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『境界断ちのノベェンタ』 〜観測整合維持局 第七補正執行室 野部遠汰の場合〜  作者: nobunobuwo


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第百十四話 「文明復興というものは“壊れた建物を直す作業”ではなく、“もう一度ここで生きても良いと思える空気”を取り戻す行為です」


 ベルタリュオン星。



 第七白層都市イルミナ・セレス


 戦闘終了後。


 空。


 静かだった。


 三つの衛星。


 白銀の光。


 巨大軌道都市群。



 そして。


 破壊された空中都市。


 崩落した重力反転歩道。


 砕け散った記憶結晶建築。


 宙へ漂う光粒子。


 都市全体が、“夢の残骸”みたいだった。



 だが。


 その中央。


 ノベェンタは、普通に瓦礫を運んでいた。



「いやそこ人力なんですかぁぁぁ!?」


 佐伯、半透明通信窓越しに叫ぶ。



 ノベェンタ。


 巨大な結晶柱を担ぎながら、普通に答える。


「人類、“超能力で世界救った後に地味作業する主人公”へ異常な安心感覚えるので。あと復興、“最終的に人海戦術”強い場面わりと多いんですよ」



 ベルタリュオン人達。


 止まる。


 理解不能だった。


 つい先程。


 宇宙災害級存在を、単独で斬った男が。


 今。


 汗だくで瓦礫運んでる。


 しかも。


 普通に。



挿絵(By みてみん)



「そっち角度危ないので気を付けてください。あと文明レベル高いと逆に“手伝っていいタイミング”わからなくなる現象あるので、困った時ほど声掛け重要です」



 ベルタリュオン人達。


 感情波、乱れる。


【理解不能】


【何故手伝う】


【効率悪い】


【だが安心感がある】



 その時。


 後方。


 紫色の煙。


 爆発。


「ど、どどどどどどどどどどどぉぉぉぉぉ!!!」


 また転んだ。


 スグドモール。


 しかも今回は、脚立へ頭突きしていた。


「ぬぁぁぁぁぁっ!!」


 しかし。


 次の瞬間。


 念話。


 超高速。


【ノベェンタ殿ォォォォォ!!!!】


【感謝してもしきれぬでゴザルゥゥゥゥゥ!!!!】



 都市全域。


 紫色魔法陣、一斉展開。


 空。


 数百。


 数千。


 いや。


 数万。


 超巨大魔法陣群。


 幾何学模様。


 重力式。


 感情増幅回路。


 古代モルモール文字。


 空そのものが、魔法文明へ変わる。



 ベルタリュオン人達。


 息を呑む。



 スグドモールの杖。


 紫光。


 そして。


 初めて。


 どもらず。


 静かに言った。


【……あの“外側”は】


【拙者達モルモール文明を滅ぼした存在でゴザル】



 スグドモールの瞳。


 震えていた。


【世界が喰われたのでゴザル】


【感情も】


【文明も】


【家族も】


【全部】


 巨大魔法陣群。


 震える。


【拙者達は逃げた】


【隠れた】


【感情を捨てた】


【生き延びる為に】



 ベルタリュオン人達。


 沈黙。


 彼らの文明も、同じ道を歩き始めていた。



 スグドモール。


 涙が浮かぶ。


 半透明な頬を、紫光が伝った。


【なのに】


【ノベェンタ殿は】


【感情を捨てず】


【恐怖も抱えたまま】


【笑いながら前へ出たでゴザル】


 空。


 巨大魔法陣、発動。


【超広域文明復元術式】


【《グランド・モルモール・リビルディア》】



 瞬間。


 白銀都市全域。


 光が奔る。


 崩壊していた空中庭園。


 再構築。


 砕けた記憶結晶。


 逆再生みたいに修復。


 重力歩道。


 再接続。


 都市全域が、巨大な星みたいに輝き始める。



挿絵(By みてみん)



 ベルタリュオン人達。


 感情波、乱れる。


【感謝】


【戸惑い】


【怒り】


【安心】


【熱】


 初めてだった。


 ここまで大量感情が、都市全域へ流れるのは。



 ノベェンタは、静かに空を見上げる。


「人類、“一緒に修復した記憶”へかなり強く絆感じるので。文化祭準備とか災害復興とか、“大変だったけど妙に忘れられない時間”になりやすいんですよ」



 佐伯。


 少し照れながら、小さく笑う。


「……なんか、わかる気がします」



 その瞬間。


 スグドモール。


 ガッ!!!


 突然。


 通信窓越しの佐伯へ、土下座した。


【ツッコミの巫女殿ォォォォォ!!!!】



 佐伯。


 硬直。


「は?」



 スグドモール、超真剣。


【ノベェンタ殿の暴走妄想概念固定を正常範囲へ引き戻すその技術ッ!!】


【あれこそ文明維持の鍵でゴザルゥゥゥゥ!!!!】


【ツッコミとは即時現実修正術式だったのでゴザルかァァァァァ!!!!】



 ベルタリュオン人達。


 一斉反応。


【なるほど】


【感情暴走制御】


【概念固定補助】


【文明安定化技術】



 佐伯、青ざめる。


「ち、違いますよ!? ただの苦労人ポジションですよ私!?」



 アイン。


 通信窓越し。


 静止。


 そして。


 少しだけ。


 不機嫌。


「……佐伯主任」


「随分と」


「神聖視されていますね」



 佐伯、困惑。


「え、いや、アイン先輩なんでちょっと圧あるんですか!?」



 アイン。


 微妙に視線逸らす。


「……別に」



 佐伯。


 止まる。


「いや今ちょっと嫉妬しました!?」



 アイン、沈黙。


 耳。


 ほんの少し赤い。



 ノベェンタは、静かに頷いた。


「人類、“大切な存在が他人から高評価される”と、嬉しさと独占欲同時発生するので。恋愛感情、“独り占めしたい”と“幸せでいて欲しい”が同時存在するかなり厄介な感情なんですよ」



 佐伯、爆発。


「なんでそこで急に恋愛論始めるんですかぁぁぁぁ!!」



 その時。


 都市中央。


 巨大白銀塔。


 最上層。


 空間が、静かに開く。


 白。


 圧倒的な白。


 都市全域の波動が、一斉静止する。



【最高位観測存在接近】


【オリジン本体】


【謁見準備開始】



 ベルタリュオン全域が、緊張した。


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