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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その遺跡の秘宝が何だったのかを彼らは知らない
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そのトラップを踏んだのが誰か、彼らは知らない

 アルセは楽しげに踊りだした。

 ミイラ少女は釣られて踊りだした。

 ミイラ少女は不思議な踊りを踊った。

 クーフは混乱した。


 結果を言えば、アルセに感応したように踊りだしたミイラ少女の動きが理解不能でクーフが助けてほしそうにネッテたちを見たというべきだろうか。

 混乱というより困惑である。

 ふふ、アルセ可愛い……って現実逃避してる場合じゃないよね。


 ミイラ少女の踊りはなんていうか、ゾンビがカクカク踊るような不思議な踊りだった。

 決して上手くはないのだが、なぜか見てしまう。

 なんか本人が楽しそうだからいいのかもしれないけどね。


「あ、あの、クーフさん、そのミイラは安全そうですか?」


「分からん。記憶にないミイラだし、喋りもしないのではどんな思考を持って踊っているか理解できん。忘れているだけかもしれんが……知り合いかどうかもわからん」


「そう。でも、アルセが楽しそうにしてるから安全と思っていいかもしれないわね」


 アルセを過信しないでネッテさん。こいつは何も考えてないだけですよっ。


「とりあえず、問題はまだ閉じ込められたままということね。向こうはあのミイラ女が叩き壊してくれたから開いてるけど、向こうから来たリエラとしてはどう?」


「向こうは行き止まりですよ。カインさんたちの方が多分正しい道だと思います」


「じゃあ戻るしかないか。どうしよう。多分だけど向こうから来た相手を倒せば開くのよね。となると……」


 とネッテがリエラを見る。

 つまり、リエラ側を開くにはリエラやアルセ、僕とミイラ女を倒せば隔壁が上がる。逆に僕らが元の場所に戻るにはネッテとユイア、そしてクーフを倒さなければ隔壁が反応しない。と言う事なのだろう。面倒な罠である。

 けど、もしもパーティーが分断された状態で左右から合流した場合、血で血を洗う闘いを繰り広げるのは冒険者殺しには最適だろう。


 ただし救いはある。

 それが部屋の中央の壁に位置している柩だ。

 おそらくここにいるミイラを倒す事が出来れば双方の隔壁が開く仕組みになっているのだろう。


 つまり、今回僕らが行えるのは、ネッテたちを倒すか、そこで奇妙な鶴の舞いを演じているミイラ少女を倒すしかない。

 けど、なんかアルセの遊び友達みたいになってるミイラ少女を倒せと言われて、僕が倒せる訳が無かった。

 それはリエラたちも同じなのだろう。困った顔をしている。


「安心しろ。先程のミイラ女の御蔭で隔壁が我の一撃でも破壊出来ることはわかった」


 あ、そういえば確かに。

 ということは問題は既に解決しているのか。

 ミイラ少女が敵か味方かが問題になるところだね。

 あの子は何を考えているのだろうか? 


 コリータさんでも居ればステータス確認で多少は分かったかもだけど、どうなんだろう?

 って、またなんか凄いことに……

 ちょっと眼を離した隙にアルセとミイラ少女が手を掴み合ってワルツを踊るようにクルクル回っていた。デスマスクをしているので表情が読めないけど凄く楽しそうです。


「危険は……無いような気がしてきました」


「もう、何でもアリねアルセちゃん……」


「ふむ。ではさっさと合流してしまおう」


 クーフは柩を抱え、ミイラ女の柩まで肩に引っ提げると、自分の柩を大きく振り被って隔壁へと叩きつけた。

 凶悪な音と共に粉砕される隔壁。

 まさに一撃必殺の鈍器でした。


「フム。これなら攻略も楽になりそうだ。最深部まで行けるか?」


 音に気付いて踊りを止めたアルセとミイラ少女がやって来る。仲良く手を繋いでいるのがほほえましいと言うかなんというか。本当に友人になったのかアルセ?

 いや、待て。ミイラ少女の逆の腕にはあの武骨な工具がしっかり握られている。

 アルセ、友達は選ぼう。選んだほうがいいよ。絶対ヤバイよ!


 なんて僕の心配は余所に、彼女は無言のまま僕らに付いて来たのだった。

 どうやら一応仲間みたいに同行はしてくれるようだ。

 皆まだ警戒はしているみたいだけど、一番後ろをアルセと歩く少女に、次第危機感を薄れさせていた。

 ちなみに、彼女が入っていた柩は皆が出た後しっかりポシェットに回収しておきました。アイテムボックスは貴重ですから。あのマミィさんの遺体も回収し……やめよう。なんか燃えて炭化してる。ポシェットに入れると呪われそうだ。


 またアルセが勝手に仲間を引き入れたようです。

 大丈夫かな。いや、アルセが引き入れて来たのはほら、バズ・オークやミミック・ジュエリー、元番長とそれなりにイイ奴だったしこの子も……カチッ。


 ……ん?

 不意に足元が無駄に沈みこんだのに気付いて足に視線を向ける。

 何か普通の床より僕の足部分が沈み込んでいる。

 ……罠です♪


 パカリと開かれた廊下。

 僕の身体が浮遊感を覚える。

 すぐ横にいたアルセとミイラ少女が浮遊感に気付いてあれ? っと同時に首を傾げながら落下を開始した。


「そうなんですよ。アルセのせいで酷い目に……って、アルセェェェェェェッ!?」


 すぐ前を歩いていたリエラとユイア。

 突然アルセの気配が消えて振り向いた彼女たちは、落下して行くアルセの笑顔をみて悲鳴を上げていた。

 ごめん、今度は僕のせいだ。

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