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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その遺跡の秘宝が何だったのかを彼らは知らない
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その少女たちの思考を彼らは知らない

 膠着状態から、おおよそ30分。

 僕らはただただ動かないクーフ達を見守るしかなかった。

 アルセがもう暴走しないように、今はリエラがしっかりと抱きしめ拘束している。


 全く、もう柩開けちゃダメだよアルセ。

 クーフみたいに仲間になってくれるのばっかりじゃないんだから。

 というか……早く決着付かないかなぁ……


 さすがのクーフも同等の実力を持つだろう二人を相手取るのはきついようで、両方の挙動を警戒している。

 マミィの方もそうだ。どうも全員が全員仲間かどうかすら分からない存在のようだ。

 つまり、金曜の怪談にでてくる化け物のような少女の動向が全ての勝敗を決めると言っても良かった。


 その少女はといえばチェーンソウを構えながら何を考えているのか分からない顔でぼーっとしている。

 いつスイッチが入って襲ってくるかすらわからないので警戒しているんだけど、どうなんだろう? 闘いになるんだろうか?


「って、アルセ!!」


 リエラの驚いた声。

 何だと思えばまたです。

 マーブル・アイヴィを巧みに操りリエラの拘束を脱出すると、とことことこっとチェーンソウを構える少女のもとへと駆け寄って行く。


 危ないっ、危ないよアルセ!?

 僕たちに戦慄が走る。

 そんなアルセが近くまで来た少女の反応はといえば、視線をそちらに一瞥しただけである。


 まさに歯牙にもかけない態度に、僕は少し安堵した。

 問答無用で工具がアルセを襲わなくて良かった。

 なんとかフォローできる間合いに来た僕はアルセの横に辿りつくといつでもポシェットからアルセソードを取り出せるように待機する。


 が、アルセは何故かそんな僕にだっこをせがんできた。

 なぜここで?

 虚空に両手を伸ばすアルセを見たネッテたちも何をしてるんだ? といった顔をしている。


 全く、本当にアルセは自由だね。

 僕はお姫様のお望み通り抱っこしてあげる。

 宙に浮くアルセイデス。

 こら、ユイア、アルセが、アルセが飛んだとか言わない。

 どっかの山の少女じゃないんだからはしゃがない。


 そしてアルセは少女に近づくように指示してくる。

 僕は警戒しながらも少女の背後に近付く。

 振りかえるなよ。と思いつつ、アルセがしたいようにさせてしまう親馬鹿な僕だった。


 そしてミイラ少女の頭上に辿りついたアルセが行ったのは、少女の頭を撫でるという無謀行為でした。

 何がしたいのアルセさん!?

 突如頭上に刺激を感じたらしい少女が見上げてくる。

 デスマスクの御蔭でミイラ化した顔ではなかったがちょっと怖いです。

 しばらく見つめた後、どうでもいいと言うように再び視線を前に戻す。


 が、マミィとクーフはそうはいかなかった。

 少女の意識がアルセに逸れた次の瞬間、二人は緊張の糸が切れたかのように互いに動き出し、中央で柩をかち合わせていたのである。

 漁夫の利を奪える位置に来たミイラ少女だったが、彼女は全く動かない。

 そしてマミィとクーフも力が拮抗するようにそのまま鍔迫り合いならぬ柩競り合いになっていた。


「今ダ! マミィに魔法を!」


 クーフの声に慌てて詠唱に入るネッテとユイア。

 遅すぎる。

 だから、彼女の動きは一番速かった。


 一発の乾いた銃声が轟く。

 弾を込め狙いを付け引き金を引く。

 慌ててスペルミスをするような詠唱を行うよりも断然速い魔銃の一撃。

 リエラの判断が一番早かったのである。


 少しずれていたが、即座にクーフが飛び去りマミィの身体に弾丸が直撃。

 刹那、包帯を燃焼促進剤にして一気に燃え上がるマミィ。

 リエラが咄嗟に選んだのはラ・ギライアの魔法弾だった。


「やったか!?」


 それフラグですクーフさんっ。


「クーフ気を付けて! あいつまだ動くわ!」


 マミィからインフェルノへと進化した? 女性型ミイラは燃える人となり動き出す。

 柩を振り被り、燃える身体など関係ないと腰を落とした。

 渾身の一撃が来る。

 クーフが思わず覚悟したその瞬間。


 ギュイイイイイイイイイイイイイイイイ――――ッ


 ついにミイラ少女が動いていた。

 燃え盛るマミィに躊躇なくチェーンソウを叩きつける。

 物凄い音がしてインフェルノの身体が二つに引き裂かれて行った。

 なにコレ、怖い。


 二つになった燃焼物が地面に転がるのを見届け、少女はチェーンソウのエンジンを切る。そして相変わらず何を考えているのか分からない顔でクーフを見た。

 さすがのクーフも相手の考えが読めないようでうぐっと呻いただけで動きを止めてしまう。

 そんな中、僕の腕から降りたアルセが二人の真ん中に歩いて行くと、ミイラ少女に咲き誇る大輪のような微笑みを浮かべた。


 そしてしばらく、二人は何かを通じ合わせたように突然踊りだした。

 何を考えているのか分からないお子様が二人に増えたようです。

 ……なにコレ?

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