第16話 前編 青い柱の下で
青白い光の柱は、数十秒で細く消えた。
「……あれが、祠の方角」
シルファが、帽子のない頭を、光の消えた空へ向けた。長い耳が、わずかに前へ傾いている。
「ここから、徒歩で一時間くらい。里の者しか知らない、獣道があるわ」
「案内を頼む」
「任せて」
彼女は迷いなく歩き出した。三年も離れていたのに、足は、倒木も岩も、勝手に避けていく。
「止まって」
十分ほど進んだところで、小さく手を上げた。
「どうした」
「足跡。新しい。靴底が、里のものじゃない」
屈み込んで、湿った土を指でなぞる。
「人数は三人。重い荷を担いでる。祠のほうへ向かってるわ」
「青印か」
「たぶん。……それと」
彼女は、足跡の脇の草を、そっと持ち上げた。
「ここに、血が落ちてる。乾いてない」
背筋が冷えた。
「急ごう。ただし、音を立てないで」
祠の手前で、シルファが、木の陰に身を寄せた。
霧が薄れた先に、円形の小さな広場があった。中央には、苔むした石の泉。その奥に、岩肌をくり抜いた、低い祠の入口が見える。
その前に、黒い外套の男が三人、立っていた。
右手の甲に、青い刺青。足元には、布に包まれた拳大の石が置かれている。表面から、脈打つように青い光が漏れていた。
「あれは」
「青晶石。魔力を吸って光る、鉱石よ。里の宝物庫にあったはず」
「奪われたのか」
「ええ。たぶん、あの夜に」
男たちのそばに、もう一人、地面に座り込んでいる影があった。
細い体。小さな、尖った耳。
エルフの少年だった。両手を縄で縛られ、顔には、殴られた痕がある。
「……っ!」
シルファが、息を呑んだ。
「ティオ。里の、いちばん年下の子」
声が、震えている。
「生きてた」
「待て。飛び出すな」
俺は、彼女の肩を押さえた。
「三人。向こうは武器を持ってる。正面から行けば、少年が人質にされる」
「でも」
「分かってる。助ける。そのために、段取りを組む」
小声で、作戦を伝えた。
シルファの目に、涙が、一粒だけ光った。それを、袖で乱暴に拭って、彼女は頷いた。
「……お願い。あの子を、助けて」
「頼りにしてる」




