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『境界断ちのノベェンタ』 〜「観測者が意思決定した瞬間、世界線は収束します」意識高い系エリート社畜、たまに世界を救う  作者: nobunobuwo


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第四十九話 「レベルアップという概念、人類が“努力したら分かりやすく強くなってほしい”願望を極限まで様式化したものなので、現実社会へ導入されるとだいたい人格まで変わり始めるんですよね」


 翌朝。


 午前七時四十分。


 東央マテリアル営業企画部。



 いつもの朝だった。



 コピー機。


 コーヒー。


 眠そうな社員。


 鳴り続けるTeams通知。


 そして。


 野村部長の胃薬。



 極めて通常営業。



 ……のはずだった。



「……」


 ノベェンタは、

 静かに視線を止めた。



 営業企画部入口。



 ヒール音。


 カツ。


 カツ。


 カツ。



 入ってきた女性社員を見て、

 部署全体が止まる。



「おはようございます」



 佐伯美咲だった。



 だが。


 何かが違う。



 髪。


 姿勢。


 歩き方。


 視線。


 空気。



 全部が、

 妙に“整いすぎている”。



【NAME:MISAKI SAEKI】

【LV:47】

【JOB:会社員】

【STATE:現実適応済】

【処理能力:A+】

【気配遮断:B】



「……」


 ノベェンタが止まる。



「……似てますね」


「何が?」


 リゼが聞く。



 その瞬間。



 佐伯が、

 資料を三人分同時配布しながら、

 会議予定を整理し、

 電話対応し、

 コーヒーを淹れていた。



 無駄がない。



 動きが、

 完全にアイン寄りだった。



「怖っ」


 リゼが真顔になる。



「何その“仕事できる人類”の動き」



 佐伯は微笑む。



「昨日ちょっとダンジョン行ってまして」


「“ちょっとコンビニ”みたいに言わないで」



 野村部長が固まる。



「いや待って佐伯さん、昨日Lv3じゃなかった!?」


「現在47です」


「どういうレベリングしたの!?」



 佐伯は少し考える。



「パンティ拾いに行ったら、なんか奥まで落ちていってしまって」


「待ちなさい」


 リゼが即座に止めた。



「話の入り方が最悪なのよ」



 佐伯は真顔だった。



「洗濯物取り込んでたら風で飛ばされまして」


「うん」


「社宅ダンジョンへ吸い込まれまして」


「うん」


「もったいないので回収しようと」


「行動原理が生活感強すぎるのよ」



 ノベェンタは小さく頷く。



「ちなみに人類、“大義名分”より“うっかり失くした日用品”の方が危険地帯へ突入しがちです。洞窟事故でも、“帽子落とした”“スマホ拾おうとした”から深部侵入して遭難するケース結構あるので。あとRPG、“世界救う主人公”より“財布落として冒険始まる人”の方が感情移入しやすい場合あります」


「最後ちょっと分かるわね……」



 佐伯は静かに語り始めた。



「最初は普通だったんです」


「普通って何」


「スライムさん達が道案内してくれて」


「もう友好的なのね」


「はい。“洗濯物探索クエスト”受注しました」



 ピコン。



【QUEST】

【消えたパンティを探せ】


【報酬】

・生活防衛EXP

・乾燥機耐性



「生活感あるクエストね……」



 だが。


 佐伯の表情が少し変わる。



「ただ、地下六階層辺りから空気がおかしくて」


「いきなり六階層まで行ったの!?」



「“外側”が居ました」



 空気が止まる。



 ノベェンタだけが静かだった。



「なるほど」


「普通に納得しないで」



 佐伯は続ける。



「なんか、“失敗した自分”を見せてくるタイプでした」



 営業ミス。


 怒られる。


 比較。


 SNS。


 老後不安。


 結婚圧。


 キャリア。


 自己否定。



「うわぁ現代人特効……」


 リゼが顔をしかめる。



 佐伯は静かに笑った。



「でも途中で、なんかどうでもよくなりまして」


「どうでも?」



「パンティ探して地下六階まで来てる時点で、かなり人生バグってるなって」



 沈黙。



 そして。



 ノベェンタが、

 静かに吹き出した。



「……はい。かなり重要な気付きですね」


「そこで笑うの!?」



 ノベェンタは小さく頷く。



「人類、“自分を客観視して笑える瞬間”に認識汚染から抜ける場合あるので。“何やってるんだ俺”って、実はかなり強力な現実固定なんですよ。あとパニック時、“ちょっと面白く感じる瞬間”あると脳が正常性取り戻しやすい。ブラックユーモアが災害現場や医療現場で発達しやすいのもそこです。ちなみにアライグマ、人類視点だと“かわいい”ですが、生態系側から見ると“器用すぎる破壊者”なので、現実って立場で評価かなり変わります」


「アライグマはかわいいしか知らないからよし…」



 佐伯は少し照れた。



「そしたら、“外側”に言われたんです」


『お前は無能だ』


『代替可能だ』


『遅れている』


『人生のレベルが低い』



 営業部全体が静かになる。



 誰も。


 少し心当たりがあった。



 だが。


 佐伯は笑った。



「だから言い返しました」


「何て?」



 佐伯は、

 妙にアインみたいな静かな顔で言う。



「“パンティ拾いに来た人間へ、それ言ってももう遅いですよ”って」



 数秒。



 営業企画部、

 完全沈黙。



 そして。



 リゼが吹き出した。



「ダメもう!!」



 野村部長も笑い始める。



「なんだそれぇ!!」



 ノベェンタは頷いていた。



「強いですね」


「そこ評価するの!?」



「人類、“完璧な自分”を演じ続けると脆いんですよ。でも“一回どうしようもない失敗”通過すると、“まあ今さらか”で強くなる場合ある。あとインターネット文化、“黒歴史共有”で共同体形成する傾向かなりあります。“昔こんな失敗しました”って、人類わりと好きなので。ちなみにカピバラ、天敵多い環境なのに“まあ何とかなる”みたいな顔で生きていますが、実際かなり生存戦略成功してます」


「最後たくましくてちょっと人生に効くわね……」



 その時。



 営業部入口。



 空間が静かに揺れる。



 アインだった。



 黒スーツ。


 静かな灰色の瞳。


 今日も無駄なく存在している。



「確認します」


「はい」


 佐伯が即答する。



 動きまで同期していた。



「観測整合維持局 第七補正執行室 統合現実監査官補佐。適性認定済み」



 ピコン。



【JOB CHANGE】

【会社員 → 修正係補佐官】



「転職軽っ!!」


 リゼが叫ぶ。



 アインは静かに続けた。



「以後、佐伯美咲を補佐官として登録します」


「よろしくお願いします、アインさん」


「よろしくお願いします」



 営業部全員が止まる。



 怖いくらい空気が合っていた。



 野村部長が震える。



「増えた……」



 ノベェンタは麦茶を飲みながら呟く。



「なるほど。ダンジョン、“個人の認識変容”かなり加速しますね。RPGでも、“最初のダンジョン攻略後”って主人公急に成長するので。人類、“一回死にそうな目に遭って帰還すると、優先順位整理される”場合あります。あと山登り後の飯が異常に美味いのも、“生存確認直後だから”説あります」


「まぁ状況でそうなってもおかしくないわね…」



 その時。



 アインが静かに言った。



「なお、組織上は私の部下ですが」


「はい」


「会社では私の先輩です」



 沈黙。



 営業部全員。


 同時に理解する。



「あっ」



 佐伯は、

 にこやかに微笑んだ。



「アイン君、コピーお願いね」


「……承知しました」



 リゼが腹を抱える。



「ダメだこの構図面白すぎる!!」



 ノベェンタは静かに頷いた。



「人類、“組織図と現場力関係”ズレると急に面白くなるので。学校の後輩が会社で上司とか、ゲーム強い甥っ子が親族ヒエラルキー壊すとか典型ですね。あとオオカミ社会、“単純な力関係”だけでなく“空気読める個体”が群れ安定させる場合あります」



 営業企画部。


 社宅ダンジョン。


 修正係。


 半透明ウインドウ。


 SSRネコ。



 世界は着実におかしくなっていた。



 だが。


 不思議と。


 前より少しだけ、

 笑える方向へ壊れていた。

ちなみにWeb小説文化って、表面上は「数字の世界」に見えるんですが、実際かなり“深夜の焚き火共同体”なんですよね。


 作者、

 基本的に暗い部屋で一人、

「この展開、面白いか……?」

「会話テンポ死んでないか……?」

「設定ブレてないか……?」

 とか延々ぐるぐる考えてるので。


 脳内会議、

 だいたい毎日開催されてます。


 しかも連載形式。


 これ、

 冷静に考えるとかなり異常です。


 一話投稿するたび、

 自分の情緒と発想と睡眠時間を少しずつ切り分けてネットへ放流してるので。


 創作者、

 時々“感情の漁業”みたいな状態になります。


 あとWeb小説作者、「ここ好き」と言われた瞬間めちゃくちゃ元気になります。


 特に、

「そこ!?」みたいな細かい描写を拾われると危険です。


 急に、

「うわっ……ちゃんと届いてた……」

 になります。


 MMORPGで言うと、

 誰にも気付かれないと思って積んでた趣味ビルドを、

 上級者に「それ強いですよね」って言われる瞬間に近い。


 脳が静かに爆発する。


 逆に、

 自信満々で置いた伏線、

 誰にも触れられない時あります。


 あれ、

 作者は普通に覚えてます。


 深夜、

 天井見ながら、

「……あそこ、削った方が良かったかな」

 とか始まる。


 創作者、

 だいたい“締切”と“自意識”と“睡眠不足”の三竦みで生きてます。


 なので。


 ブックマーク。


 評価。


 感想。


 レビュー。


 あれ全部、

 単なる数字じゃなくて、

「読んでるよ」

「続きを待ってるよ」

 っていう現代型の生存信号なんですよね。


 特にブクマ、

 かなり嬉しいです。


「未来の自分、この作品また開くかも」

 って保存されるので。


 創作者側から見ると、

 “あなたの物語、ブラウザ閉じた後も世界へ残りました”

 に近い。


 あと評価増えると、

 作者わりと静かにニヤニヤしてます。


 表情は真顔でも、

 内部では祭りです。


 人類、

 意外と褒められると伸びる。


 なので、

 もしこの物語が少しでも、

「現実しんどいな」の緩衝材になれたなら。


 ブックマークや評価など頂けると、

 作者のHP・MP・継続率・次話生成速度がかなり上昇します。


 たまに本当に、

「今日は無理か……」

 から、

 ブクマ一件で復活するので。


 創作者という生物、

 想像以上に“読んでくれてる気配”で動いています。

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