本当ですの!?」


「オタク文化、“微差”へ異常情熱注ぎますからね。色違い、初回版、会場限定、シリアル番号。この辺、“違いを見つけた時だけ脳汁出る”文化圏なので。あと人類、“自分だけが知っている差異”へ所有欲感じやすい」


「だいぶ危ない文化分析ね……」



 エリシアは少し安心した。



 だが。


 佐伯を見る目は、

 まだ若干ライバル認定寄りだった。



 数時間後。



 王立ルクレツィア学園。



 ――暑かった。



 異常に。



 石造校舎。


 中庭。


 噴水。


 貴族生徒。



 なのに。



 ヤシの木。


 レゲエ。


 ハンモック。


 BBQ。



「SURF’S UPPPPP!!」


「異世界サイコーー!!」


「授業とか海入ってから考えようぜーー!!」



 サーフボード持った高校生達が、

 校舎屋上から空へ飛び込んでいた。



「空を海扱いしてる!!」



 ノベェンタは静かに頷く。



「オーストラリア・サーファーズパラダイス由来集団転移ですね」


「なんで分かるの!?」



「人類、“元いた環境文化”を異世界でも持ち込むので。特に海沿い若年層、“ノリと太陽光でだいたい突破できる”と思ってる節ある。あとサーフ文化、“自然へ挑む”というより“自然と遊ぶ”側面強いので、異世界適応速度が妙に高いんですよ」


「偏見なのか分析なのか分かんなくなってきた」



 さらに。



 空間歪曲。


 気温上昇。


 校庭上空へ、

 巨大な波が形成され始める。



「なるほど。“永遠の夏休み幻想”ですね」


「嫌なワード出た!」



「人類、“学校は嫌”って言いながら、“青春そのもの”へ未練持ちやすいので。卒業後、“あの頃は良かった”現象かなり発生する。あと学園文化、“まだ人生失敗扱いされにくい最後の時期”として神話化されがちなんですよ」


「今日ちょっと刺さる話多いわね……」



 その瞬間。



 空の波が暴走。



 校舎直撃コース。



「障壁展開!!」



 リゼの杖が光る。



 半透明の巨大障壁。


 衝突。


 轟音。



 だが。


 押し切れない。



「っ……!」



 その時。



 佐伯が前へ出た。



 赤いビキニアーマー。


 翻る髪。


 ハルバード。


 境界断ち印。



 空気が変わる。



 会社員じゃない。



 完全に戦場人格。



「オラァァ〜《終業断裂エンドオブシフト》――!!」



 一閃。



 巨大な波。



 真っ二つ。



 青空ごと裂けた。



 高校生達。



「WOOOOOOOO!!」


「SAMURAI LADY!!」


「COOOOOOL!!」


「G’day, mate!!」



 なぜか盛り上がる。



 そして。



 エリシア。



 完全に固まっていた。



 ジェラシー消失。



 代わりに。



 尊敬。


 憧れ。


 情緒崩壊。



「……お姉様」


「えっ」



「なんという高潔なる武技……!」


「いや普通に業務で……!」


「強く、美しく、気高い……!」


「やめてください恥ずかしいですって!!」



 リゼ、

 笑いを堪え切れていない。



「良かったじゃない。“恋敵認定”から“お姉様崇拝”へ進化したわよ」


「進化先おかしいんですよ!!」



 ノベェンタは空を見上げる。



「でも人類、“誰かが本気で頑張ってる姿”に結構弱いんですよね」


「急に真面目」



「いや実際。スポーツでもライブでも受験でも創作でも、“全力の他人”見ると、自分も少し生きてていい気になる瞬間あるので。あと青春期、“憧れ”が人格形成へ与える影響かなり大きい。“こうなりたい”って感情、人類の進路だいたい決めてる」



 風が吹く。



 笑い声。


 青空。


 騒がしい夏。



 エリシアは、

 完全に佐伯を見つめていた。



「お姉様」


「はい……」


「わたくしも、いつか空を断ち切れる女性になりますわ!」



 佐伯は困ったように笑った。



「……まずは授業出るところから頑張りましょう?」



 ノベェンタが静かに頷く。



「重要ですね。学園もの、“最終的に単位と進路へ収束する”ので。どれだけ世界救っても留年は普通に精神ダメージありますし、青春って案外、“未来へ進む猶予期間”だから美しいんですよ」


「最後ちょっと良いこと言うじゃない」



 遠くでまた。



「SURF’S UPPPPP!!」



 空へ波が発生した。



 リゼが頭を抱える。



「……やっぱりこの学園、長居すると危険だわ」

ちなみにWeb小説文化って、表面上は「数字の世界」に見えるんですが、実際かなり“深夜の焚き火共同体”なんですよね。


 作者、

 基本的に暗い部屋で一人、

「この展開、面白いか……?」

「会話テンポ死んでないか……?」

「設定ブレてないか……?」

 とか延々ぐるぐる考えてるので。


 脳内会議、

 だいたい毎日開催されてます。


 しかも連載形式。


 これ、

 冷静に考えるとかなり異常です。


 一話投稿するたび、

 自分の情緒と発想と睡眠時間を少しずつ切り分けてネットへ放流してるので。


 創作者、

 時々“感情の漁業”みたいな状態になります。


 あとWeb小説作者、「ここ好き」と言われた瞬間めちゃくちゃ元気になります。


 特に、

「そこ!?」みたいな細かい描写を拾われると危険です。


 急に、

「うわっ……ちゃんと届いてた……」

 になります。


 MMORPGで言うと、

 誰にも気付かれないと思って積んでた趣味ビルドを、

 上級者に「それ強いですよね」って言われる瞬間に近い。


 脳が静かに爆発する。


 逆に、

 自信満々で置いた伏線、

 誰にも触れられない時あります。


 あれ、

 作者は普通に覚えてます。


 深夜、

 天井見ながら、

「……あそこ、削った方が良かったかな」

 とか始まる。


 創作者、

 だいたい“締切”と“自意識”と“睡眠不足”の三竦みで生きてます。


 なので。


 ブックマーク。


 評価。


 感想。


 レビュー。


 あれ全部、

 単なる数字じゃなくて、

「読んでるよ」

「続きを待ってるよ」

 っていう現代型の生存信号なんですよね。


 特にブクマ、

 かなり嬉しいです。


「未来の自分、この作品また開くかも」

 って保存されるので。


 創作者側から見ると、

 “あなたの物語、ブラウザ閉じた後も世界へ残りました”

 に近い。


 あと評価増えると、

 作者わりと静かにニヤニヤしてます。


 表情は真顔でも、

 内部では祭りです。


 人類、

 意外と褒められると伸びる。


 なので、

 もしこの物語が少しでも、

「現実しんどいな」の緩衝材になれたなら。


 ブックマークや評価など頂けると、

 作者のHP・MP・継続率・次話生成速度がかなり上昇します。


 たまに本当に、

「今日は無理か……」

 から、

 ブクマ一件で復活するので。


 創作者という生物、

 想像以上に“読んでくれてる気配”で動いています。

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