第百話 「魔法使いというものは“妄想を現実へ固定し続ける概念職”なので、人類は信じ切った瞬間に世界を書き換え始めます」
午後七時二十二分。
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東央マテリアル。
地下第三層。
特殊対策部。
静かだった。
珍しく。
いや。
静かすぎた。
理由。
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アイン。
ホワイトボード前。
真顔。
完全に。
講義モード。
「本日、“魔法”について説明します」
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佐伯、嫌な予感。
「始まったぁ……」
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ホワイトボード。
そこへ書かれていた。
【魔法=概念固定現象】
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ノベェンタは、静かにコーヒーを飲む。
「人類、“魔法使い”かなり好きなので。古代呪術師、陰陽師、魔女、賢者、仙人。この辺、文明違ってもだいたい存在する。つまり人類、“現実法則を理解し操作する存在”へ本能的憧れあるんですよ」
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キノピー。
黒猫状態。
机の上。
「にゃ〜♡」
完全に授業受ける気ゼロ。
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アインは、静かに空間へ術式を展開した。
白い光。
球体形成。
浮遊。
「ベルタリュオン文明において、“魔法”は古代地球文明由来概念と定義されています」
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佐伯、首傾げる。
「え? 魔法ってファンタジーじゃ……」
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ノベェンタは、静かに頷いた。
「ファンタジーです。ですが問題は、“人類が数千年単位で魔法を妄想し続けた”事なんですよ。つまり“強く願われた概念”って、世界線側へ定着し始める。妄想密度が一定値超えると、“存在してないのに存在影響だけ発生する”現象起きる場合あります」
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ホワイトボード追加。
【妄想】
↓
【信仰】
↓
【概念固定】
↓
【現象化】
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佐伯、顔引きつる。
「怖いんですよ理屈が」
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アインは、静かに続けた。
「魔法において最重要なのは、“イメージ固定力”です」
空間へ、炎が出現する。
揺れる。
熱い。
本物だった。
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佐伯、ちょっと下がる。
「うわっ!?」
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アイン。
静か。
「火球術式に必要なのは、“火を理解する事”ではありません」
「“燃える”を疑わない事です」
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ノベェンタは、少しだけ目を細めた。
「人類、“思い込み”かなり強い生物なので。スポーツも勉強も恋愛も、“自分は出来る”思ってる時と、“無理”思ってる時で脳出力変わる。つまり意識、“現実へ影響与えてる”んですよ。魔法使いは、それを極端に尖らせた存在です」
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その時。
リゼが、静かに水晶を撫でる。
「魔法って、“世界へお願いする技術”じゃないのよね。“こうなる”を先に決め切る感覚なの。“叶うかな?”じゃ弱い。“もう叶ってる”まで固定する。引き寄せも本来そこに近いのよ。人類、“不安”で未来を観測しすぎるから、現実側も揺れやすくなるの」
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佐伯、遠い目。
「九条さんの話、全部本当に聞こえてくるから怖いんですよ……………えっ本当なの?…」
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アインは、静かに頷いた。
「魔法使いには偶然が存在しません」
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空気。
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少し変わる。
「彼らは、“結果”を先に概念固定する」
「だから術式成功を“偶然”と認識しない」
「成功するまで、“成功した世界”を観測し続ける」
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ノベェンタは、静かにコーヒーを置いた。
「人類、“魔法使い”へ憧れる理由かなり単純なので。“自分の意思で世界変えたい”んですよ。本来人類、理不尽多すぎる。病気、災害、失恋、労働、孤独。この辺、“努力だけじゃどうにもならない”が普通にある。だから逆に、“意思だけで現実変えられる存在”へ極端にロマン感じる」
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その瞬間。
空間が揺れた。
黒い文字列。
【現実を書き換えろ】
【世界は弱い】
【妄想を固定しろ】
【概念化開始】
空気が軋む。
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佐伯、即座に構える。
「うわっ嫌な流れ来た!!」
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空間中央。
現れる。
巨大ローブ存在。
無数の目。
無数の魔法陣。
無数の詠唱。
【想像しろ】
【信じろ】
【現実を塗り替えろ】
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空間そのものが、変質し始める。
壁が森になる。
床が星空になる。
重力が揺れる。
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佐伯、半泣き。
「職場がファンタジー侵食されてるんですよ!!」
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アインは、静かに解析する。
「……高密度妄想概念体」
「“魔法使い”そのものへ憧れ続けた人類感情集合です」
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巨大存在が、両手を広げる。
【現実は不自由】
【ならば創れ】
【理想世界を】
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その瞬間。
ノベェンタが、静かに前へ出た。
黒い量子文字列。
二本の黒剣。
顕現。
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【《因果観測黒剣・ネオアカシック》】
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キノピーの声。
「にゃははは〜♡ 魔法使い案件にゃ〜♡」
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ノベェンタは、静かに巨大存在を見る。
「人類、“現実嫌だから妄想する”だけじゃないので。“こうだったらいいのに”を積み重ねた結果、文明進化してる場合普通にある。空飛びたい→飛行機。遠くと話したい→電話。病気治したい→医療。つまり妄想、“文明の先行プロトタイプ”なんですよ」
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巨大魔導存在。
空間侵食加速。
【ならば】
【全て妄想へ変えろ】
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その時。
ノベェンタは、少しだけ笑った。
「ですが人類、“現実へ帰ってくる”から面白いので」
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「妄想だけだと壊れる」
「現実だけでも壊れる」
「だから人類、“行ったり来たり”してるんですよ」
二本の黒剣。
交差。
黒い量子文字列が、空間へ走る。
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「《双因果観測概念固定術式・ネオアカシック・アルティメット・イマジナリィ・オーバーライト》」
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黒い閃光。
空間固定。
侵食停止。
森が消える。
星空が閉じる。
重力安定。
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巨大魔導存在が、静かに揺れる。
【……何故】
【現実へ戻る】
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ノベェンタは、静かに答えた。
「人類、“誰かと飯食う現実”結構好きなので」
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巨大存在。
少しだけ、揺らぐ。
【……温かい】
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そして。
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消滅。
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静かな対策部だけ残った。
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その直後。
野村部長。
会議室扉開ける。
「お疲れ様〜! 差し入れドーナツ買ってきたよぉ〜!」
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大量。
甘い匂い。
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佐伯、崩れ落ちる。
「結局こういうので現実へ戻されるんですよぉぉぉ!!」
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キノピー。
即ドーナツ確保。
「にゃ〜♡」
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アインは、少しだけ考えた後。
小さく呟いた。
「……なるほど」
「魔法使いとは」
「“妄想を信じ切れる人類”」
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ノベェンタは、静かに頷いた。
「そして人類、“信じたもの”で結構未来変えるので」
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