↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴミスキルだと捨てられた少女たち、実は最強の生活能力スキルだったので気楽なスローライフ冒険旅を満喫する  作者: 鳥助


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
77/82

77.交易

 ホールへ足を踏み入れると、そこは布地を求める商人たちで熱気に包まれていた。


 運び込まれたばかりの反物が次々と広げられ、商人たちは手触りを確かめたり、光にかざして織りの細かさを見たりと、真剣な眼差しで品定めをしている。


「これは見事な織りだ」


「色合いも美しい。以前より品質が上がっているじゃないか」


「ようやくレイベック領の布地が手に入るぞ」


 あちらこちらから感嘆の声が上がり、誰もが嬉しそうに笑みを浮かべていた。


 レイベック領の布地は品質の高さで有名らしい。しかし、戦争のせいで長らく市場へ出回ることがなかったため、多くの商人が再び仕入れられる日を待ち望んでいたのだ。


 一通り品定めが終わると、今度は具体的な取引が始まる。


「この反物を三十本もらおう」


「こちらは五十本だ」


「いや、その柄は全部押さえたい!」


 次々と商談がまとまり、布地は飛ぶように売れていく。使用人たちは注文を受けては品を運び出し、商人たちは代金を支払いながら満足そうに荷車へ積み込んでいく。


 ホールの熱気は夕方まで途切れることなく続いた。


 そして、日が傾く頃。積み上げられていた布地は一反残らず姿を消し、その代わりに机の上には積み重ねられた金貨や銀貨が輝いていた。


 レイベック領で織り上げられた布地は、その日すべて完売したのだった。


 ◇


 そして、その翌日――今度は領主の館に鉄製品を扱う商人たちが集まってきた。昨日とは反対に、今日のホールは武具や農具、工具を積んだ荷車が次々と運び込まれてくる。


 戦争の影響でレイベック領との取引が途絶えていたため、鉄製品を扱う商人たちも久しぶりの大口取引に誰もが嬉しそうな表情を浮かべていた。


「ようやく仕入れてもらえる」


「これだけの量を一度に買ってもらえるとはありがたい」


「今日だけでしばらく食っていけそうだ」


 商人たちは口々に喜びを漏らしながら、自慢の商品を並べていく。


 剣や槍、斧といった武器。鍬や鋤、鎌などの農具。釘や金具、包丁、鍋といった生活用品まで、ホールはありとあらゆる鉄製品で埋め尽くされていった。


 一方、館の使用人たちは執事さんから受け取った目録を手に、一つひとつの商品を確認していく。


「こちらの鍬を二十本」


「釘はこの箱を全部いただきます」


「この鍛冶道具も目録にありますので、お預かりします」


 必要な品を目録と照らし合わせながら、迷いなく買い付けていく。そのたびに商人たちの表情はさらに明るくなり、ホールのあちこちから喜びの声が響いた。


「ありがとうございます!」


「これほどまとめて買っていただけるとは!」


「助かりました。またぜひお取引を!」


 昨日、布地を売って積み上げられていた金貨や銀貨の山は、次々と商人たちの手へ渡っていく。


 その代わりに、領主の館には大量の鉄製品が運び込まれ、倉庫だけでは収まりきらず、ホールのあちこちにも積み上げられていった。


 そして日が暮れる頃には、金貨の山はほとんど姿を消し、代わりにホールは山のような鉄製品で埋め尽くされていた。


 こうしてレイベック領は、布地を資金へと変え、その資金を今度は領地に欠かせない鉄製品へと換えていったのだった。


 ◇


「君たちのお陰で、レイベック領の布地を大量に売ることができた。これで領地の財政もしばらくは安定するだろう。本当に感謝している」


 領主様から改めて感謝の言葉を向けられると、なんだか照れくさくなってしまう。


「いえ、私たちは出来ることをしただけです」


 そう答えると、領主様は穏やかに笑みを浮かべた。


「その『出来ること』が、どれほど難しいことかを私は知っている。戦争で途絶えていた販路を取り戻し、これだけの商人を呼び込み、さらに一日で完売させるなど、誰にでもできることではない」


 領主様はゆっくりとホールを見渡す。


 昨日まで積み上げられていた布地はすべて商人たちの手に渡り、代わりに集まった資金は領地の復興に必要な鉄製品へと姿を変えた。


「君たちは、ただ商品を売っただけではない。レイベック領の未来を繋いでくれたのだ」


 その言葉に、思わず胸が温かくなる。


「戦争で多くのものを失い、この領地は長い間前へ進めずにいた。だが、ようやく希望が見えてきた」


 領主様は私たち一人ひとりを見つめ、深く頭を下げた。


「改めて礼を言おう。本当にありがとう」


 その真摯な感謝の言葉に、私たち顔を見合わせ、小さく笑みを浮かべた。こうして誰かの力になれたのなら、この旅も決して無駄ではなかったのだと思えた。


「君たちはこれからどうするのかね?」


「レイベック領に戻って、鉄製品を届けに行きます」


「その後のことだ。これだけの能力があれば、色んな事に活用できる。どうだ、私の下で働いてみないか?」


 その言葉にドキッとした。やはりサリサとティナの能力は特別だ。その能力を十分に発揮すれば、凄いことが出来てしまうほどに。


 きっと、こんな旅をしなくても、充実した生活を送れることだろう。二人のことを思えば、別に旅をしなくても生きていける。


 少し不安になっていると、肩を叩かれた。振り向くとサリサとティナが笑っていた。


「何を迷っている。その必要はないのじゃ。わらわたちはいつでも一緒だからな」


「今の生活が気に入っているので、続けていきましょう」


「二人とも……」


 その言葉が心強い。まだ一緒にいられるんだと思うと、胸が温かくなる。


 私は改めて領主様に向き直ると、素直な気持ちを伝える。


「私たちは自分たちの生活を続けることにします。お誘いいただき、ありがとうございました」


「そうか、それは残念だ。もし、何かあれば頼りなさい。力になろう」


 断ったとしても領主は無理やりいう事を聞かせようとはしなかった。それが、とても救いになった。


 私たちは鉄製品をアイテムボックスに入れ、領主の館を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新連載!

魔法で遊んでいた世間知らずな田舎者、都会に出たら怪物扱いされました

旧作

転生難民少女は市民権を0から目指して働きます!

転生少女の底辺から始める幸せスローライフ~勇者と聖女を育てたら賢者になって魔法を覚えたけど、生活向上のため便利に利用します~

追放を計画的に利用して自由を掴んだ王女、叡智と領地改革で無双する

転生したら魔法が使えない無能と捨てられたけど、魔力が規格外に万能でした

スラムの転生孤児は謙虚堅実に成り上がる〜チートなしの努力だけで掴んだ、人生逆転劇〜

ゾンビがいる終末世界を生き抜いた最強少女には異世界はぬるすぎる

元社畜はウィンドウで楽しい転生ライフを満喫中! ~ゲームのシステムを再現した万能スキルで、異世界生活を楽々攻略します~

異世界喫茶で再出発ライフ

ゴミスキルだと捨てられた少女たち、実は最強の生活能力スキルだったので気楽なスローライフ冒険旅を満喫する

推し命の転生者、弱小ポンコツな推し神様のために万能な推し活パワーで騎士爵領を大領地にする

過保護なお姉ちゃん系王女を救うために何度も死に戻っていたら、全部バレていて曇らせてしまった

この世に一人だけの錬金術師~物作り好きのゲーマーが家族のためにアイテム革命起こします!~

コミュ障クラフターの私、引き継いだ能力が異世界では規格外すぎて無自覚に無双してしまう件~地味に暮らしたいだけなのに、なぜか注目されて怖いんですが~

スラムの孤児は慎ましく生きたい~大賢者の遺産を継いだけど、救世主にはなりません~

ド陰キャ聖女に百合キスは荷が重すぎる!~唇への祝福が最強だとバレてしまい、キラキラ王子様系姫騎士と包容力おばけな女傭兵に迫られています~

魔力1令嬢と欠陥王女は魔法が使いたい! ~誰も使えない古代魔法で人生逆転します~

収納魔法を裏返したら世界最強でした!~極小収納しか使えない無能と辺境に追放されたので、もう好きに生きます~

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。