66.最近食べてないね魔物
「「「いただきます!」」」
朝食の時間、三人で声を合わせてから食べ始める。今日のメニューはフレンチトースト、カリカリベーコン、スクランブルエッグ、コールスローサラダ、野菜ジュース。
一晩液につけたフレンチトーストはフワフワに仕上がっていて、ナイフで切るとジュワッとした断面を見せてくれる。
それにシロップをつけて食べると――朝から甘い幸せだ。
「真夜中にチョコレートパフェ食べたのに、朝でも甘いもの食べれるね」
「甘いものは何度食べてもいいからのう! 毎食でもいいぞ!」
「毎食だったら、他のものが食べられないじゃないですか。何事もバランス良くですよ」
そうそう。甘いものだけだと飽きちゃうからね、色んな味を楽しまなくっちゃ。
甘いフレンチトーストを食べた後は塩っけの強いカリカリベーコンを食べる。甘いものを食べた後にしょっぱいベーコンは格別だ。思わず鼻歌を歌ってしまうくらいには美味しい。
「朝からメルは元気じゃな。耳としっぽが」
「朝から眼福ですー」
「いや、そんなに見ないで……恥ずかしいから」
うぅ、自分の感情が出る耳としっぽが恥ずかしい。美味しいものを食べると、すぐに反応するからなー。もっと、堪え性を鍛えなければ。
「食事の後はメルをもふもふしないとな!」
「ブラッシングしてあげますよ」
「もう、それはいいから……」
隙を見せればすぐに触りに来るんだから……。はぁ、でも……今日も朝食が美味しい。自分、ナイスチョイス。
「それにしても、最近あれじゃな。あれを食べてない」
「あれ?」
「ほら、魔物!」
「あっ、最近食べてないですねー」
そう言えばそうだった。前の町では食べられる魔物がいなかったから、スキルの獲得が出来なかった。これは、ちょっと痛い。
「でも、レベルは上がってますね。私は今、40です」
「えーっと、私は……44だね」
「わらわは116じゃ! 二人はまだレベルが低いから、ぐんぐん上がるのう」
レベルの40位は中堅冒険者の上級辺りのレベルだと聞いた。食べるだけでレベルが上がるなんて、本当にとんでもないスキルだ。
「スキルはどうなってる? 私はネットショッピング、転生者の料理技術、危険察知、身体強化、鑑定、自然回復(小)、脚力強化、体力回復(小)。で、この間倒したベリアットの特殊個体で衝撃を放って攻撃する破撃っていうのを手に入れたよ」
「わらわはアイテムボックス、跳躍、飛撃、高速移動、自然回復(小)、脚力強化、体力回復(小)じゃな。特殊個体で咆哮を手に入れたのじゃ。これで、敵を怯ませることが出来るぞ」
「私はキャンピングカー、風魔法、魔力回復(微)、火魔法、探知魔法、自然回復(小)、脚力強化、体力回復(小)ですね。特殊個体の時は土魔法を手に入れました」
こうしてみると、たくさんのスキルを手に入れた。ただ、魔物を食べただけでスキルがもらえるなんてね。
「だいぶ、スキルも多くなったけど、もっと欲しいよね」
「まだまだ、小粒のスキルばっかりじゃからな。ここで、ドドンと大きなスキルが欲しいのう」
「それだと、強力な魔物を倒さないといけないじゃないですか。それが可能かどうか……」
「わらわがいるんじゃから安心せい! なんてったって、レベルが116もあるんじゃからな! どんな強力な魔物でも打ち倒せるぞ!」
確かに、サリサがいればどんな強力な魔物も倒せそうだ。ここはサリサに頑張ってもらって、魔物を倒してもらうしかない?
「次の町で、町を滅ぼすほどの魔物がいることを願うのじゃ!」
「いやいや、流石にそれは無理でしょう」
「町がなかったら困ります」
「まぁまぁ。次の町で食べられる魔物がいたらいいのう。その為にも、今日は町に到着したいな!」
「多分、今日中に次の町に到着すると思うよ。到着したら、すぐに冒険者ギルドでも確認しようか」
スキルは欲しいから、積極的に食べられそうな魔物がいれば狩りたい。私たちは急いで朝食を食べ、キャンピングカーの運転席へと行った。
◇
それから数時間、キャンピングカーは道を真っすぐ進んだ。すると、道の先に一つの町が見えてきた。
私たちは離れたところで降り、徒歩で町の中へと入った。町は普通の町で、平和そのものだ。
「なんか、何もない町じゃな。魔物が闊歩してないぞ」
「サリサの妄想が具現化するわけないじゃん」
「そんな事よりも現実ですよ。冒険者ギルドで周辺にいる魔物を調べますよ」
戸惑っているサリサに突っ込みを入れつつ、私たちは冒険者ギルドへと急いだ。
冒険者ギルドに入ってもいたって普通で騒動が起きている様子はない。でも、そんなのはお構いなしだ。真っすぐにボードに行き、周辺に出てくる魔物を調べる。
「えーっと、この周辺に出る魔物は……蚊みたいな魔物と、芋虫みたいな魔物と……」
「蛾のような絵もありますね……。なんか、見たところ虫ばっかりなんですが……」
「じゃあ、虫でも食うか。美味しいものは美味しいぞ?」
「「いやいやいやいやっ!」」
えっ、サリサって虫食べたことあるのっ!? その事実に私とティナは一気に距離を取った。サリサ、怖い……。
「な、なんで離れるんじゃ!」
「ちょっと、サリサが……怖くなって……」
「虫を……そんな……」
「まぁ、壮絶な修行の日々じゃったから、なんでも食わんと生きてこれなかったからな……」
そう言って、遠い目をしたサリサ。何だか哀愁が漂ってきて、離れた私たちが悪い気になった。そして、サリサに近寄ると慰めるように頭を撫でた。




