第28話 前編 白い法衣の男
階段の上から、数十の松明が、一斉に灯った。
白い法衣、銀の十字架。ガルシアは、穏やかな笑みを浮かべたまま、ゆっくりと階段を降りてくる。背後には、揃いの白い軽鎧の聖騎士が、二十人ほど並んでいた。
「ローデン。私の、可愛い部下よ」
「……司祭長」
「軟禁の、命令は、解いていなかったはずだが」
「命令に、従う義理が、なくなりました」
ローデンは、剣を抜いた。その切っ先は、わずかに、震えていた。
「マルクの、報告が、すべて、聞こえましたよ。あなたが、青印と、組んでいることも」
「ほう。録音、とやらか」
ガルシアの視線が、俺の腰の機械へ、滑った。
「興味深い。やはり、異界の道具は、素晴らしい。……『黒き板の持ち主』よ」
「何の、用だ」
「お迎えに、上がりました」
老司祭長は、両手を、広げた。
「板を、お渡しください。それは、本来、教会が、守るべき、聖遺物です」
「断る」
「では、力ずくに」
ガルシアが、指を、鳴らした。
聖騎士たちが、一斉に、剣を抜く。
シルファが、長老を、背に庇って、弓を構えた。
「レイジ。逃げ道は」
「後ろの階段だ。だが、ティオが」
「ホイッスルの、合図は、三回。誰かが、近づいてる」
その時、ガルシアが、愉快そうに、笑った。
「ああ、あの少年ですか。エルフの、小さな、鼠」
「……何を、した」
「保護しました。丁重に」
階段の上から、二人の騎士が、ティオを、連れてきた。
少年は、両手を縛られ、口に、布を噛まされていた。目は、大きく見開かれ、涙が、頬を伝っている。
「ティオ!」
シルファの、悲鳴が、地下に、響いた。
「卑怯者」
「戦術です。……さあ、取引をしましょう」
ガルシアは、少年の肩に、手を置いた。
「板を、渡せば、この子は、返します。長老も、里の者も、すべて、解放しましょう」
「信用、できない」
「信用の、必要は、ありません。あなた方は、選ぶしか、ないのです」
その手が、少年の細い首に、そっと、触れた。
静寂が、落ちた。




