表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『境界断ちのノベェンタ』 〜観測整合維持局 第七補正執行室 野部遠汰の場合〜  作者: nobunobuwo


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
100/183

第百話 「魔法使いというものは“妄想を現実へ固定し続ける概念職”なので、人類は信じ切った瞬間に世界を書き換え始めます」


 午後七時二十二分。



 東央マテリアル。


 地下第三層。


 特殊対策部。


 静かだった。


 珍しく。


 いや。


 静かすぎた。


 理由。



 アイン。


 ホワイトボード前。


 真顔。


 完全に。


 講義モード。


「本日、“魔法”について説明します」



 佐伯、嫌な予感。


「始まったぁ……」


⸻ 


 ホワイトボード。


 そこへ書かれていた。


【魔法=概念固定現象】



 ノベェンタは、静かにコーヒーを飲む。


「人類、“魔法使い”かなり好きなので。古代呪術師、陰陽師、魔女、賢者、仙人。この辺、文明違ってもだいたい存在する。つまり人類、“現実法則を理解し操作する存在”へ本能的憧れあるんですよ」



 キノピー。


 黒猫状態。


 机の上。


「にゃ〜♡」


 完全に授業受ける気ゼロ。



 アインは、静かに空間へ術式を展開した。


 白い光。


 球体形成。


 浮遊。


「ベルタリュオン文明において、“魔法”は古代地球文明由来概念と定義されています」



 佐伯、首傾げる。


「え? 魔法ってファンタジーじゃ……」



 ノベェンタは、静かに頷いた。


「ファンタジーです。ですが問題は、“人類が数千年単位で魔法を妄想し続けた”事なんですよ。つまり“強く願われた概念”って、世界線側へ定着し始める。妄想密度が一定値超えると、“存在してないのに存在影響だけ発生する”現象起きる場合あります」



 ホワイトボード追加。


【妄想】



【信仰】



【概念固定】



【現象化】



 佐伯、顔引きつる。


「怖いんですよ理屈が」



 アインは、静かに続けた。


「魔法において最重要なのは、“イメージ固定力”です」


 空間へ、炎が出現する。


 揺れる。


 熱い。


 本物だった。



 佐伯、ちょっと下がる。


「うわっ!?」



 アイン。


 静か。


「火球術式に必要なのは、“火を理解する事”ではありません」


「“燃える”を疑わない事です」



 ノベェンタは、少しだけ目を細めた。


「人類、“思い込み”かなり強い生物なので。スポーツも勉強も恋愛も、“自分は出来る”思ってる時と、“無理”思ってる時で脳出力変わる。つまり意識、“現実へ影響与えてる”んですよ。魔法使いは、それを極端に尖らせた存在です」



 その時。


 リゼが、静かに水晶を撫でる。


「魔法って、“世界へお願いする技術”じゃないのよね。“こうなる”を先に決め切る感覚なの。“叶うかな?”じゃ弱い。“もう叶ってる”まで固定する。引き寄せも本来そこに近いのよ。人類、“不安”で未来を観測しすぎるから、現実側も揺れやすくなるの」



 佐伯、遠い目。


「九条さんの話、全部本当に聞こえてくるから怖いんですよ……………えっ本当なの?…」



 アインは、静かに頷いた。


「魔法使いには偶然が存在しません」



 空気。



 少し変わる。


「彼らは、“結果”を先に概念固定する」


「だから術式成功を“偶然”と認識しない」


「成功するまで、“成功した世界”を観測し続ける」



 ノベェンタは、静かにコーヒーを置いた。


「人類、“魔法使い”へ憧れる理由かなり単純なので。“自分の意思で世界変えたい”んですよ。本来人類、理不尽多すぎる。病気、災害、失恋、労働、孤独。この辺、“努力だけじゃどうにもならない”が普通にある。だから逆に、“意思だけで現実変えられる存在”へ極端にロマン感じる」



 その瞬間。


 空間が揺れた。


 黒い文字列。


【現実を書き換えろ】


【世界は弱い】


【妄想を固定しろ】


【概念化開始】


 空気が軋む。



 佐伯、即座に構える。


「うわっ嫌な流れ来た!!」



 空間中央。


 現れる。


 巨大ローブ存在。


 無数の目。


 無数の魔法陣。


 無数の詠唱。


【想像しろ】


【信じろ】


【現実を塗り替えろ】



 空間そのものが、変質し始める。


 壁が森になる。


 床が星空になる。


 重力が揺れる。



 佐伯、半泣き。


「職場がファンタジー侵食されてるんですよ!!」



 アインは、静かに解析する。


「……高密度妄想概念体」


「“魔法使い”そのものへ憧れ続けた人類感情集合です」



 巨大存在が、両手を広げる。


【現実は不自由】


【ならば創れ】


【理想世界を】



 その瞬間。


 ノベェンタが、静かに前へ出た。


 黒い量子文字列。


 二本の黒剣。


 顕現。



【《因果観測黒剣・ネオアカシック》】



 キノピーの声。


「にゃははは〜♡ 魔法使い案件にゃ〜♡」



 ノベェンタは、静かに巨大存在を見る。


「人類、“現実嫌だから妄想する”だけじゃないので。“こうだったらいいのに”を積み重ねた結果、文明進化してる場合普通にある。空飛びたい→飛行機。遠くと話したい→電話。病気治したい→医療。つまり妄想、“文明の先行プロトタイプ”なんですよ」



 巨大魔導存在。


 空間侵食加速。


【ならば】


【全て妄想へ変えろ】



 その時。


 ノベェンタは、少しだけ笑った。


「ですが人類、“現実へ帰ってくる”から面白いので」



「妄想だけだと壊れる」


「現実だけでも壊れる」


「だから人類、“行ったり来たり”してるんですよ」


 二本の黒剣。


 交差。


 黒い量子文字列が、空間へ走る。



「《双因果観測概念固定術式・ネオアカシック・アルティメット・イマジナリィ・オーバーライト》」


挿絵(By みてみん)



 黒い閃光。


 空間固定。


 侵食停止。


 森が消える。


 星空が閉じる。


 重力安定。



 巨大魔導存在が、静かに揺れる。


【……何故】


【現実へ戻る】



 ノベェンタは、静かに答えた。


「人類、“誰かと飯食う現実”結構好きなので」



 巨大存在。


 少しだけ、揺らぐ。


【……温かい】



 そして。



 消滅。



 静かな対策部だけ残った。



 その直後。


 野村部長。


 会議室扉開ける。


「お疲れ様〜! 差し入れドーナツ買ってきたよぉ〜!」



 大量。


 甘い匂い。



 佐伯、崩れ落ちる。


「結局こういうので現実へ戻されるんですよぉぉぉ!!」



 キノピー。


 即ドーナツ確保。


「にゃ〜♡」



 アインは、少しだけ考えた後。


 小さく呟いた。


「……なるほど」


「魔法使いとは」


「“妄想を信じ切れる人類”」



 ノベェンタは、静かに頷いた。


「そして人類、“信じたもの”で結構未来変えるので」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ