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酔狂〜紫硝の怪物達〜  作者: 紫月 凛
一章〜何でも屋と元若頭様の世話係〜
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39 顕視点

 セナはニコニコと微笑んでいる。ロライの人間を気絶させ、拘束するときもずっと微笑んでいた。

その表情が顕には凪と重なって見えた。自分を守る仮面に。


「私に接触した理由はなんですか?」


「ん〜…裏のコがいたから、かしらね」


 セナは曖昧に答える。また、顕は問いつめても無駄だと理解しているため、即座に見切りをつけ、 次の質問に移る。


「次に、結末です。今回、私は私のことを貴方が消すと思っていました。なぜ、私を生かし、凪様との誤解を解いたのですか?」


「それも貴方達に恩を売るため…では納得しそうにないわね。」


「するとお思いで?」


(やはり…これも答えてもらえそうにありませんね。煙に巻くのが異様に上手い…)


「誰にも…凪達にも話さないことを約束してください。」


 セナは相変わらず無防備な微笑みを浮かべているが、その瞳はいつになく真剣だ。


「はい。これは私が個人的に知りたいだけですので。他言は決していたしません。」


 セナは顕から他言しない、という言質を取ると、真剣な雰囲気を霧散させ、軽い雰囲気で話し始めた。


「今の言葉、忘れないようにしてくださいね。破った場合、私は貴方の命の保証はしませんから。」


「肝に銘じておきます。」


「そうですか。今回、私が貴方と凪の誤解を解いたのは気紛れと恩を売るためというのが九割、残りの一割は()()()()()()()()です。」


 顕はセナの曖昧な説明をそれ以上、追及しない。顕にはそこまで踏み込むことはできないからだ。


「最後の質問です。貴方の目的は何ですか?」


「目的…?貴方に接触した理由なら先程…」


(嘘だ。この方は質問の真意を理解していてしらばっくれている…)


 セナは小首をかしげ、瞳を潤ませ、上目遣いに顕を見る。並の人間ならば、それだけで流されているだろうが、顕はセナのこの表情を見るのは二回目だ。そのせいで、セナが上目遣いに相手を見る時は何か目的がある時だと学んでいた。

 セナは自分の容姿も武器にする人間だからだ。


「先程、貴方が言ったことは本心なのでしょうが、それではありません。貴方は最も大事なことを…それも異能に関する"何か"を隠して…っ!?」


 顕の言葉に反応し、セナは息ができなくなるほど圧迫感のある殺気を彼に向けた。セナからは微笑みの仮面は剥がれ落ち、感情を宿していない、精巧な人形にも見える無表情になっていた。しかし、それも一瞬のことで、次の瞬間には人間が自然と警戒を解いてしまう、無防備で柔らかい微笑みを浮かべていた。


「すみません。踏み込み過ぎましたね。では、私はこれで失礼いたします。質問に答えていただいたことには感謝いたします。」


「さようなら。()()()()()()またお会いしましょう。」


 セナのその言葉を聞いてから、顕は倉庫を後にした。


 裏では人の命など一円玉より軽い。呼吸のついでに消費されることもある。

 今回、顕は相手がセナだから生きているのだ。セナは顕の過去を明かすことで二人の誤解を解いた。セナは依頼を達成するためとはいえ、顕の過去を一部だが、同意なしに凪達に公開した。

 顕は過去が露呈したことをあまり気にしていない。それどころか、凪のもとで再び働けるようになったことをセナに感謝している。それでも、セナが顕の過去を露呈させる、という裏では殺されてもおかしくないことをしたのは事実だ。

 これを使わない手はない。しかし、セナは二人に恩を売ることで自分に踏み込めないようにした。

 顕からの依頼達成のためとはいえ、自分に踏み込む口実を与えたままにする気は微塵もなかったのである。


(あれ以上は本当に危険でしたね。やはり、異能者の方々は過去が地雷を通り越して核爆弾のようですし…)


 顕は月守組の屋敷へと暗闇の中を駆けていった。

最近投稿した話を読み返して誤字脱字などを修正しています。その過程で同じ意味の違う言葉になった部分もあると思います。気になる方は読み返してみてください。


おかしいなぁ…こんなに長くなる予定はなかったんだけどなぁ…と思いながら読み返ししております。

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