男子会(?) sideセイ
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「今回の件、タイムリミットは天竺桂財閥のご令嬢が異能を覚醒する前、長くても一ヶ月よ。とりあえず、表向きの首謀者を籠絡してくるからそれまで凪と夏弦はセイの手伝いをお願いね。」
セナは早口でそう言い残し、部屋を出ていった。
珍しく切羽詰まったような表情をしていたが、本心かは不明である。
「表向きの首謀者を骨抜きにすんのにどんくれぇかかるのかねぇ。」
セイは肩をすくめ、呑気にエナジードリンクを呷った。
(ま、セナなら三日かかんねぇだろ。)
テーブルに空き缶を置き、パソコンを操作するセイの視界の端に凪が部屋の出口へ向かうところが映った。
「どこ行く気だ?お前は俺の手伝いをしろって言われたよなぁ?」
ニヤニヤとどこか楽しそうな笑みを浮かべるセイとは対照的に、凪は不機嫌そうだ。
「情報収集がてら親睦を深めようや。なーぎちゃん。」
凪の額に青筋が立った。
夏弦は肩を震わせ、セイも昔と変わらぬ反応に喉の奥でクツクツと笑っている。
「その呼び方を止めろと言ったはずだが?」
「言われたなぁ。だけどよぉ、俺ぁ同意してねぇぜ?」
凪はそんなセイの態度にため息をつく。
セイは凪のそんな反応も楽しむようにソファで偉そうに足を組んでいる。
「ついに凪ちゃんにも春が来たのかねぇ。」
ギロリと射殺さんばかりの視線が凪から向けられた。
そんな凪の瞳は桔梗色に、視線を向けられているセイの瞳は古代紫色に染まっている。
「ちっ、可愛くねぇなぁ。施設にいたころは無力なガキだったくせに。」
「人の心を勝手に読んでおいてそこまでふてぶてしいお前の精神は変わってないな。」
互いが言葉の真意を読み取るように視線を交差させる。部屋の空気は並の人間であれば逃げ出したくなるほど重い。
しかし、この部屋には今、異能者しかいない。この程度で萎縮するような人間はいない。
「あのぉ~、俺にもわかるように説明してもろてええか?」
気の抜けるような関西弁が部屋に響いた。片手を挙げ、セイと凪を交互に見ているのは先程まで気配を殺していた夏弦である。
「夏弦、異能を発動しておけ。気配は消さなくていい。こいつに心を読まれるぞ。」
「ほんまか!?」
大袈裟に驚いたような反応を示す。そんな夏弦の瞳はいつの間にか至極色に染まっていた。
「こいつの異能は読心。人間の心を読む。」
セイは凪の説明に興が削がれたようにやれやれと首を振り、ため息を吐く。
「わかってないねぇ。そんなすぐ対処法教えちゃつまんねぇだろ。いいか、こういうときは対処法に気づくまで放置が正解だぜ?」
大真面目な顔で最悪な持論を展開しだした。凪は慣れているため、涼しい顔で一人掛けのソファに座り直した。
「類は友を呼ぶってほんまやな。」
夏弦は一人納得したようにポンと手を打ち、ケースから数台のタブレットやコードを取り出した。
それぞれのタブレットにキーボードを接続し、起動させる。その手を止め、ふと顔を上げた夏弦はどこか申し訳なさそうに尋ねる。
「すまんねやけど、天竺桂財閥のご令嬢って?」
「ん?あぁ、そういや言ってなかったな。咲葵のことだよ。」
「はい?」
夏弦は口を半開きにし、目を点にするという間抜けな顔を晒した。
どうにも学校での咲葵と「ご令嬢」という言葉が結びつかないらしい。
「天竺桂財閥ってのはあれだよ。海外でも結構有名な企業をめっちゃ抱えてるとこだ。んで、咲葵はそこの会長の一人娘。」
天竺桂財閥については夏弦も知っている。説明されればされるほど咲葵のイメージからかけ離れていってしまうだけで。
「んじゃ、都内の防犯カメラ漁るぞ。お前らのスマホに送った人間が映ったらそこだけ切り取ってまとめとけ。なぁに、ざっと数万カ所だ。十倍速くらいで見ればどうにかなるさ。」
説明が面倒になったセイは実に良い笑顔で爆弾を投下した。
数日前に運び込んでおいたパソコンを何台もテーブルの上に置き、起動させる。画面には都内の防犯カメラ映像が。
「……それって徹夜ちゃうよな?」
「んぁあ?そうだなぁ――」
夏弦の問いにセイは顎に手を当て、考えるように天井を見上げる。
意地悪く微笑みながら夏弦の肩に手を置く。人を安心させるようなその笑い方はどこかセナに似ている。
「おめぇらの頑張り次第だ。」
―――半日後
「ま、これで三分の一ってとこかね。」
三人は約半日、並べられた数十台の画面を十倍速で見続けていた。流石のセイも乾いた目を擦り、大きく伸びをする。
(あの男はほぼ映ってなかった……黒幕はやっぱ――)
セイが未開封のカフェオレを開け、飲んでいると肩を回しながら夏弦が質問を投げかけてきた。
「セナちゃんってあの男籠絡するんに変装するんやったよな?変装するんなら危ないんちゃう?役になりきるために暗器すら持てへんけど大丈夫なん?」
その疑問は至極当然のものである。
今回、収容所もとい国際異能研究所が関わっているため、いくら異能者だろうと武器がなければ敵に捕まる可能性が高いのだ。
「お前……夏弦つったか?」
セイは自嘲するように鼻で笑う。
「安心しろ。俺らが武器を持つ理由は力を抑えるためだからな。なぁ?」
凪に同意を求めると、彼は黙って頷いた。
「もし、セナに襲いかかったら返り討ちにされるだけだぜぇ?筋力はそこまでじゃねぇがな。俺らは収容所の連中にそう躾けられたんだよ。だから収容所出身の異能者かは戦闘を見ればすぐわかる。」
額の端を抑え、再び画面に目を落とす。これ以上話す気はないという意思表示だ。
二人も無言で作業に戻った。
「セナは収容所の最高傑作だ。そう簡単には倒れねぇよ。」
誰に聞かせるでもなく呟かれたその言葉は小さく、二人の耳には届かなかった。




