第百四十話「“笑い”って実は高度知性活動なので、空気読解と共感能力が極まった文明ほどツッコミ文化が発達しやすいんですよね」
午前零時二十一分。
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東央マテリアル。
営業企画部。
給湯室。
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未来世界線から来た少女。
エルフィーナ。
通称、エル。
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机の上。
キノピーが丸くなっている。
その隣で。
エルは、静かに温かいココアを飲んでいた。
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佐伯。
まだ若干混乱している。
「……えっと」
「未来の私達って……どうなってるの?」
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エル。
少しだけ考える。
そして。
ぽつり。
「母さんはベルタリュオンで有名人です」
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佐伯。
「えっ」
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エル。
静かな顔。
「ツッコミ文化を確立したので」
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「……はい?」
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エルは、未来映像を展開する。
白銀都市。
浮遊街区。
巨大感情樹。
その中心。
巨大ホログラム
【第一回 全銀河ツッコミ選手権】
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佐伯。
絶叫していた。
『だから感情同期中にボケを挟まないでくださいぃぃぃぃ!!』
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大歓声。
観客涙。
ベルタリュオン人、感動している。
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ノベェンタ。
真顔。
「なるほど。高度感情同期文明って“空気共有”精度高いので、ツッコミ文化との相性かなり良いんですよね。ボケって“認識ズレ”ですし、ツッコミは“世界認識補正行為”なので、ある意味かなり文明維持寄り概念です」
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「分析しないでください!!」
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エル。
続ける。
「現在ベルタリュオンでは、お笑い芸人が最上位エリート職です」
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リゼ。
「平和すぎるぅぅぅ♡」
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さらに。
映像切り替え。
広場。
巨大銅像。
赤いビキニアーマー。
ハルバード。
ツッコミ顔。
完全に佐伯だった。
【聖ツッコミ始祖・サエキ】
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佐伯。
「なんでぇぇぇぇぇぇ!?」
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エル。
「現在ベルタリュオンでは“的確ツッコミ”が感情安定へ有効とされているので」
「文化体系に組み込まれました」
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「嫌すぎる未来なんですけど!?」
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アイン。
静かに映像を見る。
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そこへ。
次の映像。
未来アイン。
エプロン姿。
料理している。
しかも。
めちゃくちゃ上手い。
包丁。
速い。
盛り付け美しい。
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未来ベルタリュオン人達。
泣いていた。
『美味しい……』
『感情が安定する……』
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アイン。
少し照れる。
「……料理効率を最適化した結果です……あと佐伯が沢山たべるので」
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エル。
「父さんのご飯、未来だと国宝級です」
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佐伯。
顔真っ赤。
「父さんて言ったぁぁぁぁぁ!!」
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その時。
映像切り替え。
超高層タワーマンション。
最上階。
ガウン姿。
高級コーヒー。
夜景。
野村部長。
めちゃくちゃ成功していた。
【株式会社ハラマキ・ユニバースCEO】
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野村部長。
満面笑顔。
『いや〜、高性能腹巻きって意外と需要あるんだねぇ』
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背景。
【量子冷え防止機能】
【胃痛緩和率97%】
【世界線適応型腹巻き】
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佐伯。
「何売ってるんですか未来でぇぇぇぇ!!」
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ノベェンタ。
真顔。
「いや腹部保温、人類かなり重要なので。腸内環境と精神状態の関連性、近年かなり研究進んでますし」
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「もう何でも理論武装する!!」
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そして。
少しだけ。
空気が、柔らかくなった。
未来。
崩壊だけじゃない。
ちゃんと。
笑って生きていた時間がある。
それが分かったから。
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だが。
深夜。
給湯室前。
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佐伯だけが、エルへ小さく聞いた。
「……ねぇ」
「リゼさんは?」
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エル。
一瞬だけ、黙る。
そして。
静かに答えた。
「リゼ博士は」
「最後までノベェンタおじさんを助けようとしてました」
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佐伯、止まる。
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エルは続ける。
「未来では途中から、今みたいな感じじゃなくなります」
「研究者へ戻ったんです」
白衣。
数式。
観測装置。
未来映像。
リゼ。
痩せていた。
眠っていない目。
でも。
必死だった。
『絶対に助けるからね、野部くん』
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佐伯。
息を呑む。
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エル。
静かな声。
「地球へネウロンが衝突する数年前」
「感情境界固定実験中に事故が起きました」
「リゼ博士は」
「そこで……」
最後まで言えなかった。
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佐伯。
顔が青くなる。
「……そんな」
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その時。
後ろ。
小さく。
コーヒーカップの音がした。
カタン。
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佐伯、振り返る。
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そこに。
ノベェンタが立っていた。
静かに。
聞いてしまっていた。
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