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『境界断ちのノベェンタ』 〜「観測者が意思決定した瞬間、世界線は収束します」意識高い系エリート社畜、たまに世界を救う  作者: nobunobuwo


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31/87

第三十一話 「観測装置というのは、“理解不能なノイズ”へ最終的に一番強く引き寄せられるものなんですよね」


 アインには、

 最初。


 感情というものがよく分からなかった。



 《観測整合維持局 第七補正執行室 統合現実監査官》。


 識別名アイン



 担当領域は、

 現実層《C-101》。



 役割は単純。


 観測。


 記録。


 修正。


 境界汚染の除去。



 感情移入は不要。


 共感は誤差。


 個人的執着は、

 観測精度を歪めるノイズ。



 本来。


 修正係とは、

 “世界の外側”へ近づきすぎた存在だった。



 だから。


 人類側へ深入りするべきではない。



 ——そのはずだった。



 二〇二四年。


 現実層《C-101》。


 高知県。


 幡多郡大月町。



 初観測対象。


 野部遠汰。


 識別名ノベェンタ



 第一印象。



 長い。



「……なるほど。修正係という存在、“世界を守る超越的監視者”っぽい肩書きですが、実態としては“宇宙規模インフラ保守会社の深夜メンテナンス班”寄りなんですよね。あと人類、“管理者”へ完全性求めがちですが、現実システムってわりと“現場判断と徹夜テンション”で運用されてるので。ちなみにシャチ、一部群れごとに狩り方も鳴き声も違うため、実質的文化圏形成してる説あります」



 アインは沈黙した。



 長い。


 本当に長い。



 だが。


 問題はそこではなかった。



 ノベェンタ。


 異常だった。



 境界へ触れ。


 “外側”を見続け。


 侵食を受けながら。


 それでも。


 人類側へ立っていた。



 普通なら壊れる。



 修正係ですら、

 長期観測で摩耗する。



 だが。


 ノベェンタは違った。



 ラーメンを食べ。


 コンビニ新作スイーツを気にし。


 半額シールへ反応し。


 世界の終わりを観測しながら、

 港でイカを眺めていた。



「……理解不能」


 アインは最初、

 本気でそう思った。



 深夜。


 道の駅サニーランド。


 半額弁当。


 潮風。



 ノベェンタは、

 値引きシール付き弁当を持ちながら言った。



「なるほど。地方スーパー、“値引き時間帯”が半ば地域住民の生活同期イベント化してるんですよね。あと人類、“半額”という単語へ異常な快感反応示すので。実際には数百円差でも、“得した”という認知が幸福度押し上げる。ちなみにリス、一部種は隠した木の実かなり忘れます」


「……忘れるのですか」


「かなり忘れます」


「それは生存戦略として欠陥では?」


「でも忘れられた木の実から森再生されるので、結果的には世界側へ貢献してるんですよ。人類も似てます。“失敗”とか“無駄”が、後から別方向で共同体支えるケースかなりあるので」



 アインは少し止まった。



 その時。


 理解した。



 この男。


 “欠陥”を嫌っていない。



 むしろ。


 世界のノイズ側へ、

 異様な愛着を持っている。



 それは。


 修正係には無い視点だった。



 だから。


 気付けば観測していた。



 ノベェンタの行動。


 視線。


 発言。


 沈黙。



 ——かなり長時間。



「……これは」


 アインは分析する。



「特定対象への認識優先順位上昇現象」



 俗称。


 気になる。



 さらに問題なのは。


 九条理沙の存在だった。



 九条理沙。


 識別。


 ノベェンタへ極めて近い協力個体。



 距離感。


 近い。



 会話テンポ。


 自然。



 ツッコミ精度。


 高い。



 しかも。


 ノベェンタ、

 九条相手だと少しだけ表情が柔らかい。



 アインは分析した。



「……不快です」



 だが。


 原因不明。



 社員食堂。


 昼休み。



 九条が自然に、

 ノベェンタの唐揚げを一個取った。



「それ一個もらう」


「なるほど。人類、“親密圏内個体”へ食物境界線曖昧化する傾向ありますよね。鍋文化とか典型で、“同一容器から摂食する行動”が共同体同期へかなり寄与する。ちなみにオオカミ、群れ内で食料分配行動あります」


「また動物で締めた」



 アインは見ていた。



 そして。


 胸の奥が少しざわついた。



 ノベェンタが気付く。



「アイン?」


「……何でしょう」


「唐揚げ食べます?」



 アインは止まる。



 数秒後。



「……いただきます」



 九条が吹き出した。


「何その対抗心」


「対抗ではありません」


「じゃあ何よ」



 アインは真顔で答えた。



「……同一共同体内における、摂食同期行動への参加です」


「言い方!!」



 だが。


 ノベェンタは少し笑った。



「なるほど。人類、“一緒にご飯食べる相手”へ親和性形成しやすいですからね。あと鳥類、一緒に採食する個体同士で警戒共有しやすくなるらしいです」


「また動物……」



 その笑顔を見て。


 アインは少し思った。



 ——ずるい。



 この男。


 誰にでも優しい。



 でも。


 自分には全然無頓着。



 残業後。


 社宅前。


 夜風。



 ノベェンタは缶コーヒーを飲みながら空を見ていた。



「……アイン」


「はい」


「最近、人類側慣れてきました?」



 アインは少し考える。



「……分かりません」


「なるほど。人類適応、“急激理解”より“気付いたら戻れなくなってる”パターン多いので。あと地方、“コンビニ店員と天気の話し始めた辺り”で定住率上がる説あります。ちなみにイルカ、一部地域では漁師と協力漁します」


「……ノベェンタ」


「はい」


「あなたは、何故そこまで人類へ執着するのですか」



 夜。


 港。


 静かな潮風。



 ノベェンタは少し黙った。



 そして。


 小さく笑う。



「……面倒臭いからですよ」


「面倒?」


「はい。人類、非合理で、感情的で、すぐ壊れるので。でも、“壊れそうな誰か放っとけない個体”も一定数いるんですよね。あと文明、“完璧な人間”じゃなく“ちょっと駄目だけど誰か気にする人”で維持されてる部分かなり大きいので。ちなみにカピバラ、他種族と一緒に温泉入ります」



 アインは少しだけ目を伏せた。



 その瞬間。


 理解する。



 自分は。


 多分。



 この“世界へ執着しすぎる男”へ。


 かなり引き寄せられている。

人類、推し作品へ評価ボタン押す時だけ異様に理性と羞恥が戦いますよね。


「いやでも作者に圧掛けたくないし……」

「でも応援はしたいし……」

「ていうか今さら押すのも……」


 みたいな。


 ちなみにネコは「この人、安全そう」と判断した相手の近くで急に腹を出して寝始めますが、あれ生物学的にはかなり高レベル信頼行動です。


 つまりブックマークも、だいたい同じです。


 創作者側、

「うわっ……安心されてる……」

 になります。


 あと評価って、“面白かった”の記録でもありますが、

 未来の自分へ向けた「昔これ好きだった」のタイムカプセルでもあるので。


 もし少しでも、

「なんか好きだな、この空気」

 と思って頂けたら、

 ブクマや評価など頂けると嬉しいです。


 作者、

 かなり静かにゴロゴロします。

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