65.真夜中のチョコレートパフェ
ベッドの上で横になって、画面に釘付けになる。場面はエンディングで主人公たちが壮絶なサバイバルの末、生き残った感動が押し寄せてくる。
そして、画面は真っ暗になり、エンドロールが流れてくる。
「あー! 凄くハラハラして楽しかったのじゃ!」
「そりゃあ、サリサが選んだ動画だからねぇ」
「そんなこと言って、メルも楽しんでいたじゃないですか」
途端に喋り出す私たち。そこからは動画の感想を言い合ったりして、エンディング後の楽しみを共有していた。
「そろそろ、寝る?」
「んー……ちょっと早くないか? もう一本見よう!」
「でも、もう一本見るには時間が遅いような……」
二時間近くも拘束されてしまうから、時間が微妙だ。これ以上は明日に支障が出てしまう。
「だったら、短いものはないですか?」
「短いもの……だったら、あるよ」
「でも、短いものって面白いのか? あの楽しさは長くないと無理じゃないのか?」
「そうでもないよ。短いものでも面白いものはあるよ。じゃあ、私のチョイスで見るもの決めるね」
ネットショッピングの画面を開き、動画を選択する。その中で時間が短いものを選択すると、やっぱり出てきた。
一話完結型で二人が興味ありそうな物って言えば……やっぱり、食べ物系かな。これだと、短く話がまとまっているし、二人に色んな食べ物を教えることが出来る。
「じゃあ、この女子大生が食べ歩きする動画にしよう。時間は三十分ね」
動画を選択し、テレビに接続する。すると、すぐにオープニングが始まる。
「なんだか、楽しそうな動画ですね。それにとっても可愛らしいです」
「刺激が少なさそうじゃのう……ぬっ? 食べ物が出てくるのか! それはそれで、楽しみじゃのう!」
良かった、二人が食いついてくれた。そのまま物語は進行して、とうとうメインの食べる場面に来た。
出てきたのは、女子大生らしくパフェ。チョコレートが沢山乗った、とても美味しそうなパフェだ。
それをとても美味しそうに食べていく姿を見ていると――食べたくなってきた。食べ物系の動画は楽しいけれど、食べたくなるのが辛いところだ。
私もあの一口が欲しい。そう思いながら動画は進み、次の話に繋がる出来事で終わってしまった。
画面が暗くなると、いつもなら感想大会なんだけど――妙に静かだ。二人を見てみると、何かを耐えるような顔をしている。
これは、食べたいのを我慢している顔だ。時計を見ると、時刻は十一時半。もう、真夜中だ。真夜中にパフェを食べるなんて、そんな――!
「よし、作ろう! チョコレートパフェ!」
「「メル!」」
めちゃくちゃ背徳感があるけれど、きっと大丈夫。体は子供だし、食べた物はすぐに消費する体だし。不摂生をしても、若さがあるから大丈夫!
私たちは笑顔で顔を見合わせると、リビングに駆け下り、キッチンへと向かった。そして、すぐにネットショッピングを開き、必要な物を買い揃える。
「凄い! 材料が全部揃った!」
「作る時間が少なく済みますね!」
そう、今日は必要なものをトッピングするだけだ。簡単、早い、そしてきっと美味しい。真夜中に食べるには打ってつけだ。
カウンターの上に材料を並べる。背の高いパフェグラス。コーンフレーク。バニラアイス。チョコレートアイス。生クリーム。チョコレートソース。
そして――。
「クッキー! チョコレート菓子! チョコチップ!」
食べたことのあるお菓子を目の前に置くと、サリサとティナが目を輝かせる。完全にお祭り気分だ。お祭りだから、きっと許される。
「まずは土台を作ろうか」
私はパフェグラスを三つ並べた。そして底にチョコレートソースを垂らす。とろり、と黒いソースがガラスの内側を伝って落ちていく。
「おお……!」
「綺麗です……!」
続いて砕いたコーンフレークを投入、ザクザクとした食感担当だ。ここで、追いのチョコレートソースをかける。うん、凄く甘そう。
それから、チョコレートアイスとスプーンですくって乗せる。丸く整えながら入れていくと、一気にパフェらしくなった。
「次は生クリーム!」
絞り袋を手に取って、グラスの中を満たしていくと、白い渦が綺麗に積み上がる。
「わぁ……!」
「職人技じゃのう!」
「そんな大したものじゃないよ」
実際には市販のホイップなので簡単だ。それから材料を盛り付けていくと、高さが増してくる。一気にパフェらしくなった。
「ここからが本番だよ」
「本番、ですか?」
「まだあるのか!?」
「好きなお菓子を盛っていって、自分だけのパフェを作って」
「それはテンションが上がるのう!」
「自分だけのパフェ……いいですね!」
二人の前にグラスとお菓子を置くと、好きなお菓子を取って盛り付け始めた。ティナはバランス考えて真剣に、サリサは自分の食べたいものをてんこ盛りにして盛り付けていった。
私はウエハースは欠かせないし、一口サイズのチョコケーキも乗せて。チョココーティングをされたスティックを刺して、最後にまたチョコソースをかける。
次々に乗せていくと、気付けばパフェの頂上はお菓子の要塞になっていた。隣の二人のパフェを見てみると、同じように要塞が出来ていた。特にサリサが凄い。
「完成したけど、二人とも凄いね」
「そういうメルもかなりのボリュームですよ」
「さぁ、食べるのじゃ!」
グラスを持ってリビングに行き、席に着く。いたただきます、と声を揃えるとスプーンを入れる。
まず最初に掬ったのは、たっぷりの生クリームとチョコレートソース。口に運んだ瞬間、ふわりとした甘さが広がった。
「ん~っ!」
思わず頬が緩む。濃厚なチョコレートの甘さと、生クリームの優しい甘さが合わさって、とても幸せな味だ。しかも、真夜中という背徳感付き。
「この白いの、凄く美味しいです! ふわふわして、甘くて、溶けていてっ!」
ティナも目を丸くしていた。普段は落ち着いているけれど、表情が幸せそうに蕩け切っている。
「生クリームだね」
「生クリーム……覚えました」
そう言いながら、ティナは次の一口を食べる。そして、また蕩けたように笑う。その様子が妙に可愛らしくて、私は思わず笑ってしまった。
一方のサリサは――。
「ふっふっふ。見よ、この完璧な組み合わせを!」
スプーンで掬った先には――チョコアイス、板チョコ、チョコチップ、チョコソース、一口チョコケーキ。もはやチョコレートの塊だった。
「絶対甘いよね、それ」
「羨ましかろう。甘いのが良いのじゃ!」
すると、そのスプーンを勢いよく口に放り込む。
「~~~っ!」
目を見開いたと思ったら、目を閉じて体を左右に振る。
「最高じゃー! これは甘さの暴力じゃ!」
元気よく叫ぶ。相当、美味しかったらしい。二人は無我夢中で食べ進めて、私もそれに倣うようにどんどん食べ進めた。
「動画で見たものを食べるの、美味しいね。今度は動画を見てから、作るっていうのも楽しそう」
「それ、いいですね! メルが教えてくれるものは作るまで良く分からないものが多くて……。でも、動画ならどんなものが分かるので、ワクワクが強いです!」
「登場人物と同じものを食べるっていうのが、とても気持ちいいのじゃ! なんか、特別感があっていいのう」
パフェを食べながら次は何を作ろう、そんな話で盛り上がる。その話しは盛り上がり、話しが止まる様子はない。
時計の針はとっくに日付を跨いでいた。本当なら、もう寝ている時間だ。
だけど――友達と一緒に夜更かしして、動画を見て、真夜中にパフェを作って、こうして笑いながら食べる。そんな少しだけ悪いことをしているような時間が、たまらなく楽しかった。
「ふふっ」
「どうしたのじゃ?」
「ううん。楽しいなって思って」
そう言うと、二人も笑った。
「わらわもじゃ!」
「私もです」
三人で顔を見合わせて、再びスプーンを手に取った。パフェの最後の一口まで楽しみ尽くすように、私たちは夜更けの甘くて楽しい時間を満喫した。




