表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『境界断ちのノベェンタ』 〜観測整合維持局 第七補正執行室 野部遠汰の場合〜  作者: nobunobuwo


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
172/183

第百七十二話 「“祭り”って、人類わりと“遊びの日”だと思いがちなんですけど。実際には“みんなが無事だった事を確認する日”なので。知性って、笑い声の多い場所ほど安心するんですよね」


 大月町。



 夏。


 快晴。


 そして。



 祭りだった。



「きましたよ!」


 朝から。


 野部遠汰。


 絶好調だった。


「祭りですよ」


「皆さん」


「祭りです」



 リゼ。


「知ってる」



 ノベェンタ。


 満面の笑み。


「素晴らしいですね」


「空気が良いです」


「活気があります」


「人類全体の幸福度が上昇しています」



 アインが端末を見る。


「当然です」


「ノベェンタ統括は元々多数の他世界線人格と安定融合していました」


「さらに今回」


「レムナントが保持していた人格群の大部分が再接続されています」


「人格接続率は過去最高を記録中です」



 佐伯が苦笑する。


「つまり?」



 アイン。


「未知の領域で元気です」



 野村部長。


「し、心配だなぁ〜!?」



 アイン。


「予測不可です」



 ノベェンタ。


「人生で一番元気です!」



 静寂。



 全員。 


 嫌な予感がした。


 その予感は。


 正しかった。



 祭り会場。


 赤太鼓。


 ドン。


 ドン。


 ドドドドドドドド!!


 腹へ響く振動。


挿絵(By みてみん)



 ノベェンタ。


 目を輝かせる。


「良いですねぇ……!」


「祭礼太鼓文化は世界中に存在しますが、共同体の同期率向上と身体振動を同時成立させる極めて優秀な文化装置なんですよね」



「あと単純に格好良いです」



 リゼ。


「結局そこなのよ」



 演舞終了。


 拍手。


 歓声。



 そして。


 ちびっこ相撲。



「頑張れー!!」


「押せー!!」



 会場中が応援する。


 転ぶ。


 泣く。


 立つ。


 笑う。



 ノベェンタは少し微笑んだ。


「良いですね」



「何が?」


 リゼが聞く。



「勝敗より挑戦を褒めている所です」


「人類」


「意外と優しいんですよね」



 佐伯が頷く。


「そういう所ありますよね」



「ありますね」



 野村部長。


「俺は勝ちたい派だけどなぁ」



「部長はそうでしょうね」



「何だその納得感」



 昼。


 ビンゴ大会。



「リーチです」


「リーチにゃ!!」


「リーチにゃ!!」



 キノピー。



 リンベル。



 大騒ぎ。



 そして。


「ビンゴにゃ」



 キノピー。


 当選。


 景品。


 豪華花火セット。



「良いにゃ」



「みんなでやりましょう!」



 野村部長。


「これは後でアイン君の家に集合だなぁ!」



 夕方。


 もち投げ。



「来ましたね」


 ノベェンタ。


 本気。


「これは人類の反射神経と位置予測能力と空間認識能力を試す伝統競技ですね」



 リゼ。


「違う」



 餅。


 飛ぶ。


 キャッチ。


 キャッチ。


 キャッチ。


 キャッチ。


 キャッチ。


 キャッチ。



 町民。


「あの人、何!?」


「またあの謎の会社の人達だ!」



 結果。


 十二個。


「豊作でした」



 野村部長。


「だから収穫祭じゃないんだってぇ」



 そして。


 夜。


 祭りファイナル大花火。


 ドォン。


 赤。


 青。


 白。


 金。


 大輪。


 歓声。


 拍手。



挿絵(By みてみん)



 ノベェンタは静かに見上げていた。


「良いですね」


 小さな声。


「本当に」


「良いですね」



 祭り終了。



 アインの家。


 庭。


 BBQ開始。


 肉。


 野菜。


 魚。


 炭火。


 笑い声。



 野村部長。


「よし!」


「今日は祝いだ!」


「野部復活記念だ!」



 佐伯も笑う。


「本当に戻って来ましたからね」


「良かったです」



 アイン。


「統括不在期間」


「業務効率二十七パーセント低下」



 ノベェンタ。


「そんなにですか」



 アイン。


「主に騒音増加が原因です」



 野村部長。


「俺か」



「俺です」


 全員。


 頷く。



 そして。


 事件発生。


 最後の高級肉。


 一枚。


 静寂。



 キノピー。



 リンベル。



 視線衝突。



「にゃ」



「にゃ」



 火花。


 散る。



「《超高速猫科反射神経予測先行肉確保術式・ニャンダムストライク》にゃ!!」


 キノピー。


 突撃。


挿絵(By みてみん)



「甘いにゃ!!」


 リンベル。


「《ベルタリュオン式超絶高速立体機動肉回収演算・キャットオーバードライブ》にゃ!!」


 迎撃。


挿絵(By みてみん)



 肉。


 空中へ舞う。



「まずいにゃ!!」



「飛んだにゃ!!」



 その瞬間。


 野村部長。


 立ち上がる。


「秘奥義!!」


「《会社員三十年積立有給取得失敗残業代未回収魂魄全開放式・サラリーマンブレイク》!!」



挿絵(By みてみん)


 ジャンプ。


 失敗。


 転ぶ。



「部長ぉぉぉ!!」


 佐伯。


 爆笑。


「何やってるんですか!」



 肉。


 さらに飛ぶ。



 アイン。


 無表情。


「捕獲します」


「《多重未来予測観測固定術式・クオンタムキャッチ》」


挿絵(By みてみん)



 肉確保。


 静寂。



 全員。


「ずるい」



 アイン。


「合法です」



 その時。


 ノベェンタが立ち上がる。


「では」


「私も参加しましょう」



 嫌な予感。



 全員。


「やめろ」



 遅かった。



「《超多世界線人格統合同時演算因果収束未来予測幸福度最大化焼肉獲得最適解観測術式・グランドノベェンタ・バーベキュー・オーバーロード》」


挿絵(By みてみん)



 肉。


 たくさん回収。


 完璧。



 静寂。



 全員。


「大人気ない」



 ノベェンタ。


「勝負は真剣にやるべきですので」



 リゼ。


「祭り終わってから何してんのよ」



 笑う。



 本当に久しぶりに。


 何も心配せず。


 全員で笑った。



 夜も更ける。



 最後。


 線香花火。



 庭先。


 ノベェンタ。


 リゼ。


 二人だけ。



 小さな火。


 静かだった。



「今日は楽しかったです」


 ノベェンタが言う。



「かなり?」



「かなりです」



「幸福度ランキング上位三位以内ですね」



「また作ったの?」



「更新されました」



 リゼが笑う。


 本当に。


 安心したように。


 笑った。



 線香花火が揺れる。


 パチ。


 パチ。


 小さな光。



 ノベェンタは空を見る。


「帰って来た感じがします」



 リゼは少し微笑んだ。


「帰って来たのよ」



 線香花火が落ちる。


 小さな光が夜へ溶ける。



 だが。


 今度は。


 誰も居なくならない。



 夏の夜風が。


 静かに吹いていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ