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酔狂〜紫硝の怪物達〜  作者: 紫月 凛
一章〜何でも屋と元若頭様の世話係〜
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「美味いな。どこで買ったんだ?」


「ユウリの手作りよ。気に入ったなら顕さんと夏弦は手をつけてないし、貰ったら?」


 セナと凪は二人共、マイペースだ。周囲の反応など意に介さず、現在食べているケーキの話をしている。


「セナ様、もう一切れお持ちしますか?」


「紅茶のおかわりはいかがですか?本日の茶葉は眠気覚ましのアールグレイですよ。」


 セナが腰掛けるソファの側にユウリとルランが控え、彼女の給仕をする。

 セナが拠点として所有するタワーマンションの最上階の部屋の中、リビングではセナ達が優雅にお茶会をしていた。セナの対面のソファにはケーキを食べる凪と何かを諦めた表情をした夏弦が座っている。その側には護衛として顕が立っていた。その顔には微笑みが貼り付けられているが、目は全く笑っていない。夏弦と顕はお茶会を楽しんでいるわけではないのだ。


「大丈夫よ。一昨日寝たから今は全然眠くないもの。それよりも。アレの準備をお願い。」


「「御意。」」


 セナはユウリとルランの申し出を断り、ある物の準備をお願いした。二人は指示に従い、別室に移動した。


「なぁ、俺らはこのお茶会?に呼ばれただけなん?」


「ほぼそれが目的よ。依頼の報告はついでね。」


「………」


 セナは当たり前のように肯定した。夏弦はセナの回答に沈黙する。凪と顕は想定内だったのか、平然としている。凪はセナと同様にお茶会を楽しんでいるようにさえ見えるが。


「にしても…ヤクザって暇なの?」


「急にどうした。月守組に入る気なのか?」


「いや…そうじゃなくてね、今日はアポなしで急に呼び出したでしょう?それなのにすぐに来たから…」


「今週のどこかで気が向いたら呼ぶって言ったのはお前だろ。だから、空けてた。」


 夏弦と顕はどこまでもマイペースに会話をしている二人に呆れた視線を向ける。


「それで、お前はどこまで知っているんだ?」


 凪はケーキを食べ終えてから、やっと本題に入った。


「さぁ?」


 凪の額に青筋が浮かぶ。セナが他人の反応を見て楽しんでいるだけの性格破綻者だということは今回の件によって凪達三人の共通認識になっている。しかし、セナは常時他人を煽るのではなく、突然、何の脈絡もなく刺してくるため、予測不可能なのだ。そのため、凪達は毎回、セナの言動に反応を示してしまう。


「ワー、コワイナー。フツウノオンナノコニムケルモノジャナイヨー?」


 セナは棒読みでそう言う。


「お前…普通の女の子なのか?…いや、すまん。今のは俺が悪い。」


 凪の言葉にセナは一瞬、明らかに硬直した。いつも浮かべている人間が警戒できない微笑みが硬直した。それはほんの一瞬だが、凪には分かった。


(危ない…自分の願望は捨てたはずなのになぁ。)


 「普通の女の子」それはセナの願望だ。セナは「普通」の平穏な日々を欲している。しかし、それはもう手に入らない。セナの「普通」と表の「普通」はあまりにも違う。決して交わらない平行線の上にある。

 だから、その願望には蓋をしていた。目をそらしていた。


(やっぱり凪といると調子狂うわね。なんでかしら?…今は仕事優先しないと。)


 セナは思考を仕事に切り替える。


「いいわ。そんなに気にすることじゃないから。それと、私は私の力で調べられることなら全部調べたわ。でも、どれだけ調べても貴方達の気持ちは分からないし、興味もないの。だから、訊くだけ無駄よ。」


 セナは直ぐ様線引きした。話題をすり替え、笑みを貼り付け直す。これ以上、自分の闇を見せないように完璧に隠す。凪達もその話題には触れない。ここには裏の人間しかいない。全員、知っているのだ。


 他人の踏み込んではいけない領域には―――絶対に軽い気持ちで触れてはいけないことを

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