6.能力の価値
「いやー! 今朝のサンドイッチは美味かったな! パンはふわふわ! 具材のうま味! あと、お湯を入れるだけですぐ出来るスープ!」
「私も驚きました。あんなに美味しいものがこの世に存在するんですね」
「私のネットショッピングは凄いでしょ」
「メルのスキルは便利過ぎじゃ! わらわのスキルが全く活躍しとらんぞ!」
「でも、余った食材を保管してますよ? 腐らずに保管出来るなんて凄いです!」
「そ、そうか? ふふん、もっとわらわを褒めたたえろ!」
そんな会話をしながら、私たちは町の道を歩いていた。今朝は時間がなかったから、簡単にサンドイッチと即席カップスープを出した。
二人とも美味しそうに食べてくれて、作ったかいがあった。それに、ただ切って挟めて、お湯を注いだだけなのに、今日も経験値が入ってきた。
お陰で私のレベルは10になり、ティナのレベルは5になった。サリサは流石元魔王候補だけあって、レベルは101だ。
「それで、ネットショッピングで買い物をするにはお金が必要だったんじゃな。そのお金が本当に手に入るのか? 手に持っているそれを売るだけで」
「うん。どうやら貴重の品みたいで、高く売れたんだよね。それで、また売って欲しいって頼まれたの」
「砂糖は高級品ですから、高く売れるのは分かります。でも、そんな高級品を売って大丈夫でしょうか? 店主は何か変わりありませんでした?」
「いや、特に普通だったけど……」
今にして思えば、みすぼらしい恰好をした子供が持ってきた砂糖を素直に買い取ったのは気にかかる。もしかして、何か裏があるかもしれない。
「うーん。ティナの話を聞いて、砂糖を売るのが危ないんじゃないかって思えてきた」
「そうですよ。約束は破ることになりますけど、止めた方がいいんじゃないですか?」
「だ、ダメじゃ、ダメじゃ! そしたら、お金が入ってこんじゃろう! お金がないということは、ネットショッピングで物が買えないということ! 美味しいものが食べられなくなるのは、わらわは嫌じゃー!」
サリサが地団駄を踏んで、暴れだした。そ、そんなに私の料理が気に入ってくれたんだ。
「ティナだって、あの美味しい料理が食べられなくなるのは嫌じゃろう?」
「えっ、それは……その…………はい」
「そうじゃろ!? だったら、ここは危険でも物を売る! もし、何かがあったとしても、わらわがいるから大丈夫じゃ! ということで、売りに行くのじゃ!」
サリサが私たちの手を引っ張って、ずんずん道を進んでいく。まぁ、砂糖は今回だけにして、次からの金策は別の事にしないとな。
そうして、道を進んでいくと、例のお店が見えてきた。
「ここだよ」
「じゃあ、中に入ります?」
ティナがそういうと、サリサの表情は険しくなった。
「なんじゃか、気配が沢山するのぅ。気を付けて中にはいるのじゃ」
「……分かった」
サリサの言葉にドキリとしながら、私はお店の中に入った。
「らっしゃい! おっ、昨日の嬢ちゃんじゃないか! 待っていたよ! ささっ、砂糖を渡してくれないか?」
中に入るなり、店主が早く話を進めた。私は手に持っている砂糖を渡そうとすると、サリサが待ったをかける。
「先にお金を出せ」
「えっ、あっ、まぁ…………いいよ」
サリサの言葉に表情を困惑させたが、すぐに笑顔を作る。なんか、嘘くさい笑顔だ。だけど、店主は躊躇なくお金を渡してきた。
そして、私が砂糖を手渡す。
「ありがとう。それで、まだ砂糖は手に入るのか?」
「……もう売らないつもり」
「それはどうしてだい?」
「……危ないから」
「……勿体ないなぁ」
すると、店主がカウンターに置いてあった鐘を鳴らす。すると、お店の奥から沢山の大人たちが現れた。
「こ、これは!?」
「こんなに高級品を簡単に手に入れるなんて、見過ごせないなぁ。だから、ウチで雇ってあげるよ。給金は0でね。捕まえろ!」
この店主、始めから砂糖を手に入れられる子供として利用するつもりだったんだ。やっぱり、勘は当たっていた。
「ふふん、そうはさせない!」
すると、サリサが構えを取り、襲い掛かってくる大人に立ち向かった。
「はぁっ!」
拳を振るうと、大人が吹っ飛んで壁に突き刺さる。
「くらえっ!」
体を回転させて蹴ると、大人が吹っ飛んでまた壁に突き刺さる。
「おら、おら、おらーっ!」
襲い掛かってくる大人たちを次から次へと殴り、蹴り、無力化させていく。流石、元魔王候補……強すぎる!
「どうじゃ! わらわの力を思い知ったか!」
「二人とも、外に出てください! キャンピングカーで逃げます!」
「分かった!」
「おう!」
ティナの声で私たちは外に出た。
「出てきて、キャンピングカー!」
ティナがスキルを発動させると、一瞬でキャンピングカーが現れる。
「急いで乗って!」
運転席にティナが乗り込むと、私たちは後部座席に乗り込んだ。
「くそっ! 待てー!」
「逃がさないぞ!」
「捕まえろ!」
すると、あっという間に大人たちが襲い掛かってきた。
「飛ばします! しっかり、掴まっていてください!」
ティナがアクセルを踏み込むと、キャンピングカーが急発進する。ものすごい勢いでその場を通り過ぎて行く。だが――。
「そっちは門がないよ! 反対の方向だよ!」
「そうなんですか!? ……反転します!」
声を上げると、ティナがブレーキを踏み込み、ハンドルを大きく切る。
「うわわわわっ!」
「なんじゃ、なんじゃ!?」
大きく回転するキャンピンカー。そして、見事に反転すると、また急加速した。そして、その先には先ほどの大人たちが迫ってきていた。
「左右に振れますよ!」
ティナがまたハンドルを捌き、襲い掛かってくる大人たちを次々とかわしていく。
「ゆ、揺れるっ!」
「運転が荒すぎじゃ!」
私たちはなんとか車体にしがみつき、体が飛ばされないようにする。すると、全ての大人をかわしきった。
「このまま町の外に出ます! スピードは落としませんよ! 一気にいきます!」
「ティ、ティナ! 安全運転! 安全運転でお願い!」
「こわっ、怖すぎる! ティナの性格が変わっとるぞ!」
私たちが悲鳴を上げる中、ティナは速度を上げて町の門を目指した。




