63.何でもやってみたいお年頃
ガタガタと車内が揺れる。その振動のせいで、さっきから体が疲れる。
「なんか、道がデコボコしているよね……」
「凄く不愉快じゃぞ」
道にはくぼみがあったり、石が捨てられていたり、と悪路が続いている。その上を大きなキャンピングカーが進むのだから、座り心地はとても悪い。
「かといって道を外れるのもね……。そっちもそっちで悪路だし」
「じゃが、この振動が続くのなら、道を外れるのもありじゃないか?」
デコボコ道を進むか、悪路と決まった道以外を進むか……これは悩みどころだ。
私たちはうんざりとした顔をしているが、ティナはとても楽しそうだ。だって、目が輝いている。
「なんかこれ、ラリーみたいで楽しです!」
「ラリーって、あの動画じゃな。まぁ、似ているような気もするが……」
「ティナにとっては悪路も遊びみたいなものなんだね」
「これから色んなところに行くんですから、オフロードレースとかクロスカントリーラリーみたいな事が出来たらいいですね!」
「い、いやいや! 流石にそれは厳しいよ!」
「体が壊れてしまうわ!」
本当にティナは車が好きだ。選ぶ動画も全部車に関係するもので、日に日に新しい知識を得ている。それだけだったら良かったけれど、それを実行しようとするのだから、一緒に車に乗っている私たちには堪らない。
「ほら、見てください! 遠くに山が見えてきますよ! キャンピングカーで山を登ってみたいですね!」
「……山なら、いい?」
「山も悪路じゃぞ」
「木々を避けながら進むのもいいですし、木々を吹っ飛ばしながら、一直線に登るのもいいですね!」
「動画のようなことは出来ないぞ! あれは動画じゃから出来ているんであって、現実では厳しいぞ!」
「おじさまたちが出来ているんですから、私にだってきっと出来ます!」
「おじさまたちは役者で、運転はプロがやっているんだよ!? そう簡単に出来ないからね!」
これ以上ティナを好き勝手にさせたら、私たちが危ない! 必死になって止めるけれど、ティナの目が輝いていて、悪いことを考えているようだ。
こういう時は、話を逸らすのに限る。
「で、でも……これだけ振動が続くと体が疲れない?」
「そうじゃ、そうじゃ! わらわはもう疲れたぞ!」
「何を言っているんですか。これを乗り越えないと、オフロードレースやクロスカントリーラリーを乗り越えられませんよ!」
やるつもりでいるんか! という言葉を呑み込んで、どんどん話を逸らしていく。
「ここの辺りで休憩しない? 少しはのんびりしないと、長距離運転は危険だよ?」
「休もう! すぐ休もう! 今すぐ休もう!」
「うーん、そうですねぇ……。休みましょうか」
私とサリサは見えないところでお互いの手を強く握った。
「外の天気も良いし、外で休憩しようよ。何かしたいこととかある?」
「わらわは何もしたくないので、寝転がりたいぞ」
「あっ! だったら、動画で見たハンモックを体験してみたいです」
「おー! その手があったか! あれは気持ちよさそうじゃったな!」
それは良い案だ。のんびりハンモックで揺られて、移動の疲れを取るのがいい。でも、どうせならハンモックで何かをしたほうがいい?
「みんなはハンモックでやりたいこととかある?」
「わらわは寝る! 惰眠をむさぼる!」
「だったら刺繍をしたいです。車の刺繍をして、私だけのグッズを作ります!」
なるほど、みんなはそれぞれでやりたいことがあるみたいだ。だったら、私は何をしようかな。のんびりと時間を過ごすのなら……小説が良さそうだ。
動画には動画の楽しみ方があって、小説には小説の楽しみ方がある。のんびりできる時間があるのなら、小説の世界に浸るのもいいだろう。
「あっ! ハンモックをするのに丁度いい森がありますよ。あそこに止めますか?」
「いいね。じゃあ、そこに行こう。行ってから買うものを一緒に見ようか」
「今日も明日も明後日もハンモックでのんびりすればいいのじゃ!」
「もう……何日ものんびりしてどうするんですか。運転の休憩ですよ」
「まぁ、特に急いでいないし。のんびりするのもいいんじゃない?」
この振動で体のあちこちがいたい。しばらくはのんびり休んで、回復させたい。
森の側にキャンピングカーを止めると、外に出て森の中を歩く。日差しを木の葉っぱが遮ってくれて、とても居心地が良さそうだ。
「この中だったら、気持ちよく過ごせそうだね」
「うおぉぉっ! 惰眠、惰眠をむさぼるのじゃっ!」
「寝るのにそんなにテンション高くて大丈夫ですか? でも、気持ちいいので、良い時間を過ごせそうです」
風もほとんどないし、日差しも遮ってくれるし、良い休憩になりそうだ。そのまま見回っていくと、良い感じに木が離れている場所があった。
「うん、ここならハンモックを吊るせそうだね。じゃあ、場所はここに決定。みんなで自分のハンモックを選ぼう」
「とにかく気持ちのいい物にするのじゃ!」
「私は色んな態勢がとれそうな物がいいですね」
木の下に座り込むと、ネットショッピングの画面を開き、ハンモックを検索する。すると、様々な色や形のハンモックが出てきて目移りしてしまいそうだ。
さて、楽しいショッピングの時間だ。
いつもお読みくださりありがとうございます。
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