67.町のイベント
「この周辺は虫の魔物が多いらしいね。これじゃあ、ここでもスキルを手に入れるのは無理かなぁ」
「流石に虫は食べたくありません」
「わらわも出来れば美味しいものが食べたいのじゃ」
みんなの意見が一致した、虫の魔物は食べない。というか、絶対に食べたくない。スキルは欲しいけれど、それは美味しく食べれる魔物に限る。
「じゃあ、どうしようか。この町はスルーして、次に行く?」
「お金は大丈夫ですか?」
「百万コルトを手に入れたばかりだから、まだ大丈夫。次の町まで十分持つよ」
「だったら、早く移動するか? ここには用がないのじゃろう?」
それが一番良いのかもしれない。お金を稼げないのは痛いけれど、用もないのに長いするのは無駄だ。
そう思って、ボードから離れようとした時――。
「オークションのお知らせだよ! みんな、見ていってくれ!」
大声で宣伝しながら男性がボードに紙を貼り付けた。すると、周囲にいた冒険者が一斉に集まってくる。
「今回はどんな品が出るんだ?」
「俺にも買えるかなぁ……」
「……ほう、武器もあるな」
まるで、当然のように冒険者が紙を眺めていく。一体、あそこに何が書いてあるんだろう?
私たちは冒険者が少なくなるのを待って、その紙を眺めた。すると、オークションの日時と場所が書かれていて、出品される商品が書かれていた。
「へー、オークションか。楽しそうじゃの!」
「珍しいものが出るんですよね? ちょっと、気になります」
二人は興味津々と紙を眺めている。私も商品リストを眺めていると、一つの商品に目が留まった。
「ねぇ、これ見て。他大陸からの希少品、フロストドラゴンの肉って書いてあるよ!」
「何っ?! ドラゴンの肉じゃと!?」
「そ、そんな凄いものが出るんですか!?」
「氷系のドラゴンだと思うんだけど、これ食べたら、ティナは氷魔法を覚えるんじゃない? 私たちはドラゴンの力を手に入れられる」
「氷魔法ですか!? そんな難しい魔法を取得出来たら、凄いです!」
「ドラゴンの力……欲しいっ!」
やっぱり、欲しくなるよね。どんな力が手に入るか分からないけれど、氷系でドラゴンな力は手に入ると思う。
安全な旅をするためには、色んな力を手に入れた方がいい。それこそ、誰も太刀打ちできないような力が。
それは、その一歩だと思う。自分たちで倒せない魔物を食べて、力を手に入れる……超強化だ。
「このオークション、参加するべきだよね」
「絶対に参加するのじゃ! そして、絶対にフロストドラゴンの肉を手に入れるのじゃ!」
「……でも、今お金ってどれだけありましたっけ?」
ティナの言葉に私はネットショッピングの画面を開く。残高を確認してみると――。
「79万コルト……。これで買えるかな?」
「いける、いける! きっと10万コルトくらいで買えるんじゃないか?」
「……そうでしょうか。もっと、値が張ると思うのですが……」
「限界は50万コルトまでかな……。それ以上は諦めた方がいいと思う」
「そ、そこまでいくのか? むむむっ、それだけあれば、他の美味しいものが食べ放題じゃのに……」
「これもスキルを手に入れるチャンスですから。しばらくはそれを我慢しましょう」
一体どれだけのお金が掛かるか分からないけれど、これを逃したら、二度と手に入らないスキルかもしれない。
「オークションは明日、広場で行われるらしいね。じゃあ、明日まで待機しようか」
そう言って、私たちは冒険者ギルドを出ていった。後は、明日になるのを待つだけ。
◇
翌日、時間になったので町の広場に行ってみると――。
「……凄いね、お祭りみたい」
「こんなに人がいるなんてな」
「出店も出てますね」
広場は、昨日までの落ち着いた町並みが嘘のような賑わいだった。色とりどりの屋台がずらりと並び、焼き肉の香ばしい匂いや、甘い焼き菓子の香りが風に乗って漂ってくる。
「焼き串だよー! 焼きたてだ!」
「冷たい果実水はいかがですかー!」
「珍しい魔道具もあるよ! 見ていってくれ!」
あちこちから威勢のいい呼び込みが飛び交い、大勢の人たちが商品を手に取っては楽しそうに笑っている。
大道芸人が火を吹けば、子供たちから歓声が上がる。楽団が陽気な演奏を始めれば、思わず体を揺らしている人までいた。
「本当にお祭りみたいじゃの!」
サリサが目を輝かせながら辺りを見回す。
「わぁ……見てください。あっちにはアクセサリーのお店がありますよ」
ティナが指差した先には、宝石や魔石を使った首飾りや腕輪が所狭しと並べられていた。
「武器屋さんもあるね。オークションに合わせて商売しに来たのかな」
普段は見かけないような立派な剣や槍、防具まで並んでいて、冒険者たちが真剣な表情で品定めをしている。オークションの日だけあって、町中から人が集まっているのだろう。
冒険者だけではない。豪華な服を着た商人たち、護衛を引き連れた大富豪まで歩いている。
「こんなに人が集まるんですね」
「珍しい品が集まる日じゃからの。金持ちも冒険者も、みんな狙っておるんじゃろう」
サリサの言葉に、私は改めてオークションの影響力を実感した。これだけの人が集まるということは、競争相手も多いということだ。
フロストドラゴンの肉も、私たち以外に欲しがる人がいても不思議じゃない。
「負けられないね」
私は小さく拳を握る。この旅をもっと安全にするためにも、仲間をもっと強くするためにも。
何としてでも、フロストドラゴンの肉を手に入れたい。そんな決意を胸に、私たちはオークション会場へと足を進めた。




