第四十九話 「人類は“強くなりたい”より“もうちょっと楽に生きたい”を動機にした時の方が、妙に危険領域へ踏み込みがちなんですよね」
月曜日。
午前八時十一分。
東央マテリアル営業企画部。
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空気が死んでいた。
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理由は単純。
月曜日だからである。
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コピー機の音。
鳴り止まない通知。
エナジードリンク。
遠くで誰かが「あっExcel消えた」と呟いている。
極めて現代文明。
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そして。
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「……胃が痛い」
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野村部長が死にそうな顔で机へ突っ伏していた。
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「部長、それ今日四回目ですよ」
佐伯が即座に胃薬を差し出す。
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動きが妙に洗練されている。
完全に“修正係補佐”側の処理速度だった。
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「ありがとうございます……」
「白湯もどうぞ」
「助かる……」
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ノベェンタは静かにコーヒーを飲みながら言った。
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「ちなみに人類、“精神的ストレス”を胃へ反映しやすい生物です。胃潰瘍って昔は胃酸過多だけで説明されてましたが、現在ではピロリ菌や慢性ストレスとの関連かなり有名ですね。あと会社員、“日曜夜から胃が重い”現象ありますが、あれ脳が翌日の労働を事前観測して自律神経乱してる可能性あります。つまり人類の身体、“仕事イヤです”をかなり正直に伝えてくる」
「朝イチから社会人の急所刺さないで?」
リゼが真顔で言う。
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その時だった。
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野村部長が、
ふと窓の外を見る。
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社宅の庭。
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そこには。
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例のダンジョン入口が、
今日も当然みたいに存在していた。
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【社宅裏初級ダンジョン】
【推奨Lv:5〜15】
【本日のラッキードロップ:胃腸薬草】
【超低確率レア:《たまに胃痛無効の腹巻き》】
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「……」
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野村部長の目が、
静かに据わる。
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「野部くん」
「はい」
「胃痛無効って書いてない?」
「書いてますね」
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数秒沈黙。
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「……欲しい」
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「目が狩人なのよ」
リゼが引いた。
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ノベェンタは静かに頷く。
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「まあ、人類って“HP減少”には耐えますが、“継続ダメージ”には弱いので。胃痛、肩こり、低気圧頭痛、不安感。この辺、“死なないけど常に削ってくるタイプ”なのでメンタル消耗かなり激しい。あとRPGでも毒沼ステージ嫌われがちですが、あれ“即死より地味継続ダメージの方がストレス高い”という人類心理へかなり忠実なんですよ。ちなみにハダカデバネズミ、酸素が少ない環境へ異常適応していて、一部条件下では痛覚耐性まで持つと言われています。進化、“とにかく生き延びる”へ全振りする時たまに怖い」
「最後の生物情報、可愛くない方向なのよ」
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野村部長は、
ゆっくり立ち上がった。
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「……行くか」
「本当に?」
「胃痛無効だぞ?」
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妙に説得力があった。
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キノピーが縁側から言う。
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「人類、“ちょっと楽になる”へ弱すぎるにゃ」
「否定できませんね」
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ノベェンタは頷く。
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「ちなみに人類史って、“少しでも楽したい”でかなり進歩してます。車輪、洗濯機、エアコン、食洗機、ショートカットキー。文明、“努力したい”ではなく“面倒減らしたい”が原動力な場合かなり多い。あと会社員、“胃薬常備”を戦士のポーション感覚で扱い始める時期あります」
「悲しすぎる文化なのよ」
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三十分後。
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野村部長は、
ジャージ姿でダンジョン前に立っていた。
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「いや待って本当に行くんですか」
佐伯が聞く。
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野村部長は真剣だった。
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「もう胃薬で誤魔化す人生は嫌なんだ……!」
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妙に悲壮感がある。
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キノピーが欠伸する。
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「人類、だいたい胃から壊れるにゃ」
「否定できない……」
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ノベェンタは静かに頷く。
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「ちなみに胃腸って、“第二の脳”って呼ばれることあります。腸内神経系、かなり独立性高いので。ストレスで腹壊すのも、“脳だけでなく腸側もメンタル食らってる”に近い。あと現代人、“常時戦闘モード”みたいな生活しがちなので、副交感神経が仕事できなくなってるケース割とあります。ネコが日向で寝てるの見ると安心するの、あれ人類側の“安全確認反応”でもある可能性あるんですよ」
「ネコ着地が多いわね…」
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野村部長。
覚悟を決める。
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「よし……!」
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ダンジョン突入。
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そして。
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三時間後。
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戻ってきた。
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ボロボロで。
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「死ぬかと思ったァァァ!!」
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ジャージ破れ。
泥まみれ。
髪ボサボサ。
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だが。
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【NAME:野村剛】
【LV:18】
【称号:胃痛を超えし者】
【耐性:プレッシャー耐性】
【獲得スキル:鋼鉄胃袋 Lv1】
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「増えてる!!」
リゼが叫ぶ。
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野村部長は涙目だった。
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「スライムが“会議”って名前だったんだよぉ!!」
「嫌すぎる敵名ですね」
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「倒しても倒しても“追加資料”って分裂するし!!」
「労働特化型ダンジョンだわ……」
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野村部長は震えながら、
ポケットから何かを取り出す。
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もこもこだった。
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「……えっ」
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【レアドロップ:《またに胃痛無効の腹巻き》】
【効果:胃部ストレス系状態異常を軽減】
【説明:締切と会議を超えし者へ贈られる安息】
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「出たんだぁぁぁあ!!」
野村部長が泣いた。
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「本当にあったんだ……!」
「説明文が妙に切実なのよ」
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野村部長は震えながら装備する。
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数秒後。
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「……あれ?」
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静寂。
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「胃が痛くない……」
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営業部全員。
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ざわつく。
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「マジで!?」
「欲しい!」
「それ現代人類の神器では!?」
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ノベェンタは静かに頷く。
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「なるほど。“常時ストレス環境へ耐性付与”系アイテムですね。人類、“回復薬”より“そもそもダメージ受けなくなる装備”へ異常執着しやすいので。睡眠改善グッズ、防音イヤホン、高性能マットレス、ノイズキャンセリング。“疲れない”って、現代文明だとかなり高級スキルなんですよ。ちなみにマヌルネコ、極寒地域適応で毛量が異常に多く、“丸すぎる生物”として有名ですが、あれ全部防寒性能です。自然界、“かわいい”と“生存特化”が両立する時ある」
「最後だけ癒やし入れてくるのずるいわね……」
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その時だった。
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営業部全員のPCが、
一斉に鳴る。
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ピコン。
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【全社通達】
【営業企画部について】
【部署再編のお知らせ】
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「……嫌な予感」
リゼが呟く。
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ノベェンタは静かに読む。
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【営業企画部は本日付で】
【特殊環境営業対応局】
【外側関連総合対策部】
【へ再編されます】
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沈黙。
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【勤務地変更】
【地下第三層】
【業務内容】
・ダンジョン関連調査
・認識汚染対策
・現実安定補助
・外側存在営業折衝
・境界監査
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野村部長は少し考え。
そして。
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「……業務が営業っぽく無いと思ってたから、まぁいいか」
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「受け入れ早いですね」
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【危険手当追加】
【ただし固定残業代込み】
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「最低」
リゼが即答した。
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佐伯が静かに言う。
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「待遇は上がってますね」
「その代わり人生終わりそうなんだけど」
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アインが現れる。
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「おめでとうございます」
「全然嬉しそうじゃないの何で」
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アインは淡々としていた。
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「地下第三層勤務は、休日概念が曖昧になります」
「うわぁ」
「外側案件、“土日祝を認識しない”ので」
「敵側コンプラ意識ゼロなのよ」
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ノベェンタは静かにため息を吐く。
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「ちなみにインフラ職・医療職・保守管理系って、“社会が休んでる時ほど働く”傾向あります。人類文明、“誰かの休日”を別の誰かの労働で成立させてるので。コンビニ、電気、水道、ネット回線。現代社会、“常に誰かが裏で起きてる”前提で動いてるんですよ。あとソシャゲ運営、深夜メンテ時に障害起きると人類かなり死んだ顔になります」
「最後だけ生々しいのよ」
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地下第三層。
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そこは。
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完全に別世界だった。
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黒い隔壁。
青白い照明。
無数のモニター。
空間歪曲警報。
“本日の現実安定率”表示。
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【REALITY:91.2%】
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「ゲームUIみたい……」
リゼが呟く。
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だが。
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社員達は普通に働いていた。
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「北海道ダンジョン第四層、位相ズレ発生!」
「大阪側認識汚染案件、アイドルオタク系です!」
「九州支部、UMA案件再発!」
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地獄みたいに忙しい。
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野村部長が震える。
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「なんだここォ!!」
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アインは静かに説明する。
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「現在、人類社会の“物語化”が加速しています」
「物語化?」
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「ダンジョン、レベル、ステータス、スキル。人類が“理解しやすい形式”へ世界側が寄り始めている」
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ノベェンタは頷く。
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「人類、“数値化とゲーム化”かなり好きなので。歩数計、SNSいいね、経験値システム、ランク、実績解除。現代文明、“人生をゲームUI化”する方向へずっと進んでるんですよ。だから外側側も、“その方が認識定着しやすい”と学習し始めてる可能性あります。ちなみにDu○lingo、人類へ“語学学習を連続ログインゲーム化”したことで成功しましたが、あのフクロウ圧結構怖いです」
「最後だけ現代人全員に刺さるやつやめて」
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その時。
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地下第三層全域へ、
アナウンスが流れる。
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【緊急案件】
【社宅裏ダンジョン内にて】
【“締切竜”再出現】
【至急対応願います】
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営業部全員。
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一斉に死んだ目になる。
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「……また締切」
「月曜だからですね」
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ノベェンタは静かに立ち上がった。
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「ちなみに人類、“仕事が終われば幸せになる”と思いがちですが、実際には“誰かと愚痴言いながら働いてる時”の方が案外メンタル安定してたりします。文化祭準備とか徹夜作業で妙にテンション上がるのもそれですね。つまり人類、“完全無労働”より“意味ある共同疲労”の方が耐えやすい場合ある」
「ちょっと救いあるの腹立つわね……」
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地下第三層。
外側関連総合対策部。
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そこはもう。
普通の会社ではなかった。
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だが。
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妙に楽しそうでもあった。
ちなみにWeb小説文化って、表面上は「数字の世界」に見えるんですが、実際かなり“深夜の焚き火共同体”なんですよね。
作者、
基本的に暗い部屋で一人、
「この展開、面白いか……?」
「会話テンポ死んでないか……?」
「設定ブレてないか……?」
とか延々ぐるぐる考えてるので。
脳内会議、
だいたい毎日開催されてます。
しかも連載形式。
これ、
冷静に考えるとかなり異常です。
一話投稿するたび、
自分の情緒と発想と睡眠時間を少しずつ切り分けてネットへ放流してるので。
創作者、
時々“感情の漁業”みたいな状態になります。
あとWeb小説作者、「ここ好き」と言われた瞬間めちゃくちゃ元気になります。
特に、
「そこ!?」みたいな細かい描写を拾われると危険です。
急に、
「うわっ……ちゃんと届いてた……」
になります。
MMORPGで言うと、
誰にも気付かれないと思って積んでた趣味ビルドを、
上級者に「それ強いですよね」って言われる瞬間に近い。
脳が静かに爆発する。
逆に、
自信満々で置いた伏線、
誰にも触れられない時あります。
あれ、
作者は普通に覚えてます。
深夜、
天井見ながら、
「……あそこ、削った方が良かったかな」
とか始まる。
創作者、
だいたい“締切”と“自意識”と“睡眠不足”の三竦みで生きてます。
なので。
ブックマーク。
評価。
感想。
レビュー。
あれ全部、
単なる数字じゃなくて、
「読んでるよ」
「続きを待ってるよ」
っていう現代型の生存信号なんですよね。
特にブクマ、
かなり嬉しいです。
「未来の自分、この作品また開くかも」
って保存されるので。
創作者側から見ると、
“あなたの物語、ブラウザ閉じた後も世界へ残りました”
に近い。
あと評価増えると、
作者わりと静かにニヤニヤしてます。
表情は真顔でも、
内部では祭りです。
人類、
意外と褒められると伸びる。
なので、
もしこの物語が少しでも、
「現実しんどいな」の緩衝材になれたなら。
ブックマークや評価など頂けると、
作者のHP・MP・継続率・次話生成速度がかなり上昇します。
たまに本当に、
「今日は無理か……」
から、
ブクマ一件で復活するので。
創作者という生物、
想像以上に“読んでくれてる気配”で動いています。




