表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『境界断ちのノベェンタ』 〜観測整合維持局 第七補正執行室 野部遠汰の場合〜  作者: nobunobuwo


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
127/183

第百二十七話 「“誰かと暮らす”という概念、人類は軽く使いがちですが、生活音・温度感・歯磨きタイミング共有まで含めると実質かなり高難度精神同期術式です」


 午後七時二十一分。



 東央マテリアル。


 第三会議室。


 本来。


 営業戦略会議や、月次報告が行われる場所。


 だが今。


 机の上。


 麻紐。


 天然石。


 ビーズ。


 ペンチ。


 小皿。


 謎のハーブティー。



【リゼのふわふわマクラメペンダントづくりワークショップ♡】



 意味が分からない。



 野村部長、入口で止まる。


「……なんで会議室で開催してるんです?」



 リゼ。


 キラキラ笑顔。


「“創作活動は感情循環を促す”って宇宙さんが言ってたから〜♡」



「宇宙さん誰なんですか……」



 だが。


 今日は参加者がいた。


 佐伯。


 真剣顔。


 赤い私服。


 机へ向かい、必死に編んでいる。



 その横。


 黒猫キノピー。


 なぜか参加。


 しかも。


 妙にテンション高い。


「にゃふっ♡」


 麻紐へ突撃。



「キノピー邪魔ですぅぅぅ!!」



 リゼは、ニコニコしながら覗き込んだ。



「でも佐伯ちゃん、急にどうしたの〜?」



 佐伯。


 少し固まる。


 そして。


 小声。


「……その」


「アイン先輩、明日帰ってくるじゃないですか」



 リゼ。


 停止。


 次の瞬間。


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ♡♡♡」


 会議室、揺れる。


「ついに!?」

「同棲!?」

「新婚!?」

「共同生活!?」

「おそろいマグカップ!?」



「飛躍が早いです!!」



 だが。



 リゼ、止まらない。


「えっ待って待って!?」

「朝“おはよう”って言うの!?」

「帰ってきたら“おかえり”って言うの!?」

「それもう感情宇宙融合だわぁぁぁ♡♡♡」



 キノピーも、なぜか大興奮。


「にゃーーーーー♡♡♡」


 机の上、走り回る。


 麻紐大惨事。



「キノピーまでなんで盛り上がってるんですかぁぁぁ!!」


 佐伯、真っ赤。


 だが。


 少しだけ。


 嬉しそうだった。


「……でも」


 手元を見る。


 マクラメ中央。


 そこへ。


 小さな種。



 以前。


 ノベェンタとダンジョンで手に入れた、虹色光沢の謎の種。


 静かに、淡く光っていた。



「……なんか」


「渡したくて」



 リゼ。


 完全に、尊死寸前。


「ぎゃーーーーーー♡♡♡」


「“帰ってくる人へ贈るお守り”じゃ〜ん♡♡♡」



 その瞬間。


 空間が、揺れた。


 会議室奥。


 黒い亀裂。


【感情過熱】


【恋愛妄想増幅】


【尊さ限界突破】



「またですかぁぁぁ!?」



 外側。


 発生。


 しかも。


 今回、ピンク色だった。


 ハート型粒子。


 意味不明。



 リゼ、完全に目が輝く。


「恋愛エネルギー系外側だぁぁぁ♡」



「悪くなさそうですけど!?その分類!?」



 だが。


 次の瞬間。


 リゼ。


 立ち上がる。


 ふわり。


 金色粒子。


 花弁。


 虹色光。


「愛ってねぇぇぇぇ♡」


 会議室全域。


 ハート型魔法陣展開。


「“好き”だけじゃなくて、“一緒に居たい”の積み重ねなんだよぉぉぉぉ♡♡♡」


 ドゴォォォォォォォッ!!!!


「《超銀河恋愛波動全方位共鳴式・ラブラブ∞エターナルユニバース・トキメキメテオシャワーDX♡》」


 虹色衝撃波。


 ハート粒子。


 花吹雪。


 謎のキラキラ。


 会議室の窓ガラスへ、“LOVE”文字列浮かぶ。



「なんなんですかこの必殺技ぁぁぁ!!」



 さらに。


 リゼ、両手を広げる。


「《運命赤い糸超新星接続術式・ツインソウルマリアージュ・ビッグバンハートフルレインボー♡♡♡》」



 バギィィィィィィン!!!!


 ピンク外側。


 浄化。


 ハート型になって消滅。



 野村部長。


 入口で、遠い目。


「……最近、“感情で解決する現象”増えてないか?」



 ノベェンタ。


 会議室隅でコーヒー飲んでいた。


「人類、“論理”より“感情納得”優先する生物なので。あと恋愛時ドーパミン分泌量、軽い依存症近いです。脳科学的には“好きな人考えてる時”と“ギャンブル当たり演出待機中”、わりと近い反応出ます」



「最後に台無し知識入れないでください!!」


 佐伯、真っ赤。



 その後。


 ワークショップ終了。


 完成したペンダント。


 細い赤紐。


 丁寧な編み込み。


 中央には。


 虹色の種。


 小さく、綺麗に光っていた。



 リゼは、優しく笑う。


「これ、帰ってきた時に渡しな〜♡」



 佐伯。


 少しだけ、固まる。


「……えっ」


「いやでもその」

「重くないですか!?」

「なんかこう、“待ってました感”強くないですか!?」



 リゼ。


 ニコニコ。


「だって待ってたじゃん♡」



 佐伯。


 停止。


 何も言えない。



 キノピー。


「にゃふ〜♡」


 めちゃくちゃ満足そうだった。




 その夜。


 アインの家。


 離れ。


 静かな部屋。


 佐伯は、一人だった。


 窓の外。


 夏の虫の声。


 夜風。


 遠くの海音。


 机の上。


 完成したペンダント。


 虹色の種が、小さく光る。



 佐伯、布団へ倒れ込む。


「うわぁぁぁぁぁ……」


 枕へ顔埋める。


「どうやって渡せばいいんですかこれぇぇぇ……」



 ゴロゴロ。


 悶える。


「いや待ってください!?」

「そもそも同棲って何なんですか!?」

「距離感どうすれば!?」

「朝起きたら居るんですよね!?」

「えっ歯磨きとか見られるんですか!?」


 完全に、寝れない。



 その時。


 机の上。


 虹色の種。


 ぽう。


 小さく光った。



 まるで。



 “帰ってくる”のを、知っているみたいに。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ