第21話 前編 雪の峠
宿場を発ってから、二日。
道が、徐々に、上り坂になった。朝晩の空気が、骨まで凍みる。
「息が、白い」
ティオが、手のひらに、はあ、と息を吐いて、遊んでいる。
「カイロを、貼っておけよ。風邪を、引かせたくない」
「はーい」
馬車の窓を、細かな白いものが、叩き始めた。
「……雪だ」
「早いですね。まだ、霜月の初めなのに」
セレスが、顔を曇らせた。
「北方では、峠の雪が、早いのです。今年は、特に」
御者の男が、困り顔で、振り返った。
「お客さん。この先の峠は、積雪で、馬車では通れねえかもしれません。麓の宿場で、様子を見ましょうや」
「待ってられない。満月まで、あと、二十日あまりだ」
「しかし」
「歩けるところまでは、行く。無理なら、戻る」
御者は、渋い顔で頷いた。
峠の手前の、小さな村で、馬車を降りた。そこから先は、徒歩だ。
板で、防寒着を、人数分買った。
『防寒ジャケット 防水 銅貨 8 枚×4』
『ニット帽 銅貨 1 枚×4』
『防寒手袋 銅貨 2 枚×4』
『スノーブーツ 銅貨 6 枚×4』
シルファは、ニット帽を、耳が出るように被った。
「耳が、冷たい」
「ちょっと、貸してみろ」
予備のイヤーマフを、買って、彼女の耳に、当てがった。銀の髪の脇に、白いもこもこが、ちょこんと乗る。
「…………」
「どうだ」
「……あったかい。でも」
彼女は、鏡代わりの、水筒の反射を覗き込んで、顔を赤くした。
「ちょっと、恥ずかしい。可愛すぎるわ」
「似合ってる」
「だから、そういうことを」
「事実だ」
「もう!」
ティオが、横で、くすくす笑っていた。




