前進
2025.3.5 修正しました
翌日、シオンがメイドを連れて部屋に来た。
「オリヴィア・エバンスです。よろしくお願いいたします」
黒色で、肩まである長さの髪を一括りにしている、小柄な女の子という印象だ。
「今日からルクリアの従事者となるオリヴィアだ。何か困ったことがあればオリヴィアに伝えれば対応してくれる」
従事者など付けずとも自分で生活出来るが、恐らくそれは見越したうえで、『王宮がつけた監視役』といったところだろう。
「承知しました。何か不便があればオリヴィアさんに頼むようにします」
「私は公務があるのでここで失礼する。オリヴィア、後のことは頼んだ」
「かしこまりました、シオン様」
彼の、本当の目的を知りたい。監視を付けてまで私を傍に置く意味はなんなのだろう。
シオンを見るたびに心がズキズキして、まともに顔を見れなくなっていた。
幼いころから恋焦がれていた相手の顔を見れなくなるなんて、あの頃の私には想像もしていなかった。
「ルクリア様。改めて、本日より従事者を務めさせていただく、オリヴィア・エバンスと申します。何かございましたらいつでもお申し付けください」
「よろしくね、オリヴィアさん」
「私はメイドの身分ですので敬称は不要です。オリヴィアとお呼びください」
「分かったわ。よろしくね、オリヴィア。基本的に自分の事は自分で出来るのだけれど…そうね、今はまだ傷口が塞がっていないから動けなくて…。それに、私は王宮内を自由に行き来できないから、食事の用意や湯浴みの準備はお願いしたいわ」
「承知いたしました。旦那様からも同様の内容を請け負っておりますので、微力ながら努めさせていただきます。それでは、本日の朝食をお持ちいたしますので、しばらくお待ちください」
ここ数日、食事が嬉しいだなんて前向きに考える余裕はなかった。何より腹部を負傷しているのだからまともな食事は出ないし、気持ち的にも受け入れる事が出来なかった。
けれど、いつまでもこんな生活ではいられない。私は王家の人間に名を連ねるようになる者として、一刻も早く回復して公務に努めなければならない。
現在、国王が不知の病にかかって、政治的活動が出来ない状況となっている。その穴埋めとしてシオンが動いているが、国王の病については公爵家までの貴族にしか通達されていないため、いつまでも国王が公に出てこない状態が続けば誰であっても不信感を覚える。他国からの侵略を許すきっかけになってしまう可能性だってある。
おそらく、皇太子殿下の婚約を公にすることによぅて国王陛下の退位と皇太子の即位が近いと国民に向けて暗喩するのが彼の目的の一つとしてあるのだろう。
「生き永らえたのだから、せめて出来ることはしないとね…私があの人に出来ることはそれだけだわ」
ルクリアにとっての『ルクリア・スターチス』とは、どこまで行っても『愛する男を殺そうとした者』である事に変わりはなく、その心に永遠に罪を刻み続けることとなる。
一旦ここで更新をストップさせていただきます。
2025/3上旬には続きを出せるようにがんばります!




