第百七十二話 「“祭り”って、人類わりと“遊びの日”だと思いがちなんですけど。実際には“みんなが無事だった事を確認する日”なので。知性って、笑い声の多い場所ほど安心するんですよね」
大月町。
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夏。
快晴。
そして。
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祭りだった。
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「きましたよ!」
朝から。
野部遠汰。
絶好調だった。
「祭りですよ」
「皆さん」
「祭りです」
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リゼ。
「知ってる」
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ノベェンタ。
満面の笑み。
「素晴らしいですね」
「空気が良いです」
「活気があります」
「人類全体の幸福度が上昇しています」
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アインが端末を見る。
「当然です」
「ノベェンタ統括は元々多数の他世界線人格と安定融合していました」
「さらに今回」
「レムナントが保持していた人格群の大部分が再接続されています」
「人格接続率は過去最高を記録中です」
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佐伯が苦笑する。
「つまり?」
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アイン。
「未知の領域で元気です」
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野村部長。
「し、心配だなぁ〜!?」
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アイン。
「予測不可です」
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ノベェンタ。
「人生で一番元気です!」
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静寂。
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全員。
嫌な予感がした。
その予感は。
正しかった。
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祭り会場。
赤太鼓。
ドン。
ドン。
ドドドドドドドド!!
腹へ響く振動。
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ノベェンタ。
目を輝かせる。
「良いですねぇ……!」
「祭礼太鼓文化は世界中に存在しますが、共同体の同期率向上と身体振動を同時成立させる極めて優秀な文化装置なんですよね」
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「あと単純に格好良いです」
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リゼ。
「結局そこなのよ」
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演舞終了。
拍手。
歓声。
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そして。
ちびっこ相撲。
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「頑張れー!!」
「押せー!!」
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会場中が応援する。
転ぶ。
泣く。
立つ。
笑う。
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ノベェンタは少し微笑んだ。
「良いですね」
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「何が?」
リゼが聞く。
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「勝敗より挑戦を褒めている所です」
「人類」
「意外と優しいんですよね」
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佐伯が頷く。
「そういう所ありますよね」
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「ありますね」
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野村部長。
「俺は勝ちたい派だけどなぁ」
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「部長はそうでしょうね」
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「何だその納得感」
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昼。
ビンゴ大会。
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「リーチです」
「リーチにゃ!!」
「リーチにゃ!!」
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キノピー。
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リンベル。
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大騒ぎ。
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そして。
「ビンゴにゃ」
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キノピー。
当選。
景品。
豪華花火セット。
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「良いにゃ」
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「みんなでやりましょう!」
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野村部長。
「これは後でアイン君の家に集合だなぁ!」
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夕方。
もち投げ。
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「来ましたね」
ノベェンタ。
本気。
「これは人類の反射神経と位置予測能力と空間認識能力を試す伝統競技ですね」
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リゼ。
「違う」
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餅。
飛ぶ。
キャッチ。
キャッチ。
キャッチ。
キャッチ。
キャッチ。
キャッチ。
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町民。
「あの人、何!?」
「またあの謎の会社の人達だ!」
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結果。
十二個。
「豊作でした」
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野村部長。
「だから収穫祭じゃないんだってぇ」
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そして。
夜。
祭りファイナル大花火。
ドォン。
赤。
青。
白。
金。
大輪。
歓声。
拍手。
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ノベェンタは静かに見上げていた。
「良いですね」
小さな声。
「本当に」
「良いですね」
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祭り終了。
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アインの家。
庭。
BBQ開始。
肉。
野菜。
魚。
炭火。
笑い声。
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野村部長。
「よし!」
「今日は祝いだ!」
「野部復活記念だ!」
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佐伯も笑う。
「本当に戻って来ましたからね」
「良かったです」
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アイン。
「統括不在期間」
「業務効率二十七パーセント低下」
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ノベェンタ。
「そんなにですか」
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アイン。
「主に騒音増加が原因です」
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野村部長。
「俺か」
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「俺です」
全員。
頷く。
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そして。
事件発生。
最後の高級肉。
一枚。
静寂。
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キノピー。
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リンベル。
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視線衝突。
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「にゃ」
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「にゃ」
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火花。
散る。
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「《超高速猫科反射神経予測先行肉確保術式・ニャンダムストライク》にゃ!!」
キノピー。
突撃。
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「甘いにゃ!!」
リンベル。
「《ベルタリュオン式超絶高速立体機動肉回収演算・キャットオーバードライブ》にゃ!!」
迎撃。
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肉。
空中へ舞う。
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「まずいにゃ!!」
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「飛んだにゃ!!」
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その瞬間。
野村部長。
立ち上がる。
「秘奥義!!」
「《会社員三十年積立有給取得失敗残業代未回収魂魄全開放式・サラリーマンブレイク》!!」
ジャンプ。
失敗。
転ぶ。
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「部長ぉぉぉ!!」
佐伯。
爆笑。
「何やってるんですか!」
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肉。
さらに飛ぶ。
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アイン。
無表情。
「捕獲します」
「《多重未来予測観測固定術式・クオンタムキャッチ》」
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肉確保。
静寂。
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全員。
「ずるい」
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アイン。
「合法です」
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その時。
ノベェンタが立ち上がる。
「では」
「私も参加しましょう」
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嫌な予感。
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全員。
「やめろ」
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遅かった。
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「《超多世界線人格統合同時演算因果収束未来予測幸福度最大化焼肉獲得最適解観測術式・グランドノベェンタ・バーベキュー・オーバーロード》」
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肉。
たくさん回収。
完璧。
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静寂。
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全員。
「大人気ない」
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ノベェンタ。
「勝負は真剣にやるべきですので」
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リゼ。
「祭り終わってから何してんのよ」
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笑う。
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本当に久しぶりに。
何も心配せず。
全員で笑った。
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夜も更ける。
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最後。
線香花火。
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庭先。
ノベェンタ。
リゼ。
二人だけ。
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小さな火。
静かだった。
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「今日は楽しかったです」
ノベェンタが言う。
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「かなり?」
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「かなりです」
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「幸福度ランキング上位三位以内ですね」
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「また作ったの?」
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「更新されました」
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リゼが笑う。
本当に。
安心したように。
笑った。
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線香花火が揺れる。
パチ。
パチ。
小さな光。
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ノベェンタは空を見る。
「帰って来た感じがします」
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リゼは少し微笑んだ。
「帰って来たのよ」
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線香花火が落ちる。
小さな光が夜へ溶ける。
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だが。
今度は。
誰も居なくならない。
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夏の夜風が。
静かに吹いていた。
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