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『境界断ちのノベェンタ』 〜観測整合維持局 第七補正執行室 野部遠汰の場合〜  作者: nobunobuwo


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第百三十八話 「“役に立つ能力”より“なんか居ると面白い人材”の方が文明を長持ちさせるので、人類社会も実はかなりスキル制なんですよね」


 午後一時十四分。



 異世界線。


 聖教国ソリエンテ。


 白亜大聖堂。


 巨大ステンドグラス。


 聖歌。


 香。


 金色光粒。


 荘厳だった。


 完全に。


 RPG終盤神殿。



挿絵(By みてみん)



 大神官が、静かに説明する。


『現在、聖域《ルクス=ネメシア》にて異常発生中』


『侵入者は“人の姿”を取り』


『精神へ干渉し』


『混乱を誘発します』


 空間投影。


 白霧の森。


 古代遺跡。


 そして。


 人影。


 だが。


 顔が定まらない。


『聖騎士団による討伐は失敗』


『同士討ちが発生しました』



 佐伯。


「うわぁ……」



 アイン。


 静かに分析。


「認識汚染系ですか」



 大神官、頷く。


『故に』


『外部観測耐性を持つ貴方達へ依頼したい』



 ノベェンタ、静かにコーヒー飲む。


「……なるほど。ドッペルゲンガー系って、人類の“自己認識依存”突いてくるので。鏡恐怖症とかも、“自分と少し違う自分”への本能的不安から来てますし」



 大神官。


 ちょっと引いてた。


「まず聖域へ入る為、女神の祝福を受けてもらいます」




 白亜大聖堂。


 中央礼拝区。


 巨大女神像。


 優しい微笑み。


 だが。


 妙に圧がある。



『祝福の儀を開始します』


 金色魔法陣。


 光。


【スキル付与開始】



 佐伯。


 光る。


【《超高速ツッコミ反射》獲得】


「嫌な予感してましたよぉぉぉぉ!!」


【どんなボケにも0.2秒以内で反応可能】


「方向性が完全に固定されてるぅぅぅ!!」



 アイン。


【《静音完璧掃除術》獲得】


「便利です」


「戦闘用じゃないんですか!?」



 リゼ。


【《恋愛波動増幅》獲得】


「女神様ぁぁぁぁ♡♡♡」


「公式カップリング応援機能ぉぉぉ♡♡♡」



 野村部長。


【《ちょうど良い温度のコーヒー生成》獲得】


「いやかなり便利だろこれ……」


 本当に便利だった。



 そして。


 ノベェンタ。


 女神像。


 突然。


 バチィィィィィィッ!!


 神殿全域へ、灰色雷光。


 鐘が鳴る。


 空間歪曲。


 ステンドグラス震える。


【スキル付与数・異常】


【制限突破】


【権限衝突】


【観測不能】



 大神官。


 青ざめる。


「な……!?」



 数十秒後。



 佐伯。


「……何のスキルだったんです?」



 ノベェンタ。


 一瞬だけ、目を逸らす。


「……まぁ、ちょっと多かったので」



「多いって何ですか!?」



「人類、“器用貧乏”概念ありますし」



「絶対違いますよね!?」




 その後。


 聖域《ルクス=ネメシア》。


 白霧森林。


 古代遺跡。


 発光苔。


 静かな湖。


 空気だけが、妙だった。


 そして。


 現れる。


 人影。


 最初。



 佐伯だった。


 だが。


 ニヤニヤしている。


『アイン先輩ぃ♡ 今日もカッコいいですぅ♡』



 佐伯本人。


「言ってませんからねぇぇぇぇ!!?」



 次。



 リゼ型。


『キスイベント発生率上昇中ぅぅぅ♡』



「ちょっとそうゆうのやめてくださいぃぃぃ♡」



 次。



 野村部長型。


『みんな家族みたいなものだからキャンプ場ごと買おうかな』



「いやそこまでは言わないよ!?」



 次。



 アイン型。


『佐伯。補給糖分不足です。あーんしてください』



 佐伯、蒸発寸前。


「アイン先輩そんな言い方しませんからぁぁぁ!!」



 ドッペル達。


 一斉に笑う。



『観測』


『模倣』


『感情解析』


『人格同期』



 アイン。


 静かに前へ。


「外側由来存在」


「認識模倣型です」



 その時。


 最後のドッペル。


 ノベェンタへ変化した。


 眼鏡。


 黒剣。


 疲れた会社員顔。



 だが。


 次の瞬間。


 ブレる。


 村人ノベェンタ。


 王族ノベェンタ。


 老人ノベェンタ。


 機械生命体ノベェンタ。


 白衣ノベェンタ。


 傷だらけノベェンタ。


 次々切り替わる。


 ドッペル。


 困惑。


『……!?』


『人格数異常!!』


『収束不可!!』


『存在定義不明!!』



 ノベェンタ。


 静かに黒剣を抜く。


 灰色雷光。


 数式。


 異世界文字。


「《超多重人格境界圧縮式・意味わからないけどなんかそれっぽいので押し切るフルオーバードライブ》——」



 ドッペル。


『そんな……』


『ばかな……!?』


『中に……何人居る……!?』


 崩壊。


 灰色粒子化。


 そして。


 勝手に消滅した。



挿絵(By みてみん)



 佐伯。


「……え?」


「倒したんですか?」



 ノベェンタ。


 少し困った顔。


「……たぶん向こう、“模倣対象の人格構造”理解しようとして処理落ちしました」



「なんですかその怪異特攻体質!?」




 深夜。


 社宅。


 ノベェンタの部屋。


 窓の外。


 夏の夜。


 ノベェンタ。



 一人。


 静かに座っていた。


 手の中。


 白銀文字列。


【付与スキル一覧】


 大量。


 ありえない数。



 その中。


 一つだけ。


 ノベェンタは、静かに見つめる。


【???】



 そして。


 黒剣を抜く。


 灰色魔法陣。


 封印術式。


「……これは」


「使わない方が良さそうですね」


 バチィッ——。


 スキル封印。



 その瞬間。


 窓の外。


 誰かが、見ていた。


 白銀髪。


 長い耳。


 金銀オッドアイ。


 少女は、小さく呟く。



「……やっぱり」


「もう始まってる」


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