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酔狂〜紫硝の怪物達〜  作者: 紫月 凛
一章〜何でも屋と元若頭様の世話係〜
17/41

16

「邪魔するで〜。」


「失礼する。」


 集合時間の五分前に凪と夏弦が部屋に入ってきた。


「ここ、タワマンの最上階やないか。綺麗やな〜夜景。」


 部屋のリビングは一面、床から天井までガラス張りになっている。夏弦はそこから都内の夜景を見おろした。少し離れた所には赤く灯る東京タワーが見える。


「ユウリ、ルラン、折角だから夏弦から()()()()教えてもらってきなさい。」


「「は〜い。」」


 セナの意図を察したユウリとルランは夏弦に近づき、その手を取る。


「夏弦さん、セナ様と凪…さんがお話している間、僕らに教えてほしいことがあって…」


「外でお話できませんか?」


 ユウリとルランは小首を傾げて上目遣いで夏弦を見る。その可愛らしい容姿を惜しげもなく使い、夏弦に強請る。


「せやかて…セナちゃ「様をつけなさい。」セナ…様はこの後、凪と仕事の話をするんやろ?俺もそれに同席せなあかんし…」


 夏弦はユウリとルランが悲しまないように、との配慮からか遠回しに断る。二人は夏弦がセナのことを様をつけずに呼ぶと微笑ながら威圧するという器用な真似をして訂正させた。


「夏弦、行っていいぞ。」


「は…?急にどしたん?いつもは仕事の話をする時は俺も一緒やん。」


 夏弦は凪の言葉に困惑するが、ユウリとルランは彼の腕を引っ張って玄関に向かう。


「夏弦さん、凪さんもこう言ってますし。少しだけお願いします。」


「セナ様、私たちの帰りが遅い時は連絡をお願いします。」


「わかった、わかった!行くから!引っ張らんといてもらえる!?」


 ユウリ、ルラン、夏弦の声は玄関の扉が閉まると聞こえなくなった。セナの活動拠点の一つであるタワーマンションの最上階であるこの部屋も当然のように防音だからだ。


「ふふっ…貴方達、仲が良いのね。羨ましいわ。」


「嘘を吐くことが趣味なのか?欠片も心にないことをよく言えるな。」


 セナの冗談めかした発言を凪はすぐさま切り捨てた。会話を楽しむように肩をすくめるセナに、凪は鋭い視線を向ける。


「あら。よく分かったわね。使()()()の?」


使()()()()()。この程度、お前と会ったことがある奴ならすぐ分かるだろ。お前の場合はあの双子、ユウリとルランだったか…そいつらのこともどうでもいいと思ってる、違うか?」


「さぁ?あの二人は私の優秀な助手よ。」


 凪の追求に対し、セナは答えになっていない答えを返してはぐらかした。


「お前は俺が異能者だとなぜわかった?夏弦は初対面の時に使っていたからまだいい。だが、俺は使っていない。」


「勘よ。この前も言ったじゃない。」


 先日と同じ返答をされたことで凪はこれ以上セナを問い詰めることを諦めた。紅茶を一口飲み、黒い箱をローテーブルのうえに置く。


「前金だ。足りるか?」


 箱の中には大粒の宝石が鎮座していた。現金を持ち歩くとかさばるため、価値のあるもので代用することが多いのだ。


「それで、貴方と顕さんはどういう関係なの?貴方の過去は話さなくていいわ。顕さんとの関係が分かれば十分だから。」


 セナは一度だけ宝石に視線を落としてから、本題に入った。セナが今日、聞きたかったことはその一点のみだ。


「そうか。わかった。それだけなら教えてやる。顕は昔、俺の―――だった。」


 凪の言葉を聞いてからセナはソファから立ち上がった。


「一週間後、麻薬の取引をしているコ達が使っている倉庫に来なさい。()()()からの依頼と()()を片付けてあげる。」


 セナはそれだけ言って玄関に向かう。


「代金は要らないのか?」


 セナは凪の言葉に足を止め、顔だけ後ろに向ける。


「今回の依頼では別のモノを貰うわ。」


 セナは今度こそ部屋を出て行った。

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