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『境界断ちのノベェンタ』 〜観測整合維持局 第七補正執行室 野部遠汰の場合〜  作者: nobunobuwo


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第百三十三話 「植物というのは“動けない生物のくせに環境適応能力が異常に高い”ので、進化論的にはかなり怖い存在なんですよね。あと人類、“木がデカい”だけで神聖視しがちです」


 ベルタリュオン星。



 中央広場。


 静止。


 暴動。


 怒号。


 恐怖。



 全部が。


 一瞬だけ、止まっていた。


 地面へ落ちた種。


 白銀発光。


 脈動。


 ドクン。


 ドクン。


 まるで。


 心臓だった。



 ベルタリュオン人達。


 全員、動けない。


『……何ですか、あれは』


『感情波……?』


『違う』


『もっと古い』



 アイン。


 呆然と、種を見る。


 佐伯から貰った、マクラメペンダント。


 あの日。


 社宅裏ダンジョンで、ノベェンタと拾った謎の種。


 リゼが、“絶対なんか意味あります♡”とか言いながら編み込んだやつ。



 その種が今。


 光っていた。


 次の瞬間。


 パキッ。


 小さな音。


 種の表面へ、亀裂が走る。


『え……』


 白銀光。


 爆発。


 ドゴォォォォォォォォッ!!!!


 中央広場。


 地面が隆起する。


 結晶床が割れる。


 光柱。


 感情波。


 銀河色粒子。



 そして。


 芽。


 生えた。


 いや。


 違う。


 “生えてはいけない速度”で、成長していた。



 ゴゴゴゴゴゴゴゴ——。



 幹。


 枝。


 葉。


 白銀結晶と、翡翠色樹皮が融合した超巨大樹木。


 空へ伸びる。


 都市を超える。


 雲を突き抜ける。



挿絵(By みてみん)




 そして。


 ベルタリュオン全土へ、光の葉が舞い始めた。


【未知生命体確認】


【感情共鳴波動拡散】


【同期干渉率低下】


【個体精神安定化現象確認】


 中央観測維持局。


 全員。


 絶句。



 オリジン。


 初めて。


 声が震える。


『……ありえない』


『これは』


『自然発生型……感情安定媒体……?』



 その時。


 暴れていたベルタリュオン人。


 ゆっくり、手を止める。


「……あれ」


「なんで私は」


「こんなに怖がって……」


 別の誰か。


「……違う感情を持ってても」


「別に、消える訳じゃ……」



 白銀の葉が、肩へ落ちる。


 暖かかった。


 同期とは違う。


 もっと。


 優しい何か。



 アイン。


 巨大樹を見上げる。


 そして。


 理解した。


 これ。


 “繋ぐ”のではない。


 “支えている”。


 個を消さず。


 違いを許したまま。


 感情だけを、柔らかく安定させている。



 その瞬間。


 地球。


 東央マテリアル営業企画部。


 給湯室。



 ノベェンタ。


 コーヒー吹いた。


「ぶふっ!? ごほっ!! ごほっ!!」


 むせる。



 モニター。


 超巨大樹。


 宇宙規模神秘現象。



 ノベェンタ。


 目だけ、異常に真剣だった。


「な、なるほど……」


「ここでそうきましたか……」


「となると、あの時のあれも……」



 佐伯。


「何か思い当たるんですか!?」



 ノベェンタ。


 ブツブツ言い始める。


「いや、神話体系的に“世界樹”ってかなり特殊なんですよ。普通、神話って“神が世界を支配する”構造になりやすいのに、“樹木”って“上から管理する”じゃなく“全体を循環維持する”概念なんです。北欧神話ユグドラシルも、生命・死・知識・異界全部を繋ぎながら“強制統一”はしてない」


「あと植物、“光合成で外部エネルギーを内部変換する生物”なので。“外部同期依存文明”だったベルタリュオンが、“個体内部感情生成文明”へ移行する象徴としては理論的整合性かなり高いですね」



 リゼ。


 大興奮。


「世界樹きたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!♡♡♡」



 キノピー。


 金目。


 完全に、“知ってた顔”。


「にゃふ」



 佐伯。


 半泣き。


「えっ」


「えっ」


「私のペンダントからですかぁぁぁ!?」



 野村部長。


 会議室入口で、紙皿持ったまま固まっていた。


「……え?」


「今、“木”生えた?」



 そして。


 ノベェンタは、巨大樹を見つめながら。


 静かに呟く。


「……もしかして」



「ベルタリュオン文明、“統一”じゃなく“共存”へ進化始めました?」


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