第百二十二話 「“寂しい”を言語化できない人類は、とりあえず火力へ変換して前進します」
午前十時二十三分。
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東央マテリアル。
営業企画部。
曇天。
エアコン音。
コピー機。
電話。
キーボード。
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そして。
妙にピリついた空気。
原因。
佐伯。
赤ペンで資料を叩く音が、ちょっと強い。
「……この“確認しております”五連続必要あります?」
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ノベェンタ。
給湯室前。
ぬるいコーヒーを飲みながら静かに答える。
「日本企業、“断定”へ責任発生するので。“確認しております”は実質現代社会型防御魔法です。あと中世外交文書、“神の御意思次第”で責任逃がす文化かなり多かったので、人類ずっと曖昧表現好きなんですよ」
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「なんで会社の話で文明史になるんですか!!」
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営業企画部。
静かになる。
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野村部長。
そっと距離を取る。
(あっこれ完全にアイン君不足だなぁ)
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だが。
ノベェンタだけは真剣だった。
灰色の瞳。
分析。
観測。
部下管理。
「……なるほど」
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佐伯。
「何がですか」
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ノベェンタ。
静かな声。
「ストレス蓄積ですね」
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「違います!!」
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「人類、“寂しい”を“イライラ”へ変換する個体かなり多いので」
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佐伯。
一瞬止まる。
「…………」
図星だった。
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でも。
認めたくない。
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ノベェンタは静かに頷く。
「わかりました」
給湯室へ入る。
カチャ。
給湯ポット。
紙コップ。
インスタント味噌汁。
生活感。
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だが。
次の瞬間。
黒い剣。
バチィィィッ——!!
灰色雷光。
空間歪曲。
電子ノイズ。
給湯室全体が、一瞬だけ深淵みたいに沈む。
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佐伯。
「いやいやいやいや!?!?」
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野村部長。
「勤務中に給湯室から異世界行くなァァァァ!!」
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ノベェンタ。
真顔。
「部下のストレス管理は上司責務なので」
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佐伯。
「えっ」
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「現在、私はアイン観測官の直属上司」
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「はい……」
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「そして佐伯さんはアイン観測官補佐」
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「……はい?」
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「つまり組織構造上、私が上司です」
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佐伯。
止まる。
今更だった。
この人。
普通に上司だった。
しかも。
世界修正管理職。
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ノベェンタ。
静かな声。
「なので今から強制ストレス解消します」
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「言い方怖いんですよ!!」
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ズガァァァァァン!!
空間断裂。
給湯室中央。
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異世界線ゲート展開。
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野村部長。
「給湯室の用途説明書に書いてねぇんだよそんな機能ォォォ!!」
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次の瞬間。
二人は消えた。
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異世界線。
地下迷宮《グラン=ヴェルグ深層》。
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赤黒い結晶群。
溶岩。
黒霧。
重力異常。
完全。
モンスターハウス。
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咆哮。
数百の魔物。
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だが。
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佐伯。
装備展開。
紅蓮のビキニアーマー。
鮮烈な赤。
黒金装飾。
熱を帯びる赤布。
長い赤髪が、爆風で舞う。
巨大ハルバード。
深紅魔力が、刃から噴き出す。
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佐伯。
「なんでだんだん露出が際どくなるんですかねぇぇ
!!」
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ノベェンタ。
真顔。
「異世界線側、“かっこよさ優先で防御力補正かかる”ので」
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「絶対嘘ですよね!?!?」
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その瞬間。
魔狼群突撃。
ドゴォォォォ!!
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佐伯。
踏み込む。
紅蓮魔力爆発。
「——《紅蓮断衝斧槍 “フレイム・ハウリング”》!!」
「アインさんが居ないだけでこんなに調子狂うとかムカつくんですよォォォ!!」
ズガァァァァァン!!
赤い衝撃波。
魔狼群、一列消滅。
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ノベェンタ。
黒剣展開。
灰色雷光。
「——《超過勤務因果断裂式境界補正斬 “デッドライン・テンペスト”》」
バチィィィィィッ!!
超雷撃斬。
迷宮壁ごと、魔獣軍団両断。
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巨大ゴーレム接近。
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佐伯。
赤い魔力、全身噴出。
ハルバード回転。
「——《爆紅旋牙 “ヴァーミリオン・レイド”》!!」
「ちゃんと帰ってくるって言われたら待っちゃうじゃないですかァァァ!!」
ドゴォォォォォン!!
紅蓮回転斬。
巨大ゴーレム、上半身消滅。
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ノベェンタ。
静かに頷く。
「良い感情解放です」
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「カウンセリング方法おかしいんですよ!!」
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飛竜襲来。
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ノベェンタ。
「——《有給未消化型超電磁過積載破壊術 “ブラックアウト・レクイエム”》」
超巨大黒雷柱。
飛竜群、一瞬で蒸発。
爆風。
崩壊。
迷宮震動。
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佐伯。
涙目。
でも。
止まらない。
「——《灼界裂閃 “クリムゾン・ブレイカー”》!!」
「知らない星で人気者になってるのズルいんですよォォォ!!」
ズドォォォォォン!!
深紅爆裂波。
魔物百体、一気に吹き飛ぶ。
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ノベェンタ。
分析顔。
「なるほど。“独占欲由来型感情加速術式”ですね」
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「やめてくださいその分析!!」
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巨大鎧巨兵。
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最後の敵。
ノベェンタ。
黒剣を構える。
灰色雷光、天井まで走る。
「——《量子観測整合維持型終末断裂剣 “シュレーディンガー・オーバーキル”》」
バチィィィィィィッ!!
超電磁斬撃。
空間ごと、鎧巨兵両断。
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佐伯。
紅い魔力。
全開。
涙目。
でも。
笑っていた。
「——《緋天轟滅槍 “インフェルノ・ストライク”》!!」
「寂しかったんですよバカァァァァァァッ!!」
ドゴォォォォォォォン!!!!
超巨大紅蓮爆発。
迷宮全域震動。
残存モンスター。
完全消滅。
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煙。
崩壊迷宮。
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そして。
ポン。
宝箱。
二つ。
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佐伯。
目が輝く。
「えっ」
「えぇぇぇぇ!?」
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ノベェンタ。
珍しくテンション高い。
「なるほど。完全制圧ボーナスです」
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二人。
ちょっとワクワクしていた。
カパッ。
一つ目。
種。
二つ目。
卵。
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佐伯。
「……地味ですね?」
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ノベェンタ。
真顔。
「いえ」
灰色の瞳。
少し輝く。
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「こういうの、“後でめちゃくちゃ重要になるタイプ”です」
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