表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『境界断ちのノベェンタ』 〜観測整合維持局 第七補正執行室 野部遠汰の場合〜  作者: nobunobuwo


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
111/183

第百十一話 「魔法文明というものは、“現実へ『無理です』と言われる前に『いや出来るが?』を押し通した妄想強者達の歴史”なので、最後に世界を動かすのはだいたい勢いです」


 ベルタリュオン星。



 中央感情同期管理塔。


 超高層。


 白銀。


 空へ突き刺さっていた。


 塔周囲では。


 透明な波動膜が、幾重にも脈動している。


 都市全域。


 感情同期制御中。


 静かだった。



 だが。


 今。


 空は裂けている。


 黒い亀裂。


 巨大な眼。


 宇宙規模の視線。


 “外側”。



 ベルタリュオン人達は、停止していた。


【恐怖】


【未知】


【高密度感情波】


【制御不能】


 それは。


 この文明が、最も苦手とする状態だった。



 ノベェンタは、静かに空を見上げていた。


 二振りの黒剣。


 黒い量子文字列。


 だが。


 いつもと違う。


 空気が重い。


 これは。


 “外側”でも、さらに異質。



 アインの通信窓が揺れる。


「……ノベェンタ統括」


「この反応は危険です」


「通常外側存在ではありません」



 ISS内部。


 地球を背にしたアインの瞳。


 少し緊張していた。



 その横。


 佐伯。


 半透明ウインドウ越しに叫ぶ。


「いやもう見た目がラスボスなんですよぉ!!って毎回言ってますよ!?」



 空。


 裂け目奥。


 黒い眼が、ゆっくり開く。


【発見】


【高純度感情固定体】


【ノベェンタ】


【捕食対象】



 空間が、震えた。


 ベルタリュオン都市群。


 波動制御膜。


 軋む。



 その瞬間。


 ノベェンタの脳裏へ、情報が流れ込む。


 モルモール文明。


 崩壊。


 侵食。


 感情捕食。


 世界線圧縮。


 そして。


 宇宙規模存在。


 “感情”を喰っていた。



 ノベェンタは、静かに目を細めた。


「……なるほど」


「この外側、“文明崩壊後の残骸”じゃなく、“感情エネルギー依存生命体”側ですか」



 ベルタリュオン側。


 一斉反応。


【解析速度異常】


【到達早すぎ】



 ノベェンタは、静かに続ける。


「人類、“感情”を精神論扱いしがちですが、実際かなり身体影響するので。ストレスで胃壊れるし、恋愛で脳内麻薬出るし、推し活で寿命伸びる人も居る。つまり感情、“ただの気分”じゃなく、生体エネルギー制御へ直結してる可能性普通にあるんですよ」



 佐伯。


 緊張してるのに反射でツッコむ。


「推し活を宇宙規模エネルギー理論へ繋げないでください!!」



 その瞬間。


 空間。


 ピシッ。


 黒い亀裂が、さらに拡大。


 巨大な“何か”が、降りてくる。


 脚。


 長い。


 関節。


 多い。


 目。


 大量。


 宇宙生物だった。



 しかし。


 ベルタリュオン文明様式に、どこか似ている。


 いや。


 似せている。


【モルモール技術模倣体】


【波動侵食開始】



 都市全域。


 白銀光が黒く濁り始める。


 ベルタリュオン人達。


 動揺。


【感情波増大】


【制御不能】



 その時だった。


 空間奥。


 突然。


 紫色の魔法陣。


 いや。


 違う。


 “落書き”みたいだった。


 歪。


 ズレてる。


 でも。


 異常に圧が強い。



 次の瞬間。


 ドゴォォォォン!!!


 空間爆裂。


 煙。


 紫電。


 変な光。


 何かが、転がり出てきた。


 ローブ。


 杖。


 魔導書。


 長耳。


 ボサボサ銀髪。


 小柄。


 完全に。


 魔導師だった。



 しかも。


 盛大に顔面着地。


「ど、どどどどどどどどどど……!!」


 起き上がろうとして。


 ローブ踏む。


 また転ぶ。


「ぬぁっ!!」


 杖が飛ぶ。


 魔導書が開く。


 爆発。


「ふ、ふふふふふふ不本意でご、ご、ごじゃ……!!」


 完全に事故だった。


 しかし。


 次の瞬間。


 念話。


 超流暢。


【拙者すぐどもるのでゴザルが、念話なら少しはちゃんとちゃべれるでゴザルよ!!!!】



挿絵(By みてみん)



 佐伯。


 一秒停止。


「“ちゃべれる”って言ってる時点で駄目なんですよ!!」



 スグドモール。


 ショック。


【そ、そこは気にしているので優しくしてほしいでゴザルゥゥゥ!!!!!】



 ベルタリュオン人達。


 完全停止。


【感情密度】


【異常】


【何故この存在】


【騒音なのに安心感がある】



 スグドモールは、慌てて杖を拾う。


 しかし。


 また落とす。


「ち、ちちちち違うのでご、ご、ごじゃる!! これは拙者が慌てている訳ではなく宇宙構造側が滑りやすくぅぅぅ!!」


 念話。


【完全に慌ててるでゴザルゥゥゥゥ!!!!】



 佐伯、頭抱える。


「念話の方がうるさいんですよこの人!!」



 その時。


 スグドモール。


 突然。


 ノベェンタを見る。


 長い沈黙。


 そして。


 震えた。


【な、何故でゴザル……?】


【何故そんな速度で理解可能なのでゴザルか……?】



 ベルタリュオン側。


 一斉静止。



 ノベェンタだけが。


 外側。


 モルモール。


 感情捕食。


 文明侵食。


 全部。


 異常速度で理解していた。



 ノベェンタは、静かに空を見上げる。


「人類、“妄想”で他人の感情を疑似体験できるので」


 静かな風。


 白銀都市。


「小説読む。映画観る。ゲームやる。失恋ソング聴く。つまり人類、“自分じゃない人生”を脳内シミュレーションする能力かなり高いんですよ。あと自分の場合、“他世界人格”が大量融合してるので。“他人視点”への抵抗が最初からかなり薄い」



 スグドモール。


 硬直。


【ま、まままままさか】


【多世界人格融合個体でゴザルか……!?】



 ベルタリュオン人達。


 空気揺れる。


【理論上のみ存在】


【成功例未確認】


【危険指定概念】



 ノベェンタは、少しだけ笑った。


「人類、“自分一人だけで出来てる”と思い込みがちですが、実際かなり他人影響で人格形成されるので。親、友人、作品、失恋、黒歴史、推し。全部混ざって“今の自分”になる。つまり人格、“単独存在”というより“大量経験の集合体”寄りなんですよ」



 スグドモール。


 震え始める。


【そ、それを自然発生で成立させる地球文明怖すぎるでゴザルゥゥゥゥゥ!!!!!】



 その瞬間。


 空。


 黒い眼。


 さらに開く。


【高濃度感情固定存在】


【捕食優先度上昇】


【ノベェンタ回収開始】


 宇宙そのものが、こちらを見ていた。



 スグドモール。


 青ざめる。


「ひ、ひぃっ……」


 念話。


【アレは駄目でゴザルゥゥゥゥゥ!!!!】


【拙者が昔いた宇宙ですら“出たら文明終わる枠”でゴザルゥゥゥ!!!!】



 その瞬間。


 ズドォォォォォン!!!


 黒い触腕みたいな何かが。


 空間の裂け目から飛び出した。



 そして。


 スグドモールだけを。


 ピンポイントで。



 蹴った。



「ぬぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」


 直撃。


 魔導師。


 横回転。


 三回転。


 七回転。


 十四回転。


 杖。


 飛ぶ。


 ローブ。


 絡まる。


 魔導書。


 爆発。


「ご、ごござござござござござござるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるる〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」


 流れ星みたいに。


 彼方へ飛んでいった。


 小さくなる。


 さらに小さくなる。


 見えなくなった。



 静寂。



 ベルタリュオン。


 停止。



 アイン。


 停止。



 ノベェンタ。


 停止。



 そして。



 佐伯。


 頭を抱える。


「何で新キャラ出てきて三分で退場してるんですかぁぁぁぁぁぁ!!!!!」



 空。


 黒い眼。


 都市。


 侵食。



 そして。


 どこか遠くから。


【た、助けてほしいでゴザルゥゥゥゥゥゥ!!!!】


 まだ聞こえた。



 佐伯。


「生きてるんかい!!」



 次の瞬間。


 空がさらに裂ける。


【捕食開始】


 ベルタリュオン全域へ。


 黒い波が広がった。



 ノベェンタは。


 静かに剣を構える。


「興味深いですね」


 そして、空を見上げた。


「かなり面倒そうです」



 外側の眼が。ゆっくり笑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ