60.黄金のブルカエルを捕まえろ
「二人とも、今日がラストチャンスだよ。捕まえられなかったら諦める。それでいいね?」
「……分かった。じゃが、今日は全力の全力で行くぞ。絶対に捕まえてみせるのじゃ」
「ここまで来たら、絶対に捕まえたいです」
湿地帯にやってきた私たちは今一度決意を固めた。今日、黄金のブルカエルを捕まえられなかったら、諦める。
その言葉が二人の心に火をつけたのか、今まで以上のやる気を出していた。
「大丈夫です。探索魔法の精度が上がってきていますから、ひっかかればすぐに発見できます」
「ティナの探索魔法が頼りじゃ! わらわの背に乗ってくれ。早く移動が出来るじゃろう」
ティナの前でサリサがしゃがむと、その背に乗った。これで、移動のハンデはグッと縮まった。
「じゃあ、ティナ。お願い」
「はい。任せてください」
ティナは目を閉じて、意識を集中させた。探索魔法を発動させて、周囲の様子を探る。
「……どうやら、この周辺にはいないようです」
「よし、早速移動じゃ」
「サリサは全力で走っていいよ。私は身体強化で追っていくから」
黄金のブルカエルがいないと分かると、私たちは移動を開始した。サリサがぬかるんで歩きづらい地面を強靭な足でスタスタと走っていく。その後を身体強化した私が追っていく。
その間も、ティナは探索魔法を発動させている。そうして、移動しながら黄金のブルカエルの気配を探し回った。
今までとは移動力が違う。そのお陰で、あっという間に広範囲に渡って、探索魔法を仕掛けることが出来た。
すると――。
「あっ! 見つけました、黄金のブルカエルの気配です!」
「何っ!? 本当か!?」
「はい! あっちにいるみたいです!」
「よし、行こう!」
私たちの作戦が見事に嵌ったのか、早く黄金のブルカエルを見つけることが出来た。ティナが指を差した方向に駆けていく。
「近いです……。あと100メートルくらいです」
「だったら、ここからはゆっくりと行こう」
「限界まで近づくんじゃな」
そこからゆっくりと歩いて近づいていく。すると、沼地が現れた。木の陰に隠れてそっと覗くと――。
「いた、あそこ」
沼地の石の上に黄金に輝くブルカエルがいた。
「よし、捕まえよう」
「まずは私が行く。サリサは動いたブルカエルを狙って」
「分かった」
「私はブルカエルの動きを伝えます」
サリサの背からティナが降りると、じっと見つめて機会を伺う。そして、黄金のブルカエルの視線がそれた瞬間――風のように飛び出していった。
ほんの数秒で距離を縮め、飛び掛かる。両手で黄金のブルカエルを捕まえようとすると――腹部に衝撃が走った。
「がはっ!」
黄金のブルカエルが突進してきた。その衝撃で体が飛ばされ、ぬかるんだ地面に転がされる。
「任せるのじゃ!」
その瞬間、サリサが飛び掛かった。黄金のブルカエルはそれを見て、姿を消し――次の瞬間、サリサに強烈な蹴りを食らわせた。
「くっ!」
だが、その蹴りをなんとか受け止めた。すかさず、手で捕まえようとすると、残像を残して消える。
「サリサ、右です!」
「おう!」
だけど、ティナの探索魔法は逃さない。すぐに居場所を伝えると、サリサも風のような素早さで右に飛んだ。その目の前には黄金のブルカエルが。
「おうら!」
両手を合わせるように閉じる。しかし、その手の隙間から黄金のブルカエルは姿を消して飛んだ。
「メル! そっちに飛びました!」
「任せて!」
起き上がった私は目を凝らす。すると、黄金のブルカエルの残像が見えた。今度こそ、逃がさない。
タイミングを見計らい、飛び込んだ。その残像を捕まえるように手をぱちんと合わせ、がっしりと組む。手のひらにカエルの感触がした。
「サリサ! 袋!」
そう叫ぶと、サリサがアイテムボックスから専用の袋を取り出す。手の中で黄金のブルカエルが暴れているが、最大限に強化した力でなんとか閉じ込める。
「メル、この中じゃ!」
一瞬で距離を詰めてきたサリサが袋を開けて、こちらに向ける。急いでその袋の中に入れると、きつく紐を閉じた。
そして、袋の中では黄金のブルカエルが激しく暴れまわっていた。そう、私たちは捕まえたんだ。
「……やった。二人とも、捕まえたよ!」
「よくやった、メル!」
「やりましたね!」
ようやく、捕まえた! 嬉しくなって三人で抱き合って、喜び合う。それだけで、今までの苦労が報われたようだ。
「二人がいてくれたからだよ、本当にありがとう」
「諦めなくてよかったな。これは、わらわたちの絆の勝利じゃ!」
「本当にこの三人がいれば、どんなことも可能のように思えます」
それぞれが自分の役割をこなしたおかげで、黄金のブルカエルを捕まえられた。一緒にるのが二人で本当に良かった。
「じゃあ、町に帰ろう!」
◇
「えぇー!? 黄金のブルカエルを捕まえたって本当ですか!?」
冒険者ギルドの受付に持っていくと、受付のお姉さんは信じられないくらいに驚いていた。
その声に反応して、他の職員や冒険者が集まってくる。
「嘘だろ……。この数年、誰も捕まえられなかった黄金のブルカエルを!?」
「こ、こんな子供たちが!? し、信じられない!」
「中身を確認してみろ!」
途端に冒険者ギルドは騒がしくなる、お姉さんがそっと袋を開けて中身を確認してみる。
「……ほ、本当に黄金のブルカエルです!」
「「「な、なんだってーーーーっ!?」」」
すると、周りにいた人が袋に詰めかける。
「ほ、本当だ! 本当に黄金のブルカエルを捕まえてる!」
「お前たち、よくやったな! とにかく、すげーよ!」
「うわー! 俺たちも夢を見たくなる! おめでとう!」
周りの人たちに囲まれ、騒がれてお祝いされる。みんなから拍手を受けると、私たちは顔を見合って笑い合った。
「では、報酬の100万コルトです。受け取ってください」
お姉さんがカウンターに一枚の小金貨を出してきた。
「凄い! 初めて見る、小金貨だ!」
「こ、これが100万の価値のある小金貨か!」
「今まで銀貨までしか見たことがなかったので、凄いです!」
一枚で100万の価値がある小金貨、凄い怖いけど、凄い嬉しい! 私たちはもう一度抱き合い、喜びを分かち合った。




